18.今日のおやつ
外で遊んでいたが、家の中に戻ってきた。
家の中に戻ってくれば、おやつの時間らしいとのことなので
休憩も兼ねておやつを食べることになった。
「おやつなにかな〜」
「ドーナツとかどうかな。最近食べてないからありそうじゃない?」
「いや〜。ゼリーじゃない?」
ノアとコリンが今日のおやつをあてようとしているわね。
おやつかぁ。
「マリーはおやつ食べるの?」
「う〜ん。ちょっとかなぁ」
「ちょっと食べるってこと?」
「そ~」
「姫様って全然食べなくない?ピザのときも全然食べてなかったしー。食べるの嫌いなの?」
「別に嫌いってほどじゃあ。
ん〜。食べるのは好きだけど、食べること自体はあんまりかなぁ」
「それって同じことじゃないの?」
コリンの言ったことを聞き、イブも隣で首を傾げていた。
「あ〜。えっとぉー。
食べて味を感じるのは好きだけど、食べること自体はそこまで好きじゃないというか〜」
「「??」」
「食べれば美味しいけれど、食べることを趣味にしたりするほど好きじゃないという感じですか?姫様」
「まぁ、そんな感じ?栄養摂ってれば、お腹が空くことってないからさ〜。
そんなになにか食べたーいってならないのよね~」
「でも、マリーりんご食べたいって言ってなかった?」
「あ〜。あれは義務みたいなところあるから」
「ぎむ?」
「食事摂ってた方が魔法の調子とか身体の調子って上がるのよね〜。
だから、昔魔王とかがいた時代には一日一回は食事をして、万全の状態で戦えるようにしてたんだよね~。
だからその名残かなぁー。妖精姫が力発揮できないとかまずいし」
「妖精様は皆様そんな感じなんですか?」
「いやぁ〜。妖精によるね。上位精霊はあの頃のこと知ってる子が多いからそういう感じの子も多いかもしれないけれど、ちっちゃい子はあんまりそういう考えはないと思うよ。
最近は平和だしー。あんまり食べない子もいるし~。でも趣味で食べる子も多いかなぁ〜。
私達が一日に一回は食べるから、一緒に食べてる子は多いかな。
食べる方が力でるしね〜」
「では食べる方の方が多いということですか?」
「私の家はそうかな~。他はわかんないなぁー」
「なるほど」
ノアはほんとに話聞くのが好きねぇ。知識欲が高いのねぇー。
「じゃあマリー。毎日楽しくないのに食べてるの?」
「いやー、食べれば美味しいなぁってなるよ。
一日一回食べるのはもう当たり前だから、別にそんなに辛くないし」
「ちょっとはつらい?」
辛くないよと返そうと思ったけれど、そんなに辛くないと口から出たから少しは辛いと思ってるのかしら私。う〜ん。
「心の底から楽しいというわけじゃないけれど、辛くわないわね。
多少はやらなきゃいけないことっていう気持ちはあるけれど、食べれば美味しいしね〜。
ただそれ以上食べることは気が進まないってだけでね」
「そうなんだ。マリーがつらくないならよかった!」
「ありがとう」
優しい。
優しいなぁ。いつも私の気持ち考えてくれる。
私のことを自分とは違う存在じゃなくて、ちゃんと見てくれるところ好きだなぁ。
イブの頭をなでなでしていたら、嬉しそうに笑ってこっちを見ていた。
こういう私が触ると嬉しそうにするところかわいくて好きだなぁ。
かわいいイブを見ているとトントンと扉が叩かれ、
「お菓子をお持ち致しました」
という声が聞こえた。
「入っていいよ」
「どうぞ~」
「どうぞ」
みんなが口々に返事をしたら、メイドさんが中に入ってきてお菓子を並べてくれた。
「わぁードーナツだぁー。負けたー」
とちょっと足を伸ばすコリン、
「そろそろかなって思ってたんだよね」
とドーナツを当ててしたり顔で笑うノア、
「どーなつ」
どーなつの語尾が少し高くなっているイーブ、
ドーナツかぁーと思いながら、メイドさんの並べていくドーナツを見ているマリアーナ、
今日もこのお屋敷は楽しいなと思いながら、ドーナツを並べるメイドがこの部屋にはいた。
私はノアとコリンの声を聞きながら、ドーナツだったのかぁーと
私たちの目の前に並んでいく色とりどりのドーナツを見ていた。
ん?茶色のなにもついてないドーナツがある。これもドーナツなのかなぁ?
「これもドーナツ?」
「そうだよ」
「へ〜」
「イーブは甘いのよりこういう素朴な方がよく食べるんですよ」
「素朴、、、どんな味なの?」
「それは食べてからのお楽しみですよ」
「! そうだね」
みんなそれぞれ好きなドーナツを選び食べていたので、私も真似して素朴だと言われていたドーナツを選びお皿にもそってもらった。
ナイフで切って、フォークでそれを刺しぱくっと一口噛んだ。
「! おいしい」
上から甘いベールがかかったようなドーナツも美味しいけれど、こっちの方が好きかもしれない。
確かに素朴な味。おいしい。
「イブ〜。これ私好きかも〜美味しい!」
「じゃあ一緒だね。ぼくもこれ、、好き」
「わぁ!一緒!」
おいしい!と二人が盛り上がっているのをノアは嬉しそうに眺めており、コリンは驚いた顔をしながらドーナツを食べていた。
「こういう味のお菓子もあるんだね~。甘いのが多いのかと思ってた~」
「お茶会とかになればもう少し見た目が飾られたものや、味も工夫されたものが多いと思いますが
このような味もお菓子にはあるのですよ」
「へぇ〜。イブはこういう味が好きなの?」
「・・・・・好きだとおもう」
「おもう?」
「 イーブはなにが好きとか今まで言わなかったので、今好きなことに気づいたんだと思いますよ」
「あ〜」
たしかに、思い返してみるとあれが好きだったんだなぁって気づくときあるし〜それのことかなぁ。
小さいときって全部初めてだからなぁ〜。なるほど。
「好きって気づけてよかったね」
「うん」
「ね〜。あれって姫様とお揃いだから、好きって言ってたりしない?」
「いや、イーブは好きじゃないのに好きとは言わないだろうから、お揃いの気持ちもあるかもしれないけれどきっと好きだって気持ちもちゃんとあると思うよ」
「ん〜。たしかに」
そうして兄たちのひそひそ話は終わった。
素朴な味のドーナツを食べていると甘そうな煌びやかなドーナツがふと目につき、食べたくなってしまった。
でも、どれがどんな味かわかんないなぁー。まぁ、どれでもおいしいか。
あ、みんなにおすすめ聞いてみようかなぁ。
「他のドーナツも食べてみたいんだけど、おすすめとかある?」
「僕はこのオレンジが乗ってるやつだね!」
「私は中にクリームが入っているのがおすすめです」
「ぼくはこれ」
イブが指でさしていたのはチョコレートのかかったドーナツだった。
オレンジはどんな味が気になるし、クリームも捨てがたい。
イブのおすすめのチョコレートもいいな〜。
どうしよう。全員におすすめを聞いたから、候補が三つもある。
でも、そんなに食べれないし、、、
というかよく考えると、一つ食べれるかも怪しい、、
そもそも一つ食べれるかも怪しいのにどうするつもりだったのかしら私。
「あ〜。やっぱりそんなに入らなそうだし、またの機会にしようかな」
全員が喜べる決断ができる気がしなくて、逃げてしまった。
そんなもの存在しないのに。まだ私はみんなの姫様からは変われないらしい。
「そうですか。姫様がそう仰るなら」
少し残念そうにそう言ったノアを見たら、心が痛かった。
「じゃあ、食べれない分はぼくが食べる」
「えっ?」
「そしたらマリー食べられるでしょ!」
たしかに誰かに頼んだり、持ち帰ったりとか色々と手はあった。
手はあったのだった。いつも一人で解決する癖がついていたのかもしれない。
そういえば
『案外人に頼むってものは難しいらしい』
『そうかしら』
『・・・私にはそうなんだ』
―――
『あの人いつになったら気づいてくれるのかしらね。一人で解決することだけが素晴らしいわけじゃないのに』
『そう言ってみたら?』
『嫌よ〜。どうせ私が分かっていないみたいなこと言われるもの。
はぁ、いいのよ姫様。いつか気づいて後悔してくれればいいのよ。あの人なんて。』
『難しいものね愛って』
愛し方も伝え方も思い方もみんな違って。
『そうよ〜。だって、想いあっていたって結末はいつもハッピーエンドとは限らないでしょ?』
後悔の方が心に残るなんて。
―――
恥ずかしい。微塵も理解せずに返答していたなんて。
頼ることってこんなに難しいのね。
自分を頼ってと声に出すのはなんて愛なのかしらね。
大切にしなくてはそう伝えてくれる存在を。受け入れなれば私は大切にされることを。
結末はいつもハッピーエンドではないのだから。
「ありがとう。じゃあ、一緒に食べてくれる?」
「うん!」
「イーブ無理だったら私も手伝うから遠慮せず言ってね」
「マリーのは兄様達でもあげない!」
「奪い取ってやる〜」
「やめて!!」
「イーブをからかうのはやめなさい、、コリン」
「は〜い」
ふふっ。楽しいわね。いつまでもこうしていたい。
楽しい時はまるで過ぎ去る風のように一瞬。ずっとみんなでこうしていられたらいいのになぁ。
ずっとずっと。
終わりがあるから今があって、終わりがあるから美しい。
命も季節も世界も、私も、移ろい変わっていく。
この子たちだけ特別に出来ないし、してはいけない。
今まで会った子たちもかわりなく大切だった。
あー。でも、終わりが。いつか来る終わりが寂しい。
いつも寂しいわね。
でも、今は。今を大切にしよう。楽しい今を。
「マリー!どれから食べる?」
「! ん〜、それはもちろんイブのおすすめチョコレートのやつ!」
「えぇ〜。オレンジは〜」
「まぁまぁ」
チョコレートのドーナツを一口食べるとこれもまた美味しかった。
ドーナツはさっぱりしているがチョコレートのこくを感じられて美味しかった。
残りは半分ほどとなりこれなら食べきれるかな?っと思っていたけれど、じっと見つめるイブにもあげることにした。
どうやら私の食べた残りが欲しいらしい。すごくかわいい。
「食べる?」
「たべる!」
まるで世界で一番美味しいものでも食べているような輝いた瞳に幸せそうな顔はとても愛おしかった。
一口一口食べさせる行為はなんだか、胸がくすぐったくなる可愛さと満足感があった。
チョコレートのかかったドーナツは最後の一口となり、また私が与えたものを食べるのが見たくて
再びイブに差し出した。
すると、少しむっとした顔で食べずにいるのでどうしたのかと思ったら、どうやらお腹がいっぱいらしい。
「んー。最後のはやっぱり私がもらうね!」
マリーの食べていたドーナツをぼくが食べきりたかった。
そんなことを考えていたら、
マリーはさっきまでぼくの口に運ばれていたフォークでドーナツをぱくっと食べた。
「やっぱり美味しいね〜このドーナツ」
「うん」
そんなことを言って、目を細めて微笑むマリーにぼくは胸がどきどきした。
「でも、イブと食べてから食べた方が美味しかった。ふしぎ」
もしかしてイブと食べてるから、今日のドーナツは美味しいと思ったのかしら。
好きな人と食べる方が美味しいって言うものね〜。
でも、味がしなかったって言う人もいるわよね~。
やっぱりふしぎ。
ああ〜。
「愛してるよイブ」
「・・・うん」
惚けた顔でこちらを見つめそう答えたイブはすごく愛しかった。
マリアーナが食事をあまり摂らないのはお腹が空いていないときは食事はあまり摂らないタイプだからです。
人間だと毎日おやつとか間食とか食べないタイプですね〜。
今まであまり好みのお菓子とかを食べる機会がなかったようですが、マリアーナは素朴な味が好きみたいですね。
12.13話のピザの話を修正しました。
よろしくお願いします。




