第34話:本社ビル変形! 魔の残業タワーを攻略せよ
ゴゴゴゴゴ……!
地鳴りと共に、オプティクスワークス本社ビルの形状が歪んでいく。
窓ガラスは鉄板に覆われ、エレベーターは封鎖され、フロアそのものが生き物のように脈打ちながら再構築されていく。
「きゃあああっ! 床が! 床が動いてますぅ!」
三浦由奈が悲鳴を上げ、傾いた床にしがみつく。
「落ち着いて! 重心を低くして!」
神崎美玲が由奈の手を掴む。
「空間歪曲率800%……! これはもうビルじゃないわ。巨大な『迷宮』よ!」
堀口梓が、ノイズの走るタブレットを必死に操作する。
変形が収まると、そこは無機質なパイプとケーブルが張り巡らされた、異様な空間に変わっていた。
天井からは「残業……残業……」という機械音声が降り注ぎ、赤い警報ランプが回転している。
「……社長室のある最上階へ行くには、この『魔の残業タワー』を登り切るしかないようですね」
美玲は、遥か上空へと続く螺旋階段を見上げた。
「行きましょう。黒鉄社長の暴走を止めるために」
***
「第1層:終わらない電話のフロア」
三人が足を踏み入れた最初のエリアは、電話のベル音が鳴り止まない恐怖のフロアだった。
『プルルルル! 至急! 至急!』
『クレームデース! 担当者出セェェ!』
無数の受話器が蛇のように襲いかかってくる。
「くっ……! 物理的な攻撃力が高い!」
アズサがブレードで受話器を切り裂くが、切った端から再生し、さらに数が増えていく。
「アズサさん、これキリがありません! 『対応』しちゃダメです!」
美玲が叫ぶ。
「え?」
「このフロアの罠は『真面目な人ほど捕まる』こと! 全部に対応しようとしたら、一生ここから出られません!」
美玲はロッドを構えた。
「アジャイル・コア、フィルタリング!
『優先順位・ゲート』!!」
美玲が展開した光の門が、襲い来る受話器を選別する。
『緊急』『重要』なもの以外は全てシャットアウトされ、壁となって崩れ落ちた。
「今のうちに! 次の階へ!」
***
「第2層:承認待ちの樹海」
次は、天井まで届く書類の山が迷路のように続くフロアだった。
行く手を阻むのは、印鑑を持った**「中間管理職ゴーレム」**たち。
『ハンコ……ハンコ……。ココト、ココト、ココニ……訂正印ガナイゾォォ!』
ゴーレムが巨大な印鑑を振り下ろす。
「ひぃっ! 承認印がないと通してくれないんですか!?」
由奈がシールドで防ぐ。
「正規のルートを通っていたら、社長室に着く頃には定年退職よ!」
アズサが舌打ちする。
「なら、ショートカットです!」
美玲がウインクする。
「由奈ちゃん、電子決裁ルートをこじ開けて!」
「は、はいっ! ペーパーレス化、強行します!」
由奈がタブレットをかざすと、書類の壁がデータ化され、道が開いた。
『グオオォォ! 俺ノ仕事ガ……ナクナルゥゥ!』
ゴーレムたちが崩れ去る中、三人はさらに上を目指す。
***
「第3層:無限ループの会議室」
そして辿り着いたのが、50階付近の長い廊下だった。
「……おかしいわね」
アズサが足を止める。
「さっきから、同じ景色を歩いている気がする」
廊下の両脇には会議室のドアが並び、中からは「検討します」「持ち帰ります」という声が聞こえてくる。
いくら進んでも、階段が見えない。
「これは……『結論の出ない会議』のメタファーか……!」
「どうすれば……。体力がもう限界ですぅ……」
由奈が座り込む。
美玲も、疲労で肩で息をしていた。
このタワーは、登れば登るほど、精神力を削り取るように設計されている。
「……諦めないで。出口は必ずあるはず」
美玲が壁に手を当てた、その時。
ドクン。
アジャイル・コアが微かに脈打った。
「……? 何か、反応してる?」
美玲は、コアが指し示す方向――壁の一角にある、古ぼけた通気口のような場所に目を留めた。
そこだけ、周囲のハイテクな装飾とは違う、古い空気が漏れ出している。
「ここ……。なんだか、懐かしい感じがします」
「懐かしい? この地獄みたいなタワーで?」
アズサがいぶかしむ。
「ええ。システムに管理されていない、アナログな気配……。
もしかしたら、ここに『攻略の鍵』があるかもしれません」
美玲はロッドで通気口のカバーを外した。
奥には、狭いが人が通れそうなダクトが続いている。
「正規ルート(階段)は罠だらけです。……この『裏道』を行ってみましょう」
「……非論理的な勘(直感)ね。でも、あなたの勘はよく当たるわ」
アズサが苦笑し、由奈の手を引く。
「行きましょう、先輩!」
三人はダクトの中へと潜り込んだ。
そこは、タワーの喧騒が嘘のように静かで、ほのかに木の香りが漂っていた。
その先にあるのが、創業者の魂が眠る「封印された部屋」だとも知らずに。
次回、魔法少女ミラクルミレイDX!
「第35話:封印された歴史! 創業者の涙と『心』の経営」
社会の理不尽、私がきっちり最適化します!




