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夜天の魔女  作者: 宵宮 詠
第3章
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1 眠り姫


 夜が明け、陽の光が部屋を暖かく照らす。

遠くで小鳥がさえずり、新しい一日の始まりを告げている。

キナが目を覚ますと、天蓋のベッドは既に空だった。


 生成りのチュニックに細身のズボン。ベルトに空間魔法を施したポーチ。そして濃茶色のローブ。キナはいつも通りに支度を整えて部屋を出る。

道中、昨夜叶わなかった「宿の美の賛美」を心ゆくまで堪能し、食堂へと向かった。


 そこには既に朝食を終え、優雅にティーカップを傾けるアスランの姿が窓越しの陽光に煌めいていた。

途中、給仕をつかまえ注文を済ませたキナは、弾むような足取りでアスランへと近寄った。


「やっと起きたか眠り姫。おはよう。」


アスランがキナに気づき、悪戯っぽく笑う。


「よく眠れたか? 」


「おはようございます、朝露に煌めく王子様?」


キナは悪戯に悪戯で返してクスクス笑う。


「ぐっすり眠れました。ちょっとお寝坊でしたね、

お待たせしてごめんなさい。起こしてくれれば良かったのに。」


いや、むしろそちらの方が通常運転だ。

朝に弱いキナは何度布団を引っぺがされた事だろう。


「王子様」というキナの返答に、アスランは一瞬

きょとんとした後、呆れたように溜息を吐いた。


「朝からよく回る口だな。どこでそんな言葉を覚えてくるのやら。」


「アスランが『眠り姫』なんて言うからですよ?

姫と言われりゃ王子と返すのが世の定め。

様式美、と言うものです。」


キナが大真面目な顔で言うのを見て、アスランは

思わず噴き出しそうになるのを堪えた。

運ばれてきたキナの朝食に目をやり、自分も紅茶の

おかわりを頼む。


「まあ、いい。早く食べなさい。準備ができたら出発するぞ。」


「早く食べるのはやぶさかではないのですが……

珈琲だけは、急ぎたくない物No1のひとつでして……」


No1がいくつあるのかわからない返事をしながら、

キナはその香りを口に運ぶ。


「別に急かしてはいない。急ぐ道中ではないからな。

ゆっくり味わうといい。」


キナはサンドイッチに齧りついたままアスランを

凝視した。

どうやら叩き起こされなかった理由もそれらしい。


「……何をじろじろ眺めているんだ?」


「神の采配により完璧に配置された目と鼻と「それはもうやった。」


一刀両断だった。




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