2 港町スヴェイヤ
そんなこんなで朝食を終え、二人は宿を後にする。
南門を抜け、街道を外れた森の中に分け入ると、
二人の影は音もなく消えた。
クラクラする視界が収まると、そこはもう港町の
外れだった。風が潮の香りを運んで来る。
スタスタと歩き出すアスランを追ううちに、港町特有のあらゆる人種でごった返した街中に入った。
アスランが足を止め、おもむろにキナを振り返る。
そして
「姫。わたくしめにエスコートの栄誉を賜れますか?」
芝居掛かった口調でキナに手を差し伸べた。
「ええ、よろしくお願いいたしますわ?騎士様。」
キナもおっとりと笑んで見せ、優雅に手を重ねる。
「さあ、参りましょう姫。民草の喧噪が我らを歓迎
している」
人々は忙しなく行き交い、露店からは様々な香りが
漂ってくる。キナの手を握り、アスランは人混みを
縫う様に歩き出す。
肩と肩がぶつかりそうな人波に、アスランはキナを
引き寄せた。
「……迷子になるなよ?姫。」
「騎士様がこの手を離さぬ限り、迷うことはありませんわ?」
キナは笑いながら答えると辺りの喧騒を楽しむように
見渡した。
繋いだ手が僅かに強く握られる。
「……この手を振り切って、どこかに駆けていきそうな姫だからな……そうきょろきょろして、人攫いにでも狙われたらどうする。」
キナは小さく首を傾げてアスランを見上げる。
「一発KOします。」
アスランは一瞬絶句し、それからこめかみを押さえる。
「……姫らしからぬ威勢だな。頼もしくて何よりだ……」
深いた溜息の後、アスランは気を取り直したように
一軒の店を指差した。
「……まあ、いい。それより、あそこだ。」
アスランが指さした先には、
黒い海賊旗のようなマークが掲げられた、ひときわ活気のある店があった。店先には様々な色の粉末や、
奇妙な形をした果実が山と積まれている。
頼もしいと言われて「うふふん」と胸を張ったキナが、アスランの指先に目をやってパッと顔を輝かせた。
「いざ、騎士様、
海賊どものアジトへ乗り込みましょう!」




