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第1話 婚約破棄と登場

2年前に書いて未投稿だった短編を中編に書き直しました!小説を発掘して嬉しくなっちゃった♥︎︎


ぜひぜひお楽しみください(≧∀≦)


*⑅︎୨୧┈︎┈︎┈︎┈︎୨୧⑅︎*

第1話を修正しました!!2025/07/19

「アイラ・コーデリア! お前との婚約を破棄する! ここにいるカロリーナへの愚行、私が知らないとでも思ったか! お前のような女は未来の国母として相応しくない!!」


王太子ライト殿下の怒声が、大広間の天井を震わせるように響き渡った。

煌びやかなシャンデリアの光が、殿下の青い瞳の苛立ちを強く照らし出している。


学園の卒業式後に開かれた夜会。艶やかなドレスの貴族令嬢たちが一斉に動きを止め、楽団の演奏も息を呑むように中断された。ざわめきと好奇の視線が、嵐のように私に降りかかる。


――まぁ! まぁまぁまぁ!!この私に婚約破棄を宣言なさるなんて、やっぱり殿下は憎めない方ですこと。

王太子殿下の婚約者となって八年。退屈な王太子妃教育や、やりたくもないお茶会――すべて、もう終わりだと思うと、心が少し軽くなる。


「おい! アイラ!! 聞いているのか!」


殿下の声が再び大広間を裂いた。私は肩をすくめ、扇子で軽く口元を隠す。


「聞こえておりますわ、ライト殿下。お声が大きすぎて、隣のご令嬢が震えておりますことよ」


――聞いてはいませんが、聞こえてはおりますの。

私の冷たい皮肉は、殿下の耳には届かない。彼はただ怒りに燃えているだけだ。


「カロリーナはお前に怯えているのだ!」


「わたくしに? なぜ?」


殿下の背に隠れた令嬢――桃色のふわふわした髪、胸元が大胆に開いたドレス。カロリーナ嬢は涙を大粒に零し、芝居がかった声で震えながら言った。


「アイラ様! 謝っていただければ……いいのです。わたくし、とても怖かった……」


――まぁ、見事な泣き顔。舞台女優でも目指しているのかしら?拍手でも贈りたいくらい。


私は軽く笑い、胸元のリボンを整えながら一歩前へ出る。


「ところで――昨夜、わたくしは邸におりましたわ」


事実を淡々と告げ、懐から取り出したのは王太子殿下付きの侍女の伝言書だ。


「夜会の準備は邸で行うこと」

――殿下自らの命と記されている。


「そんなもの偽造だ!」殿下の顔が真っ赤になる。

苛立ちが増すほど、その青い瞳がぎらつく。


「まぁ、わたくしがそんなことをして何の得が?」

私は扇子をパチリと開き、微笑む。

「それより――カロリーナ嬢。未婚のご令嬢が、夜に王宮の居住区で……何を?」


一瞬、広間の空気が張りつめた。視線がカロリーナに突き刺さる。


「ライと夜にお茶を嗜むことくらい、いいじゃない!」


――ざわっ。広間にどよめきが走った。

『夜のお茶』――それは密会の隠語。

貴族たちの視線が一斉に彼女へと向けられ、冷たい囁きが飛び交う。


「まぁ……婚約者でもない方が、王太子殿下と……」

私の声にわずかに軽蔑を滲ませると、カロリーナは絶句した。


「ええい! 衛兵、この女を捕らえろ!」

殿下の命令が響く。しかし――近衛は動けなかった。


――ぞわり、と。


大地の底から這い上がるような魔力が、広間を支配したから。

煌びやかなシャンデリアの光が翳り、空気が重く沈む。

冷気のような魔力の圧に、息が詰まる。

貴族たちは悲鳴を上げ、ひざまずくしかなかった。


――そして、彼がいた。


漆黒のマントをまとい、紅い双眸を静かに光らせる男。

その存在だけで、世界が塗り替わったように感じた。


「やっと逢えたね――私の愛しいヒト、アイラ」


低く艶やかな声が、耳の奥を震わせる。

彼は私の前に立ち、氷のように冷たい指先で頬をそっと撫でた。


「婚約、破棄されてしまいましたの」

わざとらしく肩をすくめると、彼は喉の奥で笑った。


「あぁ……やっと、お前を手放してくれたらしいな」


「誰だ貴様!」

殿下の叫びは震え、青い瞳は恐怖を隠せない。


「名乗る価値があると思うか?」

赤い瞳が細められ、冷ややかに笑う。

「……だが、そうだな。お前たちの言葉で言うなら――魔王、だ」


悲鳴が広間に響き渡る。

伝承でしか聞かぬ絶望の王。

その名を口にした瞬間、空気が凍りつく。


「さぁ、行こう。私の妃」

彼は私を軽々と抱き上げ、低く囁いた。

「この世界で、お前を解き放てるのは、私だけだ」


「……ええ、お願い致しますわ」

頬を寄せ、彼の胸の鼓動に身を委ねると、胸の奥がほどけた。


「待て! 王国に仇なすつもりか!」

殿下の叫びが遠のく。


「仇なす? 違うな」

彼は嗤った。

「――この国ごと、奪い取るだけだ」


そして、私たちの姿は闇に溶けた。

残されたのは、震える王族と、崩れ落ちる貴族たち。


広間に響いた最後の声は――。

『――この国が欲しければ、奪いに来い』


私は魔王の腕の中で微笑む。

――あぁ、やっと。私の魔王様。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

婚約破棄され、王太子から奪われたアイラの物語はまだ始まったばかり。

これから魔王様の溺愛が一気に加速し、王国の陰謀も動き出します!

次回の展開を楽しみにしてもらえたら嬉しいです(*´艸`)


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「読んだよ!」の一言でも大歓迎です!

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