第3話 ジジイ、またやりおったぁ!
ハイブリたん王国首都『アカサカ・ハゲチラカス』。
ダマラッシャイ饅頭が名物。
饅頭の外はカリカリ。
中のクリームは、カサカサのパッサパサ。
口中の水分を、ぜんぶ持っていかれるタイプの菓子だ。
口うるさい相手を、“一発で黙らせる最終兵器”として人気がある。
冒険の装備を整えるため、爺とヨワメは、ショップ街に立ち寄っていた。
「爺ちゃん。そろそろ服、替えたほうがいいって。そのパジャマと腹巻じゃあ、魔王に鼻で笑われるよ?」
「このパジャマはな、ドラゴンの皮でできとるんじゃ。寝心地さいこう! 攻撃+10、防御+1200、血圧+300じゃ」
「寝る気満々じゃねぇか! というか、血圧計振りきるでしょ!」
二人が入ったのは、ショップ街の人気店。
「いらっしゃいま、せ? あら、ジジイ? そのダサい格好、もはや犯罪レベルっすね」
店の奥から現れたのは、接客態度がドSランクの毒舌イケメン店員だ。
「おいジジイ、もう引退してんだろ? 無理して若作りとか、見苦しいっすよ」
店員の言葉を聞いた瞬間、ヨワメの体が凍りつく。
やばいんじゃね? この空気……。
爺ちゃんの“アレ”が出る!
「動画、動画!」
投稿サイトにアップしようと、ヨワメは魔導スマホを爺に向ける。
爺は、さっき買った『ダマラッシャイ饅頭』を、イケメン店員の口にねじり込む。
効果的面だった。
店員の顔が、みるみる青白くなっていく。
「ふぉ……ふぉ……ふぉぉぉ……」
饅頭の粉が、爺の鼻腔を刺激する。
ヒクつき始める爺の鼻。
「来る、来るぞ! 爺ちゃんのくしゃみメテオが!」
「……はっ? くしゃ──」
ド ガ ァ ァ ァ ァ ア ア ア ア ン !
店とヨワメのスマホが消し飛んだ。
残されたのは、ぽつんと立ち尽くすヨワメ本体。
と、カラダの水分を和菓子に強奪された、イケメン店員だけ。
「ジジイ、またやりおったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
絶叫から数分後。
警備隊に囲まれながら、ヨワメは強めに言った。
「鼻のブレーキとアクセルを踏み間違えたっていうか……。ち、違うんです、あの爺ちゃんが勝手にくしゃみして、店がハッピーハロウィンでカーニバルしたんです!」
ヨワメは、わけの分からないことを口走る。
「うるさい、テロだ! シルバー・テロだ!!」
「ねえ、爺ちゃん? ってか、おらんのかい!」
一方、そのころ。
空の彼方に、鼻をかみながら空を飛ぶ爺の姿があった。
「あの若造、歯並びと顔面は良かったが、態度が悪かったからのう……スッキリしたわい」
爺のくしゃみは、ドラゴンすら消滅させるほどの気圧を伴う超咆哮呪文である。
正式名称『老秘奥義・鼻雷撃魔破』。
警備隊に連行される途中、ヨワメは天をあおぎながら弱めに呟いた。
「あの爺ちゃんが世界を救うのか。いや、世界壊してね?」