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夜天の魔女  作者: 宵宮 詠
第6章
35/65

2 ざまぁねぇや


 やがて、カランと音を響かせて、キナが店から

出てきた。

片手の読み物から目を離し、アスランは壁から身を

起こす。


「待たせてごめん!ここ、仕立てもしてくれるって

言うから、全部お願いしてきた!」


アスランが、ゆる、と首を振り視線を移すと、

キナの瞳は新しく混ざった金色のせいだけではなく

キラキラと輝いている。

ふ、と口元を緩めポンポンと頭を叩くと


「良い買い物ができたようで何よりだ。

仕立ては何日かかるんだ?それまでここに留まるか?」


「三日って言われたよ。出来上がったら跳んで来ても良いし、そこは任せるよ。

……ああ、楽しみだなぁ!」


今にも踊り出しそうなキナに、アスランの目が自然に

細まる。


「よし、そろそろ腹ごしらえと行こう。」


キナの目が再び丸くなる。


「……グスタフさんは、いいの……?」


「あの熊なら好きに待たせておけばいい。

ああ見えて、一度交わした約束は必ず守る奴だ。

それがいつになろうと問題はない。

ま、多少文句は言われるかもしれんがな。」


「……なんか調子が狂うなぁ……」


ぼそりとキナは呟いた。

用事を先送りにして街歩きを優先させる

そんなアスランをキナは知らない。

キナの様子に、アスランは笑う。


「弟子の買い物に付き合わなければならなかった、

とでも言ってやればいい。

どんな顔をするか見ものだろう?」


「…… アスラン!ついに弟子の尻に敷かれたか!

ざまぁねぇや、ガッハッハー!」


キナは腰に手を当ててグスタフの真似をしてみせた。

アスランから「ぶふっ」と変な音が漏れる。


「君それ……似すぎだろう!? ぁはっ、

あはははは!」


豪快に笑うアスランに、キナが胸を張る。


「ま、まさしくそんな感じだな。完璧だよ!

全く、君には敵わんな……」


アスランはまだ肩を震わせながら目尻の涙を拭った。


「そうでしょうとも。キナさんにかかればザッと

こんなもんですよ。」


キナは満足気にニンマリと笑う。

アスランが声を上げて笑う姿が楽しくて仕方がない。


「……全く、千年共にいても、君にそんな特技がある

とは知らなかった。」


アスランの手が、キナの頬をそっと包む。


「……厄介な弟子を拾ってしまったものだ。」


親指が、頬の高い位置をゆっくりとなぞり、

離れていく。


キナの鼻の奥がツンと痛くなった。

これだから、自分は何の恐れもなく魔女への儀式を

越えられたのだ、と。


「さあ、ではパイでも食べに行こう。

君の大好きな果物いっぱいのやつをな?」


キナは胸に過ぎった感傷を振り払い


「パイ!食べます!!」


力いっぱい返事をした。


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