2 なりました
アスランは、しばらく無言でキナを見つめていた。
やがて、諦めたように肩をすくめ、ゆっくりと息を
吐き出す。
「……分かった。約束しよう。君の話を聞いて、
どんな内容であれ、私は決して怒らない。
これを誓う。……これで、満足か?」
キナはホッとしたようにコクコクと頷き、
椅子の背もたれに身を埋める。
紅茶を一口含み、ゆっくりと飲み下して、口を開く。
「ええと、まず……
私は『魔女』に、なりました。」
グッというおかしな音がアスランから聞こえ、
ゲホゲホと、咳き込む音が続いた。
「そっ……君……!
いや……言っていた…… 言っていたなぁ!?」
ゲッホゲッホ。
咽せながらアスランはあの詠唱を思い出す。
——夜天の魔女が希う。
「にしても!もっと言い方というものがあるだろう!?そんな、私二十歳になりました、みたいな……!」
ゲッホゲッホ。
「……えーと、ともあれ魔女になって、世界の理から
ちょっと外れて?」
「待て待て待て待て。君今ずいぶん端折ったろう。
ちゃんと魔女になったところから説明しなさい。」
「……ちっ。」
「舌打ちをしない!」
「「……。」」
二人は大層美しくシンクロして、紅茶を口にした。
「……魔女、とは…… 」
一息ついてキナが語り出す。
「魔女とは、
魔力を持つ者の中で一握りが到達する位階。
まず、魔女の器を持っていること。
持つ者を魔女の卵と呼ぶ。
私は、卵だった。
次に、己の魔力の器を超える魔力を、手に入れる事。
それを、臨界点と呼ぶ。
そして、臨界点を超え、その『身に余る魔力』を
御する事。
これが魔女になる条件。」
キナは一度、言葉を切る。そしてアスランの反応を
探るように、視線を投げた。
アスランは、無言でキナの説明を聞いていた。
そして、顔から血の気が引いていく。
「……その条件を満たすということは……
まさか……あの時、私の……!」
キナはこくりと頷く。
「本来、己の魔力を高める事で到達する高みに、
ちょっとチートな方法で達することができる。
それは己の魔力と同調する、極めて親和性の高い魔力
をもらう事。
これを教えてくれた魔女も、あまりに特殊で限定的な
条件だって言ってた。
でも、私にはあなたがいた。」




