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夜天の魔女  作者: 宵宮 詠
第9章
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5 出発


目を真ん丸に見開いたまま花守が呟いた。


「やば。迷宮マジ天才……。超絶目から鱗。」


キナは首がもげるほど頷いた。

迷宮は表情筋は働いていないがほんのり頬を染めている。


「え、じゃあさ、迷宮が夜天と一緒に飛んであげたら

即解決?」


「……苦手だ。」


迷宮がふいっと視線を外した。


「「え。」」


「……私が普段どこにいると思っている。ダンジョンの最深部だ。ダンジョンコアの研究に『飛ぶ』必要はほぼない。」


「あー……。それな過ぎ。」


「飛べなくはない。飛べなくはないが。

……今回の飛翔には私は向かない。」


「えっと、大丈夫。目で見れるんならきっと大丈夫。

地図……?とか。あったら。」


キナの言葉に二人は考え込む。


「あたしが一緒に飛ぶ。そんで迷宮がナビって。」


「決まりだ。私の光を持っていけ。それで視界も共有できるしナビもできる。」


キナは二人を代わる代わる見ながら目を瞬く。


「え、だって、そんな……そこまでしてもらうとか、

悪いよ……」


花守が口を開こうとしたその時、迷宮が先んじた。


「まず、魔女の社会は相互扶助だ。

お前もいつか誰かに力を貸す時がくる。

次に、宵森が見出した『卵』だったお前に

私が魔力理論を、

花守が魔力増強を、

祈りが魔力操作を教えた。

私たちはお前の『先生』だった者だ。

素直に甘えなさい。」


「ひゅー、迷宮かっけぇ。」


キナは涙目で首がもげるほど頷いた。


「茶化すな、花。では私は座標の計算に入る。君たちは準備をしておけ。」


「「準備?」」


「……まず夜天。君は顔を洗うかシャワーを借りなさい。次に花。着替えなさい。」


キナは花守を見た。

キナから出たあれこれで、そのローブはガビガビだ。

花守もまたキナを見ていた。

その顔は言うまでもなくガビガビだった。


「「ぷ。」」


揃って吹き出し、花守がキナをいざなう。


「夜天、こっちおいで。……迷宮、ありがとね?」


迷宮はこくりと頷くと、羽ペンを指先でくるくると回しながら数字の海に沈んで行った。


 こざっぱりした二人が戻ってくる。

花守は桃染つきそめの髪にヒラヒラの白いローブが大層愛らしい。


迷宮はまだ何事かを一心不乱に紙に書きつけていた。

視線を上げぬまま、再び指でちょいちょいと白珠を

呼ぶ。


白珠がその指に止まると、

目を閉じて考え、目を開けては書く、を繰り返す。

やがて迷宮が頷き、ペンを置いた。

白珠はキナの耳へと戻ってくる。


「二人ともこちらへ」


キナと花守は迷宮の傍に立つ。

迷宮も立ち上がり、二人へと手を伸ばした。


「君たちも手を繋ぎなさい。『イメージ』を共有する」


三人は輪になって手を繋ぐ。

ゆっくりと瞼の裏に映像が浮かんで来た。


それはまるで夜空を飛翔するイメージだった。

ただ、星の代わりに、幾重にも重なり揺らめく、

オーロラのようなベールが縦横無尽に浮かんでいる。


「……綺麗だね、迷宮。」


「これならイメージしやすいだろう。」


言いながら迷宮は手を離す。


「可視化が共有できた。いつでも行けるぞ。」


キナがぐっと唇を引き結ぶ。

迷宮が両手で何かを包み込むような仕草をする。

その手の中に、琥珀色の魔力の光が生まれた。

迷宮はその光を花守へと渡す。


「では最初の座標へ送る。魔力を合わせろ。」


迷宮の魔力が二人を包む。その力に、キナの夜色と

花守の桃染色が寄り添っていく。


(アスラン、今行くからね。)


「行くぞ。【テレポルタティオ】」


二人の姿が掻き消えた。


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