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夜天の魔女  作者: 宵宮 詠
第3章
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2 港町スヴェイヤ


 そんなこんなで朝食を終え、二人は宿を後にする。

南門を抜け、街道を外れた森の中に分け入ると、

二人の影は音もなく消えた。


 クラクラする視界が収まると、そこはもう港町の

外れだった。風が潮の香りを運んで来る。

スタスタと歩き出すアスランを追ううちに、港町特有のあらゆる人種でごった返した街中に入った。


アスランが足を止め、おもむろにキナを振り返る。

そして


「姫。わたくしめにエスコートの栄誉を賜れますか?」


芝居掛かった口調でキナに手を差し伸べた。


「ええ、よろしくお願いいたしますわ?騎士様。」


キナもおっとりと笑んで見せ、優雅に手を重ねる。


「さあ、参りましょう姫。民草の喧噪が我らを歓迎

している」


人々は忙しなく行き交い、露店からは様々な香りが

漂ってくる。キナの手を握り、アスランは人混みを

縫う様に歩き出す。

肩と肩がぶつかりそうな人波に、アスランはキナを

引き寄せた。


「……迷子になるなよ?姫。」


「騎士様がこの手を離さぬ限り、迷うことはありませんわ?」


キナは笑いながら答えると辺りの喧騒を楽しむように

見渡した。

繋いだ手が僅かに強く握られる。


「……この手を振り切って、どこかに駆けていきそうな姫だからな……そうきょろきょろして、人攫いにでも狙われたらどうする。」


キナは小さく首を傾げてアスランを見上げる。


「一発KOします。」


アスランは一瞬絶句し、それからこめかみを押さえる。


「……姫らしからぬ威勢だな。頼もしくて何よりだ……」


深いた溜息の後、アスランは気を取り直したように

一軒の店を指差した。


「……まあ、いい。それより、あそこだ。」


アスランが指さした先には、

黒い海賊旗のようなマークが掲げられた、ひときわ活気のある店があった。店先には様々な色の粉末や、

奇妙な形をした果実が山と積まれている。


頼もしいと言われて「うふふん」と胸を張ったキナが、アスランの指先に目をやってパッと顔を輝かせた。


「いざ、騎士様、

海賊どものアジトへ乗り込みましょう!」


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