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夜天の魔女  作者: 宵宮 詠
第5章
24/65

1 隠れ家


 キナが夜色の魔力で二人を優しく包み込むと、

世界の景色はふっと切り替わった。


美しく荘厳な空間から、一瞬にして見慣れた森の隠れ

家へ。窓から差し込む月明かりと薬草やハーブの匂い

が、我が家を実感させる。


アスランは、ぐるりと部屋を見回し、ふっと肩の力を

抜く。

キナは、小さくガッツポーズを決めていた。


(できた…… クラクラしない転移……!)


それを横目で見ながら、アスランはいつもの椅子に

深く身を預け、ふぅ、と長い息を吐く。

キナもその向かいへと腰掛けた。


アスランの視線を感じながら無言で指を振ると、

カチャカチャとキッチンで物音が鳴る。

やがて紅茶のカップが二つ、アスランとキナの前に

空を滑って現れた。


目の前に滑ってきた紅茶のカップを見て、アスランの

口元がわずかに緩む。

カップを手に取り、温かい湯気を吸い込みながら目を

細める。


「……相変わらず、器用なことをする。」


それからアスランは、じっとキナを見つめた。

その空色の瞳は、複雑な色に揺れている。

その視線を受け、キナはそっと紅茶のカップに

目を伏せた。


「キナ。本当に……ありがとう。」


キナは目を上げられなかった。

魔王プログラム、演算済みの守護者。

キナのせいで、アスランは知らずに済む事を知って

しまった。

そしてその怒りさえ、キナは魔女の儀式に消費して

しまったのだ。


「……ううん、私もありがとう。

あなたがいなくちゃ、成功しなかった。」


キナは囁くように声を紡いだ。

アスランは一つ頷き、言葉を探すように一度カップに

口をつける。


「だが……あれは、少しやりすぎだ。」


その視線は、まだどこか遠くを見ているようだった。

答えを探すかのようにその瞳が揺れる。


「君は……世界を造り変えてしまったんだぞ……」


「……ちょっと秩序を変えただけだもん……」


キナはごにょごにょと返した。

そしてゆっくりカップを傾けて、目を上げる。


「けど、それ以外にあいつを排除することはできなかった。全部、話す?長い話になる。

疲れているでしょう。明日にする?」


アスランはカップをソーサーに戻し、カチャリと

小さな音を立てた。


「いや、聞かせてくれ。今、全部だ。

何が起きて、どうして君があんな途方もない力を行使

することになったのか……知らずに眠れるわけがない。……それに……」


言いつつ、己の手の平に視線を落とす。

アスランはそこに確かにあったはずの

キナの手の感触を握りしめた。


「君はまるで、私の知らない『キナ』だった」


キナは、喉がこくりと鳴るのを紅茶で誤魔化した。

つ、と視線を上げると、アスランの空色を見つめ

返す。


「……まず、一つ、約束して欲しい。何を話しても……」


キナは一度言葉を切った。

アスランの問うような視線を受け止めながら、

続ける。


「……怒らないって。」


アスランは、呆気に取られた。


「怒る? ……怒る道理などどこにある。

世界の理さえ覆して、君は私を守ってくれたんだろう?その君に対して…… 」


アスランは言葉を切ってキナをまじまじと見つめた。


「それでもなお、怒られるような事をした自覚が……

あるんだな?」


「……約束、して?」


キナはそれだけ繰り返した。


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