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夜天の魔女  作者: 宵宮 詠
第10章
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8 夜と星


キナはアスランに視線を落とす。

長い睫毛が幾度かふるりと震える。

やがて、空色の瞳がその間から現れた。

ゆっくりとした瞬きを重ねるたびに

空色の焦点が合っていく。

ついにその瞳が、

揺れながら覗き込む夜色を捕まえた。


「キナ…… 帰って、来たのか……」


掠れた声が紡ぎ、そこに安堵の笑みが浮かぶ。

キナの目から、ばたばたと涙が零れた。


「帰ってきたのは、アスランじゃない……」


アスランが手を突き、身を起こす。

どちらからともなく手を伸ばし

二人は双珠のように両手を結び合う。

空色が夜色を

夜色が空色を

確かめるように見つめ合う。


「「……おかえり」」


声が重なり、二人は互いを引き寄せた。

膝立ちで固く抱き合えば、

夜色がその胸に埋まり、

空色はその髪に埋まる。


ふたつの色が混じり合い

灰珠のような塊となる。

双珠がその周りを、くるり、くるりと、巡った。


——やがて夜色の雨が上がった頃、

二人の姿は掻き消えた。


赤々と暖炉の火が揺れる隠れ家に

膝を突いて抱き合ったままの二人が姿を現す。


馴染んだ薬草の香りと薪の爆ぜる音。


互いの形を刻み込むように

その影はいつまでも離れる事を知らない。


月が傾き、窓から仄かに差し込む頃

二人はローブも解かぬまま

もつれるように身を横たえ、眠った。


月が天を去り、朝の光を呼ぶ。

窓から差す夜明けが、ひとつの影を照らす。


光が闇を抱き

夜に星が流れていた。



「世界は今日も、美しいな!」



朝日に、遠く、声が響いた。


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