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夜天の魔女  作者: 宵宮 詠
第8章
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1 ホーンラビット


 アスランは、目の前でホーンラビットの肉を頬張ろうとするキナを、じっと見つめていた。

つい数十分前、木々の間にその姿を見つけたキナは、「おっ昼っごはーん♪」と言いながら、ホーンラビットに矢を射かけたのだ。


「……キナ。一つ、聞いて良いか。」


肉の串焼きに大口を開けたキナは、

そのままアスランに問うような眼差しを向ける。


「……何故まだ、魔物がいるんだ……」


モグモグと口を動かすキナは、

口の端に垂れた肉汁を指で拭いながら口を開いた。


「……なぜって???」


「君は世界を正したんじゃないのか。なのに、何故。」


「正してなんかいないよ。ちょっとずらしただけ。」


ホーンラビットをごくんと飲み込んで、キナは続けた。


「『正しさ』をちょっとずらして、

秩序を『美しさ』に書き換えただけ。

そんで、『営みは変わらず続いていく』って

定めたから?じゃない??

魔物いなくなったら冒険者さんたち、

『おまんま食い上げ』だもんね?」


アスランは鳩が豆鉄砲を食ったように

口をぽっかりと開けた。


「……そんな…… 営みは…… 変わらず、とは……

そんな……」


絶句するアスランをキナは不思議そうに見ながら、

モグモグとホーンラビットを咀嚼し続ける。


「……魔物さえ……

生態系のひとつ……と言うことなのか……」


串焼きを見つめながらアスランは呻いた。


キナはそんなアスランに首を傾げる。


「それより早く食べちゃおうよ、美味しいよ?

結界柱も、もうすぐそこだよ?」


「……」


沈黙の後、アスランはこくりと頷き、

ホーンラビットに齧り付いた。


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