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第2話:昭和の圧力!?プレッシャーオーラとの戦い!

「ドォン!!」


爆音と地響きで、我に返る。

目の前では、怪人と化した百々(どど)社長――いや、怪人ドドゲラがアスファルトを叩き割り、その破片を周囲にまき散らしていた。


「いやいやいや、無理無理無理! なんで私がこんなフリフリの格好で、怪人と戦わなきゃいけないの!?」

ピンクを基調とした魔法の衣装は、場違いなほどに可愛らしい。だが、美玲みれいの心は現実逃避でいっぱいだった。

胸元の社員証そっくりのチャームが、まるで「お前は戦え」と命じているかのように青く光っている。

「美玲しゃん、しっかりするでしゅ! 相手は社会の理不尽が生み出した怪人でしゅよ!」

足元で、ハムスターともウサギともつかない妖精、ペンデュルンがぴょんぴょん跳ねる。

「理不尽って……あの社長、根は悪い人じゃないのよ! ちょっと頑固なだけで……」

「その“ちょっとの頑固”が、社員のやる気を吸い取り、街全体の活力を奪う“圧力”になってるでしゅ! 見るでしゅ!」


ペンデュルンが指す(?)方向を見ると、ドドゲラから発せられる赤黒いオーラ――昭和の圧力プレッシャーオーラ――に当てられた人々が、次々と地面に倒れ伏していた。

誰もが「どうせ俺なんて……」「頑張っても無駄だ……」と虚ろな目で呟いている。


「スマホばっか見てんじゃねぇ! 俺の目を見ろ! 気合で乗り切れェェ!!」

ドドゲラの咆哮とともに、プレッシャーオーラが津波のように押し寄せる。

「うっ……!」

息が詰まる。全身に鉛を流し込まれたように重く、思考が鈍っていく。これが、やる気を吸い取られる感覚……!


「美玲しゃん、戦うでしゅ! 愛と書類とハンコで!」

「だからその武器が何なのか教えてよ!」

「それは美玲しゃんが自分で見つけるでしゅ! ヒントは、美玲しゃんがいつもお仕事でやっていることでしゅ!」


仕事? 私の仕事は、営業、契約書類作成、電話対応、顧客との板挟み……。

そんなもので、どうやって戦えと?

混乱する美玲を、ドドゲラは見逃さない。


「新人が育たねぇのは、見て盗む根性がねぇからだ! 俺たちの若い頃はなぁ、先輩の技は目で盗んだもんだ! マニュアルなんぞ、甘えだァァ!!」

ドドゲラが腕を振りかざすと、無数の古い工具や書類の束が意志を持ったかのように美玲に襲いかかる。

「きゃあ!」

咄嗟に身をかがめて避けるが、数発が腕をかすめる。

痛い、というより、心が削られるような奇妙なダメージだ。


「なぜだ! なぜFAXじゃダメなんだ! ボタン一つで送れる、こんなに便利なものはないだろうがァァ!」

今度は、背中から巨大なFAXの幻影が現れ、美玲にのしかかる。その幻影からは、延々と紙が出続けている。

「重い……!っていうか、紙がもったいない……!」

必死に耐えながら、美玲はドドゲラの叫びを聞いていた。

(見て盗め……FAXが便利……。これって、いつも社長が言ってること……?)

怪人になっても、彼の主張は変わらない。それは、彼が信じてきた「正しさ」そのものだった。


「美玲しゃん! 相手の言葉をよく聞くでしゅ! あの人の本当の望みはなんでしゅか!」

ペンデュルンの声に、はっとする。

望み……? 百々社長の望みは、会社の成長。社員の成長。ただ、そのやり方が古く、今の時代とズレているだけ。彼は、どうすればいいか分からなくて、もがいているんじゃないか?


「――そうか。この人は、ただ会社を良くしたいだけなんだ……!」

その瞬間、美玲の中で何かが切り替わった。

恐怖が消え、代わりに「なんとかしてあげたい」という気持ちが湧き上がってくる。

胸のIDカード型チャームが、ひときわ強く輝いた。


「そうでしゅ! それが美玲しゃんの“愛”でしゅ! なら、次は“書類”と“ハンコ”でしゅ! そのチャームに、デジタルの力で契約を取って課題を解決すると強く願うでしゅ!」

「デジタルの力で……課題を解決……!」

美玲は、チャームを強く握りしめた。

(百々社長の課題は、アナログな業務フロー! それを変えるには……!)


「見て盗め、なんて時代遅れです! “ナレッジ共有クラウド”で、誰でも技術を学べる環境を作るんです!」

美玲が叫ぶと、チャームから光の矢が放たれ、襲い来る工具の幻影を撃ち抜いた。

光に触れた工具は、キラキラと輝く分かりやすい3Dマニュアルへと姿を変えて消えていく。


「な、なんだとぉ!?」

「FAXでのやり取りは、確認の手間も紙も無駄です! “ビジネスチャット”を導入すれば、リアルタイムで、正確にやり取りができます!」

美玲の言葉が、巨大なFAXの幻影に突き刺さる。

幻影は断末魔のような音を立てて霧散し、後には軽やかな通知音が響いた。


プレッシャーオーラが、明らかに弱まっている。

ドドゲラは膝をつき、苦しそうに呻いた。

「うぐぐ……俺たちのやり方が……俺たちが築き上げてきたものが、そんなに……ダメだというのか……!」

その声は、怒りよりも、悲しみに満ちていた。


美玲は、ゆっくりとドドゲラに歩み寄る。

「ダメじゃないです。社長たちのやり方があったから、今の昭和野製作所があるんです。その素晴らしい技術を、未来に繋げるために……もっと良くする方法があるって、言ってるんです!」

それは、魔法少女としてではなく、一人のOL、神崎美玲としての本心だった。


「これが、本当のデジタルトランスフォーメーションです! 社長!」

美玲はチャームを天に掲げた。彼女の想いに応えるように、光が収束していく。

「喰らえ、理不尽! 届け、私の想い! 最適化ビーム(オプティマイズ・レイ)!!」


放たれたピンク色の光線が、優しくドドゲラを包み込む。

「ぐおおお……なんだか……頭が……スッキリする……! そうか、そういうことか……!」

赤黒いオーラは浄化され、肥大化した筋肉はみるみる萎んでいく。

光が晴れたとき、そこには作業着姿のまま、きょとんとした顔で立つ百々社長がいた。


「……あれ? 俺は確か、一杯飲んで帰ろうと……。うーん、なんだか、すごく良いアイデアを思いついた気がするぞ!」

百々社長はそう呟くと、少し軽やかな足取りで夜の街に消えていった。


「……終わった……」

変身が解け、元のスーツ姿に戻った美玲はその場にへたり込んだ。

「お見事でしゅ、美玲しゃん!」

「もう二度とごめんだわ……」


翌朝。

オプティクスワークス株式会社のオフィスに、美玲のデスクの電話が鳴り響いた。

「はい、オプティクスワークス神崎です」

『おお、神崎さんか! 昭和野製作所の百々だ!』

やけに元気な声に、美玲は身構える。

『いやぁ、昨日はすまんかった! なんかよく分からんが、急に吹っ切れてな! 一度、あんたにちゃんと“DX”ってやつの話、聞いてみようと思ってな! 前向きにだ!』


「――え?」


受話器を握りしめたまま、美玲は固まった。

魔法少女の戦いは、現実の仕事に、たしかに影響を与え始めていた。


――いやいや、ちょっと待って。

じゃあ、これって、これからも続くってこと!?


美玲の地獄のOLライフは、さらにデラックスな様相を呈し始めたのだった。


次回、魔法少女ミラクルミレイDX!

「第3話:恐怖!判子リレーと稟議書の森!」

社会の理不尽、私がきっちり最適化します!"

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