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夜天の魔女  作者: 宵宮 詠
第5章
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5 物好きな賢者


キナの得意げな笑みを見て、

アスランの張り詰めていた糸がぷっつりと切れた。

空色がしばらく呆然とキナを見ていたが、

やがて堪え切れなくなったように、ふっと笑い声を

漏らした。


「ふっ…… ふふっ…… は、はははははっ!」


小さな笑いが、次第に腹の底から湧き上がるような

笑い声に変わっていく。

アスランは背もたれに身体を預け、しばらくの間、

声を上げて笑い続けた。


「そうか……そうだったな……

君は、そういうやつだった……。

美の勝利、か……まったく……!」


キナは、ぷぅ、と膨れて見せる。


「そんな笑うけどさ、ほんと綱渡りだったんだからね?

管理者になんかなりたくないし

世界を崩壊させたくもないし

私はあなたとこの世に在りたかったし、

まじヤバかったんだから!」


ひとしきり笑った後、肩で息をしていたアスランが

再び噴き出した。


「まったく、とんでもないことをしでかしておいて、

口から出る言葉がそれか……

あの時の、君と来たら……!

世界を救っておいて、あれはないだろう!」


「世界なんか救ってないもん!私とあなたを救った

だけだもん!」


ヒイヒイと笑うアスランの脳裏にどんな自分が浮かんでいるか、キナは遠い目をして確信した。


(けどまあ、笑ってるからいっか。)


笑っているアスランが一番だ、とキナは自分を

納得させる。


やっと笑いを収めたアスランが、立ち上がりキナへと

近づいた。やれやれと首を振りながらも、その表情は

すっかり凪いでいる。

キナの前に膝をつき、真っ直ぐに視線を合わせながら


「まあ、いい。結果的に、君が無事で、ここにいる。それ以上、望む事はない。」


すっと片手を伸ばすと、キナの頬を包み込む。


「……奇跡みたいに丸く収まって、

今でも夢なんじゃないかと思うけど……

あなたに魔力を返してあげられない事が、

夢じゃないって教えてくれる。

魔女の魔力に変質しちゃったから……ごめんね?」


キナはアスランの手に頬を預けるように、

首を傾げた。


アスランは穏やかに首を横に振る。

空色の瞳が、柔らかにキナを見返す。


「謝ることなど、何もないさ。

その魔力は、確かに私のものだったのかもしれない。

だが、それを使って『美の勝利』を勝ち取ったのは

君だ。それに、だ。」


キナの頬に置いた手を引き戻し、

アスランは悪戯っぽく口の端を上げた。


「世界も理も関係ない。

これで君は永遠に、この私の弟子だ。

……これほど嬉しいことはないだろう?」


キナは目を丸くする。

そして、弾けるように笑い出した。


「この世に、『魔女』を弟子にしようとする人がいるなんて!」


「ああ、物好きな賢者も、いたものだ。」


二人は目を合わせ、隠れ家にまた、笑い声が響いた。


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