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鋼鉄の進撃  作者: 時雨
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プロローグ

帝国歴597年4月、帝国は国境付近の王国軍の活性化を理由に宣戦布告を発表した。発表してから数時間もたたないうちに帝国は王国国境内へ攻撃を開始した。

「こちら、ブルーバード1。偵察目標、国境上空に到達。多数の王国軍の活性化を確認。砲兵隊の効力射を要請する。」


 一機の観測機が、司令部へ冷静な声で報告を入れた。しばらく、観測機が目標上空を旋回しながら俯瞰していると、司令部からの返答があった。


「こちら、HQ。了解。これより砲兵隊による試射を行う。逐次報告せよ。」


 司令部からの返答後、直ぐに自国側から一発の砲弾が飛んできた。その砲弾は、目標より少し先に着弾したため、眼下の敵部隊は慌てふためいていた。


「HQ。こちら、ブルーバード1。砲兵隊による試射を確認。修正。右20m、奥150m。」


 観測機は、直ぐに司令部へ報告をいれる。報告を入れてから一分後、敵もやっと気づいたのか、敵の対空砲が活性化し出した。灰色の雲に覆われていた空は、辺り一面黒色に染まった。観測機の近くで敵の砲弾が炸裂し、機体が大きく揺れた。「修正射はまだか。」と、撃墜されないよう回避行動を行っていると、やっと、修正射が飛んできた。その修正射は、見事に敵軍のど真ん中に着弾し、敵の物資が集積されている物資を吹き飛ばした。


「HQ。こちらブルーバード1。修正射を確認。敵に命中、効力射に移行されたし。」


 機長も助手も砲兵隊の修正射が敵に命中したのを見て、胸をなでおろした。


「こちらHQ、了解。ブルーバード、帰投せよ。これより、砲兵隊による効力射を開始する。」


 同時刻。司令部から修正座標を受け取った砲兵隊では、次射に向けて慌ただしく動いていた。指令を受けた砲兵隊の士官は装填準備が完了するのを待っていると、装填手が手を滑らせて、火薬を落とす。


「何をしている。早く装填しろ。」


 装填手は急いで拾いなおし、砲弾の入った砲身へと押し込んだ。


「射撃よーい。撃て!」


 轟音と共に、次々と砲弾が敵陣地へ向けて放たれた。観測機が帰投する間際、遠くでいくつもの爆発が連続して起きているのが見えた。

 轟音を立てながら、戦車が歩兵の前を前進する。各部隊が越境しようとしている。砲撃が止み、濛々とした土煙がいくらか晴れてきた頃、車内に無線が響いた。「これより進軍を開始する。敵の抵抗は弱まっているはずだ。各車、前へ!」戦車のエンジン音が唸りを上げ、履帯が地面を噛む感触が伝わってきた。私はキューポラから身を乗り出し、前方の様子をうかがった。前方には、砲兵隊の砲撃によって大きく崩れた敵の塹壕線が見えた。土嚢は吹き飛び、鉄条網はねじ曲がっている。戦車の後ろにいた歩兵小隊が敵の塹壕に入り込み、残敵相当を行っていた。


「まったく、砲兵隊ときたら、いつもやりすぎなんだ。これじゃあ、俺たちの仕事がなくなっちまうじゃないか。」


 敵の塹壕を抜け、敵が使っていた列車の駅まで到達した。駅には、各座した列車や砲撃により、損傷したレール、積み下ろした物資などが散乱したままの状態で放置されていた。私はキューポラから身を乗り出し、周囲を見渡した。広大な操車場には、無数の貨車や客車が放置され、まるで巨大な墓場のようだった。司令部からの命令は、橋頭保を確保しろとの命令のため、戦車について来ていた歩兵小隊に列車の駅の捜索を命じた。


 歩兵たちは散開し、駅舎や貨車の中を慎重に調べている。しばらくすると、建物から銃声が2発続けて鳴り、辺りに緊張が走る。私も、備え付けの機関銃を建物の方に向け、待機していると、建物から歩兵が民間人を拘束して広場へと連れて出てきた。薄汚れた服を着た老人と、怯えた様子の若い女性、そして幼い子供が3人。女性は子供を庇うように抱きしめている。「どういう状況だ?」私は警備している兵士に尋ねた。


「どうやら、駅舎の地下室に隠れていました。内部には、王国兵が二名隠れていましたが、射殺。民間人の持ち物を検査したところ武器は持っていません。」


「分かった。警戒を怠るな。」


 私は他の兵士に無線で連絡を取った。


「こちらタイガー1。広場に民間人を確認。至急、後方部隊に連絡、避難の手配を要請する。」


「了解。」


無線から返事が返ってきた。こんなところに、なぜ民間人がいる。なぜ、兵士たちと逃げなかった。周囲を見渡すと、駅の時計台は砲撃で半分崩れ落ちている。時計の針は止まったままだ。まるで時間が止まってしまったかのようだ。

私は副官に声をかけた。


「どう思う?ここで待つべきか、進むべきか。」


副官は少し考えてから答えた。


「後続部隊を待つのが安全策だとは思いますが…敵の動向が不明な以上、いつまでもここに留まるのは危険かもしれません。」


「そうだな…」


私は呟いた。この決断が、部下たちの命運を左右するかもしれない。責任の重さが、ずっしりと肩にのしかかった。迷っていると、副官から報告がきた。


「司令部から新たな命令です。この先にある都市を攻略せよ。とのこと。」


「なに?詳細は。」


 私は、副官に命令の詳細を聞いた。遠くで微かに砲撃音が聞こえる。風に乗って、焦げ臭い匂いも漂ってきた。


「現在越境した、57歩兵連隊が攻略している模様ですが、敵の反撃により難航しているらしいです。」


「敵戦車の情報は入っているか?」


「いえ、未だそのような情報は入ってきておりません。」


「了解した。司令部に命令を受領したことを伝えろ。」


副官は直ちに司令部と無線を使いやり取りを始めた。私は、広場にいる民間人たちに目をやった。女性は子供たちを抱きしめたまま、不安そうに周囲を見回している。子供たちは、泣き疲れたのか、静かに母親の胸に顔を埋めている。老人は、遠くの砲撃音に耳を澄ませ、何かを祈るように目を閉じている。彼らをこのままにしておくわけにはいかない。


「おい、そこの兵士。小隊長に伝えろ。この人たちを駅舎の地下室に案内し、後方部隊が来るまで、そこで待機しろ。水と食料も少し分けてやってくれ。」


私は、副官の無線連絡が終わるのを待ちながら、心の中で呟いた。57連隊が苦戦しているのか・・・敵は予想以上に手強いかもしれない。敵の配置は…ハイゼル市の手前、街道沿いの丘陵地に集中している可能性が高い。敵戦車の情報がないのは気がかりだが、敵の抵抗が激しいということは、対戦車兵器も配備されている可能性が高い。迂回ルートを探す余裕はない。正面から突破するしかないか・・・


「副官、敵の増援部隊に関する情報は?」


「今のところ、大規模な増援の情報はありません。しかし、小規模な部隊が各地から集結し、ハイゼル市周辺に展開しているという情報が入ってきています。」


「敵もこの数時間で立て直すのがはやいな。相手もなかなかやるな・・・」


私は、外で捜索している小隊にここで後続の部隊との合流を命令し、合流後直ちにハイゼル市へ向かう準備をするように命じた。


最後までご視聴いただきありがとうございました。本当に頭をよぎったものを書いているのですが、今回はなんだか鮮明に浮かんだので書いてみました。まだまだ書き始めですが、温かく見守ってください。どうぞよろしく。

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