表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/38

第11話:敵の幹部?謎の男、現る

昭和野製作所のDXは軌道に乗り始め、経理部のワークフローシステムも無事に稼働を開始した。神崎美玲かんざき・みれいの日常は、これまでにないほどの充実感に満ちていた。

「美玲しゃん、最近いい顔してるでしゅ! DXの女神様みたいでしゅ!」

「もう、大げさなんだから」

バッグの中のペンデュルンとの軽口にも、自然と笑みがこぼれる。自分の仕事が、誰かの役に立っている。その実感が、美玲を突き動かす原動力となっていた。


だが、その一方で、堀口梓ほりぐち・あずさの様子は明らかに普段と違っていた。

完璧な仕事ぶりは相変わらずだが、休憩時間になると、PCで何かを熱心に検索したり、難しい顔で考え込んだりしている。その姿は、まるで目に見えない敵の影を追っているかのようだった。

(梓、何を調べてるんだろう……?)

美玲が声をかけようか迷っていると、梓は鋭い視線でこちらを一瞥し、ふいと席を立ってしまった。二人の間には、まだ見えない壁が存在している。


その日の夕方。

退社した美玲が駅へと向かう雑踏の中、奇妙な違和感に気づいた。人々が皆、自分のスマートフォンを食い入るように見つめ、その表情がみるみるうちに絶望に染まっていくのだ。


「あなたの市場価値、下がってませんか…?」

「その年収、同級生より低いって気づいてます…?」

「頑張っても昇給3千円で満足ですか…?」


あちこちから聞こえるうめき声。それは、個人の不安を的確に抉る、悪意に満ちた情報の刃だった。


この異常事態の中心に、一人の男が立っていた。

先日、休日出勤騒動のビルから見えた、あの黒スーツの男だ。彼は怪人化していない。ただ、満足げな笑みを浮かべ、人々の苦しむ様を眺めている。

男は、美玲の視線に気づくと、まるで旧知の友人に会ったかのように、にこやかに歩み寄ってきた。


「神崎美玲さん、ですね。オプティクスワークス株式会社にお勤めの」

「……なぜ、私のことを?」

驚きで声が上ずる美玲に、男は丁寧な所作で名刺を差し出した。

「これはご挨拶が遅れました。私、ストレス・マキシマイズ社のアカウントプランナー、黒井くろいと申します」

聞いたことのない会社名。その名刺からは、インクの匂いではなく、冷たい絶望の匂いがした。


「我々は、現代社会に溢れるストレスという無形資産を、価値あるエネルギーに転換する事業を展開しておりまして。近頃、あなたの周りで我々のビジネスを妨害する動きが多発していると聞き、ご挨拶に伺った次第です」

黒井は、美玲が関わった怪人化事件を全て把握していることを、その言葉で暗に示した。

「あなた方が『怪人』と呼ぶアレは、我々にとっては大切なエネルギー源。いわば『商品』です。それを、あなたは浄化などという野蛮な方法で無価値にし、あまつさえDXなどという小賢しい真似で、資源そのものを枯渇させようとしている。実に、嘆かわしい」


黒井はそう言うと、指をパチンと鳴らした。

その場で最も絶望していたサラリーマンが、悲鳴とともに黒いオーラに包まれる。

「さあ、お見せしましょう。我々プロのマネジメント能力を!」

生まれた怪人――アセスメント・デーモンは、これまでの怪人のように感情を爆発させるのではなく、冷徹な目で美玲を分析し始めた。

「対象、魔法少女ミラクルミレイ。戦闘能力C、精神的脆弱性A。排除するには、デーモンのコストパフォーマンス最適化が必要……」


「人の心を弄んで……許さない!」

変身したミレイが立ち向かうが、アセスメント・デーモンの動きは、黒井の指示によって完全に統率されている。的確に弱点を突き、最小限の動きでミレイを追い詰めていく。

「無駄ですよ。自然発生した野生の怪人とは違う。これは我々が管理・育成した、エリートなのですから」

黒井が嘲笑う。


ミレイが追い詰められた、その時。

一筋の青い閃光が、アセスメント・デーモンの腕を弾き飛ばした。

「――やはりあなただったのね。社会のバグを意図的に生成するハッカー」

ロジカルアズサが、冷たい怒りをその瞳に宿して立っていた。

「おや、これはこれは。もう一体、厄介なのがいましたか」

黒井は肩をすくめる。

「まあ、良いでしょう。今日のところは顔見せということで、失礼させていただきます」

黒井は怪人を自爆させ、その爆発の隙に、影に溶けるように姿を消した。


後に残されたのは、呆然と立ち尽くすミレイと、険しい表情のアズサだけだった。

「分かったでしょう、ミラクルミレイ」

アズサは、初めてミレイの目を見て、はっきりと言った。

「私たちの敵は、もっと組織的で、悪意に満ちている。感傷に浸っている暇はない。これはもう、ただの人助けじゃないのよ」


ストレス・マキシマイズ社。黒井。

初めて明かされた明確な「敵」の存在に、美玲はゴクリと唾をのんだ。

この戦いが、自分が思っていたよりも、ずっと深く、暗い場所へと繋がっていることを、彼女は悟ったのだった。


次回、魔法少女ミラクルミレイDX!

「第12話:決裂!私たちのワークライフバランス」

社会の理不尽、私がきっちり最適化します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ