6 おうちへ帰ろう
「ヤバ……かっ、た……」
天を仰ぐアスランの背後で呻き声が上がった。
弾かれたように振り向くアスランの目の前で、
キナはがくん、と膝から崩れ落ち、
両手を地面についた。
「ヤバかったヤバかったヤバかったっ……!!」
そして、ぺたんと座り込み、空を仰ぐ。
「……生き延びた……」
一瞬、ぽかん、としたアスランが、
次の瞬間にはキナに駆け寄る。
膝をつき、一瞬躊躇うようにキナに触れる。
腕を回してその体を支え、顔を覗き込む。
「だ、大丈夫なのか!?
どこか痛むのか、気分が悪いのか!?
今のは一体……いや、それよりも、君が……!」
「だ、大丈夫。安心したら、ちょっと力が抜けた
だけ……ほんとマジで良く生き延びた……
えらいぞ、私……」
改めて噛み締めるように呟くと、
ハッとしたように慌てて問いかける。
「そうだアスラン!魔力いっぱいもらっちゃった!
あなたは大丈夫!?」
アスランは一瞬言葉に詰まる。この期に及んで自分の
心配をするこの娘を、いったいどうしたら良いものか。
「……私のことはいい。君が無事なら、それで。
本当に、君はいつも私の想像を超えていくな。」
アスランは深いため息をつくと、どこか困ったように
笑みを浮かべた。
「心臓に悪い。本当に……」
「わかる。私も今同じ気持ち。寿命が縮むかと
思った。伸びたけど。」
その言葉に、アスランの眉がぴくりと動いた。
「寿命が、伸び、た……?
なら、まあ、良かった……のか?」
戸惑いを滲ませながらも、その声は安堵に満ちていた。
アスランは立ち上がり、改めて神殿の内部を見渡した。あの異質な空気に満ちていた空間は、今や生命の
息吹溢れる、静謐で温かな場所へと見事に変貌している。
「さあ、帰ろう。君が成し遂げたことが何なのか、
私にはまだはっきりとは分からないが……
ここで成すべきことは、終わった。」
こくりと頷き立ち上がるキナを支えながら、アスラン
は残る魔力を振り絞って転移を展開しようとする。
キナはその手をそっと押さえ、止めた。
「あなたからあれだけ魔力奪っておいて、
あなたに跳ばせると?私、そんなに鬼じゃない。」
くすりと笑って言えば、アスランの気遣わしげな瞳に
ぶつかる。
「ちょっと疲れただけ。精神的に。
『世界』からお礼もらっちゃったから、
魔力的にはめっちゃ満タン。
おうちに帰ろう?【テレポルタティオ】」




