2 結界柱再び
二人は結界柱の前に立っていた。
見上げるキナが、思わず零す。
「これは…… なんというか…… 」
汚い。
アウララの結界柱に比べて、大変薄汚れている。
視線を向けるが、アスランはそそくさと結界柱に
手を当てた。
「לִפְתּוֹח」
アスランがキナにはわからない言葉を告げると
結界柱がポカリとその入り口を開いた。
中に入ったキナは、顔を顰める。
アスランが「יהי אור」と唱えるとポゥっと明かりが
灯る。
顔を顰めたまま、耐えきれない、というようにキナが
口を開いた。
「……プルガティオ。」
呟きに、アスランがハッとキナに視線を向けた。
澱みきった空気が、キナを中心に見る見る清められていく。
「……ぷは。やっと息ができるよ。」
やれやれ、とキナが大きく息を吐く。
そしてアスランの視線を捉えると
「なんでここ、こんなに汚れてるの?
アウララの塔とは大違いだ。」
アスランは、そっと視線を逸らした。
逸らしたその動きから、アスランは流れるように
塔の中の塔へと向き合う。
「……また魔力を通す?」
一旦追求の手を止めて、キナは尋ねた。
アウララの塔でしたように、結界柱の魔力回路を
可視化させるか、と。
「……いや、ここは……大丈夫だ。」
アスランは一度口籠もってから付け足した。
「……ここは、私の塔だからな……」
そう言いながら、アスランは回路に無造作に魔力を
通す。回路が金色に煌めきながら、その姿を現す。
銀の柱に金の魔力が幾何学模様を描いている。
極限まで無駄を削ぎ落としまくった、
ある意味「機能美」とも言える、
それはもう、なんというか。
「…………簡潔。」
アスランは振り向くことのないまま答える。
「……本命は魔王戦だった。
そこに注力すべきだったし、魔王を倒せば魔物も
消えると思っていた、からな……」
「……アウララの回路には、『保存』とか『浄化』
まで組み込まれていた、と。そういうことだね?」
「……そんなのはアウララの塔だけだからな?
あんな馬鹿みたいな回路を組むなぞ、アウララしか
やらん。」
アスランの耳が、ちょっぴり赤くなっていた。




