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夜天の魔女  作者: 宵宮 詠
第9章
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3 白珠


 迷宮は花守の言葉に表情を変えぬまま頷いた。

そして無言でローブの懐に手を突っ込むと、

何やらカードの束を引っ張り出す。


「夜天、借りるぞ。」


その一言で白珠を指で呼んだ。

『白』はふるふると震え、キナの耳を離れると

ふよん、と迷宮の指に止まる。


「良い子だ。力を貸せ。」


迷宮はカードを捲りながら、独り言のように話し出す。


「吸血鬼はある意味不死者だ。一定条件下でしか死なない。つまり我々魔女と同様に僅かこの世の位相からずれている。」


そしてカードをめくる手がぴたりと止まる。

白がチリリンと鳴いた。


「ご苦労。ここだ。」


キナがバッと立ち上がる。

その耳朶に白がふよふよと戻っていく。


「見つかったの!?」


「落ち着け。奴らの『位相』が見つかっただけだ。」


キナはどさりとソファに座り込んだ。


アスランは見つかっていない

でも手がかりは見つかった


落胆と喜びが綯い交ぜになり、

キナは顔を両手で覆って長い長い息を吐いた。


そんなキナの背を力強くさすってから、


「ねー、迷宮ー、言い方ー」


花守はツカツカと迷宮に近づき、ビシッと指を突きつける。


「もっとさー、あんじゃん?

『位相見つかったからもう大丈夫だよ!』とかさー」


「……」


黙って見返す迷宮の頬を花守の指がむにっと摘んだ。


「マジ表情筋仕事しろ。」


「……ぅ。」


花守が迷宮の頬をぐにぐにと動かす。

迷宮は一言呻き、無表情になされるがままだ。


「ぷ。」


二人が目をやるとキナの肩が震えていた。


「ぷふ。ふっ……あは、ははは」


まだ弱々しい笑い声だった。

でも、笑えたのなら大丈夫。

桃染つきそめと琥珀は目を見合わせて頷いた。


「てかさー、迷宮マジすごいね。

その魔道具も意味わっかんないし、

なんで位相とかわかっちゃうわけ?」


「『ダンジョンの番人』に何を言っている。

ダンジョンのあの複雑で緻密で尚且つ雑多な位相の

重なりに比すればこの程度読み解くことは難しいことではない。白珠もいた。」


「……ダンジョンのことになるとよく喋るけど、

表情筋は働かないのな?ブレなくてウケるー」


キナはもう二人のやり取りを楽しげに眺めている。

花守はキナの横へと戻り、迷宮へ真顔を向けた。


「んで、これからどーする?」


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