表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/6

第2話 骨伝導かっ!

 人でごった返す冒険者ギルドの中で、少女が溜息をついた。


「はぁ……また、クエスト受注失敗かぁ。これでも、未来の勇者候補なんだけどなぁ……」


 彼女は『金剛力(コンゴウリキ) 弱芽(ヨワメ)』。

 上げて落とす! みたいな氏名の少女は、魔導スマホでSNSばっかり見ている。

 楽して明日のスター(勇者)を夢見る、ちょっと残念な娘だ。


 いろいろな事業を興しては、撤退を繰り返す。

 焼き菓子のプロデュースを手掛けたが、見事に玉砕。

 売れたのは3個だけ。

 菓子の名は『おじいちゃんの根性焼き』だった。


「#世界滅亡なう、でバズらないかな……」


 そのときだった。


 ギルドの重い扉が、爆音とともに吹っ飛んだ。


「……すちゃたらばぁぁぁ!」


 立ち昇る煙の中から現れたのは、ファイナルふぁんたジジイだ。


 腰の曲がった爺の姿はブーメラン。

 床にぶっ刺さったブーメラン、いや、爺が立ちあがる。


 背中には『今月ぶんのおくすり袋』を背負う。

 袋には、年々増え続ける大量の診察券が入っている。


「だ、誰ですくわぁ? ギルドにブーメランを投げこんだのは!」


 ギルドの受付嬢が絶叫した。


 爺は、ずかずかと遠慮なくカウンターに近づき、真剣な顔で言い放つ。


「若者が頼りにならん時代じゃ。わしが勇者やるぞい」


 爺の一言で、ギルド内が静まり返った。


「何かのコント? 爺ちゃんはブーメランなの?」


 傍らにいたヨワメが、不思議そうな顔で爺に話しかけた。


「コンセントじゃないわい。コルセットじゃ。つけ忘れたんじゃがな!」

「誰がうまいこと言えとぉぉぉ!!」


 思わずツッコミを入れたヨワメの声が響く。


「爺ちゃんって、いくつよ?」

「99歳と11ヶ月と27日と6時間と6分《《66》》秒……」

「何時計だよ! ってか、爺ちゃん。頭のそれはなに?」

「これか? 補聴器じゃ」

「骨伝導かっ!」

「は? あんだって?」


 都合の悪いことは、爺の耳には入ってこないらしい。


 ヨワメが脳内で思考をめぐらせる。

 この爺ちゃん、ただのボケ老人に見えるんだけど。

 なんか気配がバグってるし、顔がパグっぽい。


 え? ウソ……レベル999……!?


 ヨワメのスマホ魔導スキャンが弾き出した数値は、常識をはるかに超えていた。


「わしの必殺技、『くしゃみメテオ』を試すにはちょうどええ天気じゃの……ふぇ……ふぇっ……くしょん!!!」


 爺がボソッと呟やくと、すぐさま、遠くの火山が噴火した。


「なんで?」


 脱力したヨワメの手から魔導スマホがこぼれ落ちた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ