第33話:再生怪人軍団! 役員報酬の闇
「さあ、始めようか。私の『直轄部下』たちの実力を」
黒鉄社長が指を鳴らすと、再生した黒井と灰谷の体が、眩い黄金の光に包まれた。
以前のような薄汚れた怪人の姿ではない。
彼らが纏っているのは、最高級のスーツのような漆黒のアーマーと、背中に輝く黄金のマント――それは、会社から与えられた**「役員権限」**そのものだった。
「ククク……力がみなぎる。これこそが『執行役員』の座か!」
黒井が両手を広げ、恍惚の表情を浮かべる。
「以前とは予算の桁が違う。……君たちのような一般社員とはね」
灰谷が冷徹に眼鏡を押し上げる。
「行きます! 変身!」
神崎美玲、堀口梓、三浦由奈の三人は瞬時に変身し、戦闘態勢をとる。
「まずは小手調べだ。喰らえ、『ストレス・インセンティブ』!」
黒井が腕を振るうと、黒い衝撃波が三人を襲う。
「防ぎます! シールド!」
由奈が防御壁を展開するが、衝撃波はそれを紙のように突き破った。
「きゃあっ!?」
「由奈ちゃん!」
三人は後方に吹き飛ばされ、社長室の壁に激突する。
「な、何ですか今の威力……!?」
美玲が呻く。
「ただの衝撃波じゃないわ。攻撃に『特別ボーナス』が上乗せされている……! 私たちの防御力(基本給)じゃ相殺しきれない!」
アズサがダメージを分析し、愕然とする。
「無駄だ。我々は社長から『無制限のエネルギー供給(役員報酬)』を約束されている」
灰谷が静かに歩み寄る。
「君たちが汗水たらして稼いだ利益は、全て我々の力になるのだよ」
「そんな……理不尽すぎます!」
美玲がロッドを構え直す。
「アズサさん、連携攻撃で一点突破しましょう!」
「ええ、やるわよ!」
二人が左右から同時に仕掛ける。
「最適化ビーム!」
「ロジカル・スラッシュ!」
だが、黒井と灰谷は避ける素振りすら見せない。
二人の攻撃が直撃する寸前、黄金のマントが自動的に展開し、攻撃を完全に無効化した。
「なっ……傷一つ付かない!?」
「『ゴールデン・パラシュート(退職金保証)』バリアだ。我々は、失敗しても守られる契約になっている」
黒井が嘲笑う。
「どんなに攻撃しても無駄だ。役員とは、存在しているだけで守られる特権階級なのだよ!」
「ぐっ……!」
反撃の隙を与えず、灰谷が手をかざす。
「コスト削減。君たちの体力(HP)を徴収する」
灰谷の手から赤い光線が伸び、三人の魔力を吸い上げ始めた。
「体が……重い……」
「私の魔力が……経費として処理されていくぅ……」
由奈がその場にへたり込む。
圧倒的な格差。
一般社員がどれだけ努力しても、制度そのものが役員に有利に作られている以上、勝機は見えない。
黒鉄社長は、その様子をワイングラス片手に眺めている。
「どうだ、神崎。これが『経営』だ。弱者は強者の養分となり、組織は維持される」
美玲の視界が霞む。
体中の力が抜け、膝をつきそうになる。
(これが……会社のトップ……。勝てないの……?)
その時、倒れた由奈が、震える手で美玲の足にしがみついた。
「せ、先輩……負けないで……」
「由奈ちゃん……」
「だって……先輩たちが稼いだお金で……あいつらが豪遊してるなんて……許せませんもん……!」
由奈の言葉に、アズサもふらつきながら立ち上がる。
「……そうね。私の成果を横取りされるのは、死んでも御免だわ」
美玲の心に、熱いものが蘇る。
恐怖でも、諦めでもない。
それは、現場で働く一人の人間としての、純粋な「憤り」だった。
「……社長。あなたは大きな勘違いをしています」
美玲は、ロッドを杖代わりにして立ち上がった。
「社員は、養分なんかじゃありません。
私たちが現場で頭を下げて、汗をかいて、信頼を積み重ねているから……!
あなたたちは、そこでふんぞり返っていられるんです!」
美玲の怒りに呼応し、ロッドのアジャイル・コアが、かつてない輝きを放ち始めた。
それは黄金の輝きではない。泥臭く、しかし力強い、現場の汗と涙の色――プラチナの輝きだ。
「黒井! 灰谷! あなたたちの報酬の源泉は、私たち社員の働きです!
ならば……その供給源、私たちが断ち切ります!」
美玲が叫ぶ。
「アズサさん、由奈ちゃん! 『内部統制』を発動します! 彼らの権限を監査して!」
「了解! 不正な利益供与は見逃さないわ!」
アズサがタブレットを高速操作する。
「私も手伝います! 全社員の『不満エネルギー』を、逆流させますぅ!」
由奈が叫ぶ。
「アジャイル・コア、オーバードライブ!
現場の声を思い知りなさい! 『ボトムアップ・ストライク』!!」
三人の魔力が螺旋を描いて収束し、黒井と灰谷に向かって放たれた。
それは物理的な攻撃ではなく、会社を支える全社員の「納得できない!」という意思の塊だ。
「ぬうっ!? なんだこの圧力は!?」
黒井が後ずさる。
「馬鹿な……! 役員報酬のバリアが……中和されていく!?」
灰谷の黄金のマントに亀裂が入る。
「役員だからって、あぐらをかいてる場合じゃありません!
働かざる者、食うべからずです!!」
美玲の一撃が、二人のバリアを粉砕した。
「グオオオォォ!!」
黒井と灰谷は、黄金のアーマーを弾き飛ばされ、壁まで吹き飛ばされた。
「はぁ……はぁ……」
煙が晴れると、ボロボロになった黒井と灰谷が、床に這いつくばっていた。
「ば、馬鹿な……エグゼクティブ権限が……」
その時、ゆっくりと拍手の音が響いた。
パチ、パチ、パチ。
「……見事だ」
黒鉄社長が、椅子から立ち上がっていた。
彼は倒れた二人には目もくれず、美玲たちを見下ろした。
「現場のエネルギーが、経営陣の守りを超えたか。……その熱意は評価しよう」
黒鉄の全身から、凄まじいプレッシャーが放たれる。
それは怪人の比ではない。歴戦の覇王の如きオーラだ。
「だが、遊びは終わりだ。
君たちの反乱は、私の計画を少し早めたに過ぎない」
黒鉄が机の上の赤いボタンを押した。
ゴゴゴゴ……!
ビル全体が激しく揺れ始める。
「な、何ですか!?」
「緊急地震速報!? いえ、違うわ! ビルの地下から……何かが上がってくる!」
黒鉄は不敵に笑った。
「オプティクスワークス本社ビルそのものが、巨大な『怪人製造プラント』へと変形するのだ。
さあ、これからは総力戦だ。
会社と社員、どちらが生き残るか……存分に殺し合おうじゃないか」
窓の外、東京の夜景が赤く染まっていく。
巨大企業のトップが、ついに本気で牙を剥いた。
役員報酬の闇を晴らした先に待っていたのは、会社そのものとの全面戦争だった。
次回、魔法少女ミラクルミレイDX!
「第34話:本社ビル変形! 魔の残業タワーを攻略せよ」
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