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夜天の魔女  作者: 宵宮 詠
第10章
58/65

1 悪夢


 白の伸ばす魔力の糸。

その先を目指してキナは飛んだ。

真っ直ぐ、ただ一直線に。

白の糸はキナを牽引する光だった。


オーロラの層をも突っ切って、

キナはひたすらに飛ぶ。

層に突っ込む度に目まぐるしく景色が変わる。


どこかで見たようで空気の違う森。

見た事もない四角い建物が立ち並ぶ街。

キナはすべての景色を置き去りにした。


やがて、糸が飲み込まれる先が見えた。

そこにはまるで、暗黒天体のような、闇色の球体が浮いていた。


近づいたキナが触れると、

それは薄い膜を幾重にも纏った繭に似ている。

キナは小首を傾げる。

脳内で花守が高笑いした。

「千切っては投げ千切っては投げしておしまいなさーい!」

キナは闇色をむんずと掴んだ。

ベリ、と小気味良い音を立てて膜が剥がれる。


「…………アスラン」 ベリ。

「……アスラン」 ベリベリ。

「アスラン」 ベリベリベリ。

「アスラーーーーーーン!」


繭に、ぽっかりと穴が開いた。


キナはその穴をグイグイと押し広げ身を滑り込ませる。途端、自由落下に捕まった。

重力に逆らい翅を動かす。

降りていくその先に、透き通った四角い箱が見えた。

徐々に拡大されていくその箱の中に、

アスランがいた。



——アスランは、

濁った意識で夢を見ていた。

囚われて以来、苛むことを止まない悪夢だった。


夢の中、キナが床に倒れ伏している。

傍に、闇色を纏ったいつもの男が立っている。

男は、キナの豊かな夜色の髪を踏みつけていた。

そしてゆっくりと身を屈めると、その髪を無造作に掴みキナを引き摺り起こす。

キナの、細い悲鳴が響いた。


アスランはギリギリと歯を食い縛る。


闇色の男は、キナのローブを引き千切る。

キナの悲鳴とともにアスランの贈ったブローチが弾けとび、床でカラカラと音を立てる。

男は、上衣から伸びる白い首筋にねっとりと舌を這わせ、にやりと牙を剥いた。

キナの目からほろほろと涙が落ちる。


「やめろぉぉぉぉおお!!!」


アスランは絶叫した。

男はゆっくりとアスランへと視線を向ける。

その目が、愉悦に細まった。

アスランの耳に昏く甘い毒が注がれる。


「やめてください、お願いします、でしょう?

良い子にしていたら、この魔女には酷いことしないでおいてあげるよ……?」


くすくすと笑う声を聞きながら

アスランの意識は、泥のような暗闇に沈む。

(——キナ)

祈るように、その名を想いながら。

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