4 位相
迷宮はキナを見つめた。
「座標計算は……」
「……できません……」
「だったな。ならばそれは私の役割だ。
夜天は私の計算に従って飛べば良い。」
花守が口を開く。
「じゃあさー、迷宮が計算した座標見ながら、
『ししょー』のいる場所に跳んでかなきゃいけないんだ。うっわ、むっず。」
キナはキュッと唇を噛んでから、桃染色に夜色をひたりと当てる。
「……むずくても、やる。」
花守はキナの髪をぐしゃぐしゃと撫でた。
そして首をひねる。
「てゆーかぁ、全然イメージわかなくて草。
たとえば迷宮が、星位40度とか言ったとこに跳んで、
次の座標もらってまたそこに跳ぶって感じー???」
「それで行けない事はない。ただ『跳ぶ』より『飛ぶ』方が効率が良い。」
「「???」」
「……位相を可視化してその空間を『飛ぶ』」
「……フライ?」
「イエス」
二人のやり取りを聞いていたキナが口を開いた。
「……位相の可視化って、わからない……」
花守がビシッと手を挙げて「あたしもー」と続ける。
迷宮は淡々と答えた。
「君たちは位相を難しく考えすぎている」
キナと花守が目を見合わせる。
「ダンジョンを考えてみろ。
一階は石造りの迷路。
二階に上がると草原。
三階に上がると森林など珍しくないだろう。」
キナと花守がこくこくと頷く。
「あれも位相の可視化の一つだ。階ごとに異なる位相を固定してそれを重ねている。しかも『転移の罠』などは異なる位相同士を結びつけ位相の階層を超えて対象を跳ばす。そのような偉業を成し得る力をダンジョンコアは……」
「ちょっと待ったぁぁぁぁっ!」
花守が叫んだ。
迷宮はぱたりと口を噤む。
キナはその早口にとても親しいものを感じた。
迷宮は咳払いをしてから再び口を開く。
「……『結界』も位相の一つだ。」
キナと花守は口をぽかんと開けた。
「結界を張る。切り取られた空間を作る。
それだけなら位相まではいかないだろう。
だがその空間を支配したら?司った結界内で力が増したことがあるだろう?」
キナと花守はぶんぶんと首を縦に振った。
「そこはもう詠唱で作り出した位相だ。
詠い手の意のままに力場を変えられる
この世とは別の空間だ。」
キナと花守は、これでもかというぐらいに目を見開いた。




