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夜天の魔女  作者: 宵宮 詠
第9章
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7 航路


「10時。4時に旋回。12時。越えてすぐ6時。」


迷宮のナビゲートに合わせて花守は的確に進路を定める。

キナはついていくのに精一杯だ。

目の前に大きな雲のようなオーロラの塊が流れてくる。

咄嗟に雲の流れと逆に進路を取る花守に、迷宮が告げる。


「逆だ。進行方向に向けて速度を上げて迂回」


雲を抜けて、二人の眼前で空間が歪んだ。


「ジャンプ!12-9-40!」


迷宮が叫ぶ。

桃染つきそめ色の魔力がキナを包む。


目を開けた時、キナは再び方向感覚を失っていた。

目を瞬くと、迷宮と花守が「ふぅ」と息の合った

息を吐く。

キナは花守の手をギュッと握って後ろを振り返る。

そこには生まれたばかりの特異点が渦を巻いていた。


「よくやった。」


「任せろし。」


「そして12時を見ろ。」


二人がバッと上を仰ぐと、そこには別の特異点が

渦を巻いていた。

息を呑み次の飛翔へと身構えた時、迷宮は告げた。


「魔力を結べ。特異点に突入する。」


渦を見据えながら、キナの手が小さく震えた。

花守は手に力を込めると同時に桃染色を伸ばし、

キナと迷宮の光に繋ぐ。

キナがハッとして視線を向けると、花守の横顔は

ひたりと渦を見つめていた。

迷宮の琥珀が伸びて桃染色に絡みつく。

それを夜色が追う。


「……行くぞ。3、2、1、飛べ。」


桃染、琥珀、夜色がわれた光が一直線に上を目指し、色彩の渦へと吸い込まれた。


右も左も、天も地もが綯い交ぜになった空間を光は

進んでいく。

繋いだ手の感触が揺らぐ。

落ちているのか昇っているのかもわからない。

結んだ魔力の感覚だけが自分がここに居る事を教えてくれる。


やがて、ぽっかりと開けた空間にまろび出た。

どうしようもない浮遊感を、迷宮の声が繋ぎ止める。


「夜天、白珠の糸を辿れ」


その声にピクリと肩を揺らし、そっと伸ばした指で、ツルリとした白に触れる。

目を閉じその魔力をそろそろと辿る。

それは、どこまでも真っ直ぐに伸びていた。


「……繋がってる!!!」


バッとキナが顔を上げた。

花守の笑顔にぶつかる。


「やったじゃーん?」


キナは唇をはくはくと動かした。


「あ、ありが……」


言葉を花守の指が塞いだ。

迷宮の声が続く。


「夜天、それは後で聞く。」


キナはこくんと頷くと、

胸に迫る温かな塊にギュッと目を閉じた。

花守がぽんぽんと頭を叩く。


「夜天、王子様が待ってるよ?お姫様はうつむかないの。」


キナはハッと顔を上げ、その悪戯な笑みに声を揃える。


「「……だってティアラが落ちちゃうから」」


ぐっと親指を立てた花守が言う。


「さあ、この先は姫の舞台だ。一人で飛べるね?」


キナは大きく頷く。


「白珠を信じろ、夜天。」


キナはもう一度、大きく頷いた。


花守がキナをぎゅっと抱きしめて、離す。


「じゃあ、行くね?」


桃染と琥珀が混じり合う。


「吸血鬼なんか千切っては投げ千切っては投げしておいで!」

「テレポルタティオ」


二人の声が重なった。

夜天の魔女が一人、残された。

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