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第6話:ライバル出現!?その名はロジカル・アズサ!

神崎美玲の日常は、新たなルーティンで回り始めていた。

日中はオプティクスワークスの営業事務として通常業務をこなし、合間を縫って昭和野製作所と経理部のDX推進をサポート。

そして終業後、時折発生する怪人を浄化する。

正直、キャパシティは限界を超えていたが、百々社長や根津部長が生き生きと新しいツールについて学んでいる姿を見ると、不思議と力が湧いてきた。


「美玲しゃん、ラフレスタとの打ち合わせ、そろそろ時間でしゅ! 遅刻はビジネスの基本がなってないと思われましゅよ!」

「わかってる! 今向かってるどころ!」

クライアント先へ向かう途中、バッグの中のペンデュルンに急かされ、美玲は早足になる。

株式会社ラフレスタ――健康と美容をテーマにした、今をときめくスタートアップ企業。

今日の打ち合わせは、彼らが新たに立ち上げるECサイトのインフラに関するものだった。


しかし、打ち合わせは開始早々、混乱を極めた。

「で、サーバーなんですけど、当初のプランAで進めてましたよね?」

美玲が切り出すと、ラフレスタの担当者・戸田はスマホの画面から目を離さずに答える。

「あー、それ、ナシで。昨日インフルエンサーのYUI様が『動画メインの方がバズる』って言ってたんで、今日から動画配信マシマシのプランCでお願いしまーす」

「えっ!? プランCとなると、インフラ構成から見積もりまで、全てやり直しになりますが……」

「大丈夫、大丈夫! スピード感重視で! あ、あとサイトデザイン、やっぱ今のトレンドじゃないんで、明日までに新しいの3パターンくらい提案してくれません? イケてる感じで」

チャットツールからは、矢継ぎ早に指示とスタンプが飛んでくる。

議事録を取ろうとしても、「そういう堅苦しいの、いらないんで」と一蹴される始末だ。


(この人たちには、計画性というものがないの……!?)

美玲のストレスが頂点に達しようとした、その時だった。

戸田のスマホが、けたたましい通知音を鳴らした。

競合他社が、新しいキャンペーンを仕掛けたらしい。

「ヤバい……! このままじゃ、ウチの話題が全部食われる……! もっと……もっとバズを! 炎上してでも、注目されなきゃ意味がねぇんだよォォォ!!」


戸田の絶叫とともに、彼の体からおびただしい数のSNSアイコンが噴き出した。

体は歪み、頭は常に通知が炎上しているスマホの形に、手足は無数の「いいね!」マークへと変貌していく。

「怪人……エンジョウキング!」

ペンデュルンが叫ぶ。

エンジョウキングは、周囲のビルやサイネージをハッキングし、意味不明な煽り文句やフェイクニュースを垂流し始めた。

街は混乱に陥る。


「こんなやり方、間違ってる!」

美玲は即座に変身し、エンジョウキングの前に立ちはだかった。

「あなたの情熱は素晴らしい! でも、その力を、もっと建設的な話題作りに使いましょう! 最適化ビーム!」

しかし、ミレイの放った最適化ビームは、エンジョウキングが展開した「炎上コメント弾」の弾幕によって、いとも容易くかき消されてしまった。

「無駄無駄ァ! 建設的な意見とか、マジウケる! 今の時代、正しさよりバズが全てなんだよ!」

エンジョウキングは高速で動き回り、ミレイを翻弄する。

その攻撃パターンは予測不可能で、的が絞れない。

「くっ……! 早い……!」

「美玲しゃん、ダメでしゅ! この怪人は、これまでのタイプと違いましゅ! 悲しみや苦しみから生まれたんじゃなく、カオスそのものを楽しんでるタイプでしゅ!」


エンジョウキングの放った「仕様変更ムチ」が、ミレイの肩を打つ。

激痛と共に、「え、今までの努力、全部無駄……?」という絶望感がミレイの心を蝕んだ。

「これで終わりだァ!」

とどめの一撃が放たれようとした、その瞬間。


「――そこまでよ。その戦い方、あまりにも非効率的ね」


凛とした声が響き渡った。

ミレイとエンジョウキングの間に、黒を基調とした魔法少女が音もなく降り立つ。

シャープなデザインのドレスに、紺色のロングブーツ。

その手には、クリスタルのように輝く鋭い片刃の剣が握られていた。


「な、誰……!?」

「私はロジカル・アズサ。社会のバグを駆除する者」

ロジカルアズサと名乗った少女は、エンジョウキングを冷徹な目で見据える。

「ターゲットの行動原理は、短期的な承認欲求の最大化。KPIは『バズること』のみ。ならば、その行動自体がシステム上の『エラー』だと定義し、削除するだけ」

「な、何を言って……」

ミレイが戸惑う中、アズサは剣を構えた。

「あなたの感情的なアプローチでは、この種のバグは除去できない。必要なのは、感情ではなく、完璧なロジック」


アズサは一瞬でエンジョウキングの懐に飛び込むと、その不規則な動きのパターンを完全に見切り、的確に剣を振るう。

「なっ……俺の動きが読まれてる!?」

「あなたの動きは、カオスに見えて、単一の『バズ』という指標に依存した単純なアルゴリズム。予測は容易い」

アズサは剣の切っ先をエンジョウキングに突きつける。

「バグは、即時デリートする。エラーデリート・ブレード!」

一閃。

青い閃光が走ると、エンジョウキングは悲鳴を上げる間もなく浄化され、後には「もっと……ちゃんとした計画を立てないと……」と呟く戸田が残された。


あまりに鮮やかな戦いぶりに、ミレイは言葉を失う。

「……すごい……」

「感心している場合? あなたのやり方では、被害が拡大するだけだった。覚えておきなさい、ミラクルミレイ。私たちは、決して仲間ではない」

そう言い残し、ロジカルアズサは夜の闇に消えた。


翌日。

オフィスで昨日の出来事をぼんやりと考えていた美玲は、ふと、同期の堀口梓に目を留めた。

梓は、驚異的な集中力でPCに向かい、複雑なデータを寸分の狂いもなく処理している。

その耳元で、ロジカルアズサの瞳と同じ、シャープな紺色のピアスが、蛍光灯の光を反射して冷たく光ったのを、美玲は見逃さなかった。


「……まさか……」


次回、魔法少女ミラクルミレイDX!

「第7話:交わらない正義、情熱と効率」

社会の理不尽、私がきっちり最適化します!

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