表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/38

第12話:決裂!私たちのワークライフバランス

ストレス・マキシマイズ社――その存在が明らかになってから、神崎美玲かんざき・みれい堀口梓ほりぐち・あずさの関係は、表面上は変わらないものの、水面下で大きく変化していた。

二人は魔法少女として、夜な夜な密かに接触し、黒井と名乗った男の情報を共有するようになっていたのだ。


「これまでの怪人発生地点と、黒井の目撃情報をマッピングしたわ。特定の業種や地域に偏りはない。奴らは、どこにでも現れる」

深夜の公園。マジカル・アズサは、空中に投影した光のマップを指し示しながら、冷静に分析結果を述べる。

「……ありがとう、梓。すごいよ、こんな短時間で」

ミラクルミレイは、素直に感心した。自分一人では、決してここまで辿り着けなかっただろう。

「当然よ。感傷に浸る時間があるなら、一秒でも多くデータ分析に充てるべき」

アズサの言葉はいつも通り辛辣だが、その奥に確かな危機感が滲んでいるのを、ミレイは感じ取っていた。


しかし、二人の協力関係は、根本的な思想の違いによって、常に危ういバランスの上に成り立っていた。

ある夜、二人は同時に、巨大な商業施設で発生した怪人の気配を察知した。

現場に駆けつけると、そこでは施設の警備員が怪人化し、暴れていた。長時間労働と、理不尽なクレーム客への対応。そのストレスが、彼をモンスター・クレーマーへと変貌させたのだ。


「お客様は神様だろォォ! 神の言うことには、絶対服従しろォォ!」

怪人は、客の無理難題をそのまま叫びながら、周囲の店舗を破壊していく。

「止めましょう、梓!」

「ええ」

二人は同時に飛び出すが、そのアプローチは正反対だった。


ミレイは、まず避難誘導を優先する。

「皆さん、危ないです! こちらへ!」

逃げ遅れた客を庇い、怪人の攻撃を受けながらも、安全な場所へと導いていく。

一方のアズサは、最短距離で怪人へと突進する。

「ターゲットの行動パターンは単純。クレームという名の攻撃を繰り返すのみ。ならば、その攻撃の起点を潰すまで」

アズサは、怪人の攻撃を最小限の動きでかわし、的確に急所だけを狙っていく。


その戦い方の違いが、最悪の事態を招いた。

アズサが怪人の腕を切り落とそうとした瞬間、ミレイがその攻撃範囲にいた客を庇って飛び込んできたのだ。

「危ない!」

アズサは咄嗟に剣を引くが、その一瞬の隙を、怪人は見逃さなかった。

「まとめて消えろォォ!」

強力な一撃が、二人をまとめて吹き飛ばした。


「……っ!」

「……ぐっ……」

瓦礫の中に倒れ込みながら、アズサはミレイを睨みつけた。その瞳には、これまで見せたことのない、激しい怒りの色が浮かんでいた。

「……なぜ、邪魔をしたの」

「邪魔なんかじゃない! 人を助けようと……!」

「あなたのその自己満足な『人助け』が、被害を拡大させていることに、まだ気づかないの!?」

アズサの怒声が、静かな夜に響き渡る。

「あなたのやり方は、非効率的で、甘くて、危険すぎる! 敵は、そんな感傷が通用する相手じゃない! 黒井という明確な悪意を前にして、まだそんなおままごとを続けるつもり!?」


「おままごとじゃない!」

ミレイも、感情的に言い返した。

「梓こそ、人の心が見えてない! あなたがやっているのは、ただのバグ駆除よ! でも、相手はプログラムじゃない、心を持った人間なの! 苦しんでる人を、ただ『削除』するなんて、私にはできない!」

「それが、あなたの限界よ」

「それが、私の戦い方なの!」


二人の魔法が、互いの感情に呼応するように、激しくぶつかり合う。ピンクとブルーの閃光が、夜空を焦がした。

その光景を、遠くのビルの屋上から、黒井が満足げに見下ろしていた。

「素晴らしい。実に素晴らしい。正義と正義がぶつかり合う時、最も質の高いストレスエネルギーが生まれる。魔法少女同士の仲間割れとは……最高のディナーになりそうだ」

彼の策略通り、二人の絆には、修復不可能なほどの亀裂が入ってしまった。


「……もう、あなたとはやっていけない」

アズサは、冷たくそう言い放つと、瓦礫の中から立ち上がり、背を向けた。

「私も、あなたとは戦えない」

ミレイもまた、アズサのやり方を受け入れることはできなかった。


二人の魔法少女は、決裂した。

最強のコンビになるはずだった光は、二つに分かれ、それぞれの孤独な夜へと消えていく。

ストレス・マキシマイズ社の本格的な脅威が迫る中、あまりにも、無防備な別離だった。


次回、魔法少女ミラクルミレイDX!

「第13話:敵の名は『ストレス・マキシマイズ社』」

社会の理不尽、私がきっちり最適化します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ