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夜天の魔女  作者: 宵宮 詠
閑話 宵森の魔女
32/65

4 世界のお礼


 ひとしきり笑って、宵森がお茶を一口飲み下した。


「さて、あたしがあんたに『夜天』と名づけたあの

場所。ありゃどこなんだい?」


唐突に話題が変わりキナはお腹から手を離す。


「『海底神殿』。なんだか、海から門が出てきて、

水がいっぱいある場所でゴーレムと戦って、

アスランが時空魔法で管理機構?だかがある場所に

繋げて、そこ。」


「……なにやらわかるようなわからないような話

だけど、とにかく碌な場所じゃあなさそうだねぇ?」


コクコクとキナは頷く。


「けど、アスランが大魔法でこじ開けて繋げた場所に、祝福が飛んでくると思わなかった。びっくりして嬉しかった。」


「ま、それが魔女ってやつさね」


宵森はひょいと肩をすくめた。


「で、あんた魔力の色にも混じりもんが入ったみたいだけど……

おや、目もだねぇ。金色が混じってる。

そいつは例の『師匠』のかい?やっと説得できたの

かい。」


宵森に言われて初めて気づいたと、キナは慌てて手鏡を取り出す。

なるほど、虹彩に、微かに金が散っている。

光が入って初めて気づくほど、微かに。


「……気づいてなかった……」


鏡を置くと、キナは語り出す。


「説得した、わけじゃないかな。

……魔女にならなきゃ、あの場を切り抜けられなかった。『世界の管理者』とかいうヤツが侵入者を排除

するって言って、アスランの古代魔法も全部

キャンセルされて、だから、魔女になってそいつから自由になって、そいつが管理する定義を書き換えなきゃいけなかったんだ。」


「……そりゃまた壮大な話だねぇ。

それであんたが賢者の魔力を無理矢理奪った、と。」


「無理矢理じゃない!……けど……そう、だね……

選択肢がなかったから……それに近いのかも……」


「ま、それで命拾いしたんだ、賢者も文句はなかろうさ。

それであんた……『器』がずいぶんとでかくなってるね。心当たりはあるかい?」


キナは思い返すように空を見つめる。

そして、パッと宵森に視線を戻す。


「……『世界』から、お礼もらった……」


「『世界』から???」


宵森が目をぱちくりとさせる。


「定義が変わって管理者が消えたあと、世界が言ったんだ、『新しい秩序を定めよ』って。

腰が抜けるかと思った。で、新しい秩序は美しさで、命の間引きもされないで文明も刈り取られないで、

命の営み自体が世界を作っていく、って定めた。」


さすがの宵森も声が出ない。ごくりと喉を鳴らし続きを待った。


「そしたら、世界からのお礼だって、なんだか

すっごくあったかい力が入ってきて、荒れ果ててた

神殿も綺麗に生まれ変わったんだ。

だからきっと、器が成長したのはその時。」


宵森は合点がいったと頷いた。


「……そりゃあ、礼も言われるだろうさねぇ。

あんたは世界に『世界』を返したんだから。」


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