夕日の手
昨日の夕日が差す丘、
風が強く東の空は曇天
夕日差した丘その順光線上の景色だけがスポットライトのように照らされている
ススキが照らされ白い輝きをハンカチを振るように、太陽に愛しいあなたと呼びかけるように、
手を名一杯激しく振っている
常用樹の葉に夕日の光がキラララと反射して
ザザザァと鳴る子さざ波が大きく宙に舞う
わたしは丘にある、古木の平なベンチに立ち
夕日を、あなたをみつめている
ふと後ろを振り返ると白い欅の木に自分の影が映る
わたしも欅の梢のように両手を広げて黒き影を白き幹に重ねる
皆があなたを愛おしむこの時に
わたしも、あなたに照らされ手を振り
頭を垂れて感謝をつげよう
いつなんどきも
幼き頃から、さみしい心も、満ちたりた心も
破れた心も、共に悲しみ、喜び、抱かれてきたことを
わたしもあなたになにかを返せるだろうか
ただ みつめ返すだけのこの命を
あなたに還すとき
歩き続け、愚かながらも水の如きに流れて少しでも軽く澄んでいられたらいい
あなたに掬われながら
曇天に強い風が吹き荒れていた中で
夕日が真っ直ぐに差していたあの光の手が
暗雲の闇を押し開けたように
今日の青空はとても澄んでいた