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夜天の魔女  作者: 宵宮 詠
閑話 宵森の魔女
33/65

5 生誕と葬送


 宵森は、香草茶のお代わりを淹れに立つ。

ことんと置かれたカップから、矢車草の香りが立ち昇る。


「……あんたのその器、『光彩』にも匹敵するねぇ。予想外に強い魔女が生まれたもんだ。」


「……『光彩』?」


宵森は頷いてお茶を一口啜る。


「『伝説のアウララ』と言った方が、通りが良いか

ねぇ。」


キナが弾かれたように身を起こす。


「アウララ!アウララのこと、聞きたかったんだ!」


「ああ。賢者から聞いたのかい?アウララの最期を。」


キナは無言でゆっくりと頷いた。


「そうさねぇ、どこから話そうか。」


宵森が言葉を切ると


「魔力回路オタクで雑だったことは聞いた……」


キナの言葉に宵森が噴き出した。


「っ、ははっ!そりゃ間違いないね。

……そうだね、アウララは……白髪だった。」


「白髪。」


「……生まれつきでね。嫌な思いも随分したようだ。でも、魔法使いとして名が上がっていくに連れ、

それは逆に賛美の対象になっていった。『虹のように輝く』だとか、『真珠のようだ』とかね。」


キナは陽の光を受けて七色に輝くアウララの髪に想いを馳せる。


「あの子はそれを大層嫌がっていた。

けれど覚醒した時、『祈り』が名づけた。

『光彩』とね。


その名をもらった途端、

あの子の器が見る見る成長した。

あたしらもあんなのは初めて見たよ。


『光彩』は祝福を受けて、

『わたし、白髪が大好きになった!』

って笑ってたよ。」


「光彩の魔女…… 伝説の、アウララ……」


「あの子が還る時も、皆、送りに行った。

魔女は死なない。なすべき事をして天に還るだけだ。とは言え、誕生を見守った魔女を見送るのは、寂しいもんさね。」


宵森が両手で包んでいたカップを、ことりと置いた。


「魔王城で光彩を見送り、

海底神殿で夜天を祝う。

やれやれ、魔女も大変な仕事だよ。」


宵森とキナは目を合わせて微笑んだ。


「……婆様、そのお話、アスランにしても良い……?」


「ああ、良いとも。

賢者は魔女について知る権利があるだろうさ。

アウララの戦友で、

あんたの育ての親なんだからね。」



……二人の話は尽きず、遅くなったキナが叱られるのは、また、別のお話。

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