2 迷宮
「……隠され、てる……」
キナは呆然と繰り返した。
……切れていない。隠されている。
繋がっている。それならば。
「見つかる!?アスラン、見つかる!?」
キナはガバッと花守の肩を掴んだ。
そして揺さぶった。
「お、お、おおぅ……。
ど、どーにかなるっしょ。うちら、魔女ですし?」
ガクガク揺れながら花守は返した。
キナはぴたりと止まる。
花守はほっと息を吐く。
「ふぇぇぇええん!アスラン見つかる……
よがっだ、よがっだぁぁぁ!」
キナはまた泣き出した。
花守はキナをよしよししながら言う。
「夜天、迷宮を呼ぶよ?
こーゆーのはさ、あいつの得意分野。」
えぐえぐと泣きながらキナは頷く。
花守は人差し指を立てて、そこに桃染色の
魔力の光をひとつ灯した。
「めーーーきゅーーー!
緊急事態発生緊急事態発生ーーー!
秒でうちに跳べーーー!
直で部屋に来ーーーい!
ノックとかいらんし。」
そして、ふっと息を吹きかけると光がヒュンと
飛んで行く。
花守が立ち上がり、部屋の一角のキッチンへ向かう。
カップをひとつ手に取った時、褐色の男が音もなく
そこに立っていた。
男は、琥珀の瞳を巡らせ桃染色を見る。
そのまま視線を移し、夜色を捉えた。
「……『我、新しき同胞の誕生を寿ぎ、その智を祈る
者なり』」
キナは泣き濡れた顔をハッとあげる。
「……あり、がと、迷宮……」
しゃくりあげながら紡ぐキナの横に、花守が戻る。
途中、迷宮に珈琲の香りが立ち昇るカップを渡し、
キナにはミルクと砂糖をたっぷり入れたカフェオレを
渡す。
迷宮は我が物顔で二人の向かいのソファにどっかりと
腰を下ろした。
「……緊急事態というのはコレか。」
桃染色に視線を当てながら、くい、とキナを顎で
示す。花守はキナを介護しながら頷いた。
「夜天の好きぴが吸血鬼に拉致られたんだよ。
ガチ絶許案件じゃね?」
黙り込む迷宮に、花守が冷め切った紅茶を啜りながら説明する。
「……ってゆーわけでぇ、相手は吸血鬼のボス。」
「把握した。」
迷宮は目を細めてキナの白珠を見つめる。
「伸びている。そして隠されている。
しかし夜天。お前ほどの力があれば、辿れないことは
ないだろう。落ち着いて座標を特定して……」
「……座標……無理……」
キナの細い声が割って入った。
迷宮は訝しげに眉を上げる。
「もー、迷宮ー。夜天こんなに泣いちゃってんじゃん。落ち着いてとか無理筋じゃね?
ほんと迷宮、そーゆーとこだかんね?」
花守が庇うようにキナの肩を抱く。
(……ごめん、そうじゃないです……)
キナは心の中で謝った。




