15.ずっと触れていたい
「イブ。キスしたい」
私はしたくてたまらなかったことを二人きりになったので口に出した。
「いいよ」
私はイブに近づき、イブの頬に手をやった。
イブはキスしようと近づく私を目を開けて見ていた。
そして、唇と唇をくっつけるだけの優しいキスをした。
前にしたより長くイブの唇に私の唇をあてた。
「長くてどう息したらいいのかわかんなくて驚いちゃった」
「鼻でしたらいいのよ」
「そっか」
かわいくて触って、あなたを感じるだけで幸せになるのに。
離れると寂しくて仕方なくなる。
ずっと触れることが出来ればいいのに。
「どうしたの?マリー」
なんかいつも、マリー?って聞かせちゃってるわね。
「イブと離れると寂しいなって」
「じゃあずっとくっついてればいいじゃん」
イブはそう言いながら、私にこてんと身体を預けてきた。
「かわいい。好き」
「かわいくないときらい?」
「かわいくなくても愛してるわよ。イブがイブであるなら、どうなっても好きよ。
だからイブはイブらしくしていいのよ」
「わかった。マリーって優しいよね」
「本気で言ってる?」
あの話をしたのに?
「うん。だってすんごくぼくのこと見てくれるし、触り方もぼくを見る目も優しいもん」
「でも、あなたを傷つけるかもしれないのに?」
「マリーは傷つけたくないから、そう言ったんでしょ。
それにマリーはぼくを傷つけたことないもん」
「愛してる。イブ」
「ぼくもマリーのこと愛してる」
「そっか〜」
「さっきの話聞いてもいい?」
「あぁ、そういえばそんな話してたわね。別に語るほどのことじゃないんだけど、、」
「でも、マリーのこと聞きたい」
「そう?」
「うん」
「そうねぇ。・・・ダイヤモンドって綺麗じゃない。
綺麗だからこそ自分とは違うような。かけ離れているような気がして。
手の届かないものな気がして、あんまり好きじゃなかったの」
「マリーも綺麗だけど、、」
「内面も?」
「内面?」
「性格とかのことよ」
「どんなマリーだって綺麗だよ。ぼくが見たことあるマリーはいつも全部綺麗だよ」
笑ってるマリーも泣いてるマリーも寂しそうなマリー嬉しそうなマリーも全部全部きれいだった。
「そう」
イブがそう言うなら綺麗なのかもしれない。
イブがそう言うと、自分の汚いと醜いと思ってた部分の自分も受け入れられる気がした。
「そっか〜。私って綺麗だったんだね」
もしかしてみんなはほんとに私をみて綺麗って言っていたのかもしれない。
外面しか見えてないからそういうんだと思っていたけれど、
もしかしたら私の内面も綺麗だと言っていたのかもしれない。
盲目的に私を見ているのかと思っていたけれど、自分の目で見て綺麗だと言っていたのかもしれない
とそう思った。
「そうだよ。マリーは綺麗だよ」
「うん」
「ぼくね、婚約指輪楽しみなんだ。マリーとお揃いだから」
「たしかに。お揃いか〜。嬉しいね。それで、どんな見た目にしたい?」
「婚約指輪のこと?」
「そう」
「う〜ん。あんまり指輪とか詳しくないからわかんないけど、マリーがつけてるネックレスとかピアスみたいなふんいきのがいいかなぁ?」
私は丸いエメラルドのピアスに雫の形のエメラルドのネックレスをしていた。
どちらもシンプルなデザインで小さいものだった。
「こういう感じが好きなの?
私、あんまり大きい宝石より小さい宝石の方が好きなのよね。
大きいとずっと着けてると重たいし、飛ぶときに邪魔になるのよ〜」
「へぇー。そうなんだ」
「でも、婚約指輪ってパーティーとかで着けるんでしょ?
宝石は大きい方がいいのかもしれないわね」
「ぼくはいつも着けたいけど」
「まぁ!かわいいこと言うわね」
かわいいと言った後にイブはこっとした顔は最高にかわいかった。
「私も普段からつけるわよ。
でも普段使いするとなると、小さめになるわよね〜。
でも、小さいのってどうなのかしら。あなたって公爵家じゃない?」
見た目にお金を賭けることも貴族としては大切なことであるし〜。
「だめなの?」
「う〜ん。私達は魔力で強さが分かるけれど、あなた達は見た目で強さを表したりするでしょ?
大きな宝石や生地の多い服。洗練された肌や髪とか。
そうなると小さな宝石はあんまりなのかな〜とか思ってね」
「う〜ん。じゃあ、どうするの?」
「コーデリアに聞いてみましょう!」
「・・・わかった」
もうちょっとマリーと二人が良かったけど、指輪の話も大事だもんね、、、
まだ帰んないからとか言ってあげたいけど、そろそろ王様に会いにいった方がいい時間帯なのよね。
ん〜〜。
「だいじょ〜ぶ。明日も来るから!」
「! うん!」
そして、コーデリアに話を聞きに来た。
「コーデリア〜」
イブと手を繋いで歩こうとしたら背の高さ的に難しいかったため、抱っこしてここまできた。
なんと重さを魔法で操作しているため、イブを長時間抱っこできるの。
これは素晴らしいことだわ。またやりましょう!
「あら、なんでしょう?」
「婚約指輪ってさ〜」
婚約指輪の話を説明した。
「あ〜。なるほど。本当に普段から使われるなら小さくても大丈夫かと思いますよ。
婚約者を大事にしていることが伝わりますからね。
ただ費用を小さくしたいなどということが理由ですとあまりよろしくはないですが、愛のあることなので大丈夫ですよ。もし、大きさについて聞かれたら、普段から身につけていたくて、、って言っておけば大丈夫ですよ」
「おぉ〜。さすが、コーデリアね」
「私も貴族として三十年生きていますからね。
イーブ。ちゃんと普段から着けるかしら?」
「うん!絶対着ける!」
私の腕の中にいるイブがそう即答したのがたまらなく私には嬉しかった。
「わかったわ。イーブもこう言ってますし、わたくしは普段から着けれるサイズのもので大丈夫だと思いますよ」
「まぁ〜。では、そうしましょ!」
「婚約指輪はですね。わたくしがよくお世話になっている宝石のお店にお願いしようかと思っておりましてね。普段使いしやすいデザインのものが良いと伝えておきますね。
婚約がきまったら、作りにいきましょう」
「あー、あとシンプルな感じがいいなって二人で言っていたの。そういう感じもできる?」
「そうですね~。装飾を少なめにして、品のある感じに致しましょうか」
「わぁ!イブもそういう感じで大丈夫?」
「うん!」
「良かったわ」
「あの、姫様。別に誰に話そうとかではないのですが、姫様の昔の話。
言わない方がいいですよね?」
「あ〜。まぁ、言いふらされたら良い気はしないかな。
でも、コーデリアはそんなことしないって知ってるもの。
それと、命に関わるようななにかがあれば別に言っていいからね」
「そんなことは致しませんし、そんなことにもなりませんよ。みな姫様を愛していますからね」
「そうかなぁ〜。まぁ、そうか」
私は今まで会った人々のことを思い出した。
みんな私を愛してくれていたからなぁー。
思い出すのもそこまでし、そろそろのお話をすることにした。
「私、婚約指輪の件も解決したし、イブに貰ったくまちゃん持ってそろそろ帰ろうかと思うんだけど、、、」
ちらっとイブを見た。
思った通り悲しそうな顔をしていた。
「帰るの?」
「うん。降ろしてもいい?」
「・・・・うん」
「くまちゃんとってくるね!」
マリーは元気そうに部屋から出て行った。
「寂しいけど、また明日会えるから、、ね。イーブ」
「うん。でも、明日は遅いかもって」
「う〜ん。でも、会いに来てくれるってことじゃない」
「うん」
どうしようかしら。どう言ったら元気になるか分からないわ。
というか何言ってもだめなやつよね?これ。う〜ん。
「ただいま!イブ。くまちゃんほんとうにありがとう。そういえばくまちゃん名前とかあるの?」
「なまえ・・・・ない」
「ないか〜。じゃあ、イブってつけて〜」
「それはだめ!!」
「イブはぼくだけ!くまさんには別の名前にして。ぼくに逢いたいときはぼくに逢いに来て」
ぷくっと怒るのではなくじっと私を見つめるイブ。
「たしかに。それはそうね。ごめんね」
「うん。マリーが悪いから」
「ほんとうにごめん」
「キスしてくれたら許してあげる」
「どこに?」
「おくち!」
「わかった」
ふと私はコーデリアを見たら、コーデリアと目が合った。
コーデリアはふっと笑って、後ろを向いてくれた。
ふふっ。気が利くこと。
私は屈んでイブの顔に手を触れた。
イブっていつもキスするとき、目を開けているのよね。そういうところも愛してる。
「イブってキスするとき、いっつも目を開けてるよね」
「だって、マリーの顔見たいもん」
そうぼくが言うとマリーは緩く微笑んでいた。
「そうね。私もイブの顔みたいわ」
ちゅっとキスをした。
「帰るの?」
「ふふっ。帰るわよ。また、明日来るから。できるだけ、早く来るから待っててね」
「早いってどれくらい?」
「ん〜。早くて今日くらい?」
「んんー。わかった!」
「ふふっ。じゃあね。イブ。コーデリア。また明日。
みんなにも伝えてね。
あっ、明日は私のお昼ご飯なくていいわよ。ご飯ならちゃんと食べてるから」
「かしこまりました。姫様。また明日」
「また明日ね!マリー!!」
「じゃあね」
マリーはそう言って、窓から出ていってしまった。
なんか私も寂しいわね。姫様がいないとなんか空間がぽっかりないような。
なんか今日はやけに色々あったからかもしれないわね。
「寂しいね、母様。結婚したら、ずっと一緒にいられるのかなぁ?」
私も昔はこんなこと考えていたわね。
結婚しても、なんだかんだ一緒にいられる時間が思っていたより少ないときもあったけれど。
ノエルはできるだけ時間つくってくれたりしてね。
「そうね。一緒にいられる時間は増えるんじゃないかしら」
「ずっとは?」
「ずっとはどうかしらね~。私は姫様の生活がどんな感じか知らないからなんともね。
それに、私とノエルだってずっと一緒に居ないでしょ?」
「うん」
「でも、姫様ならずっと一緒にいられるようにしてくれるかもしれないわね。
今度お願いしてみたら?」
「うん!」
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私はストラウド家から出て王城に向かっていた。
お城とかなかなか行かないから、お城のみんなを驚かせちゃうかしら?
でも、早く終わらせて帰らないとステイシーに怒られちゃうわ〜。
そして、お城の近くにまで来た。
う〜ん。ここから声かければいいかなぁ?
直接王様のお部屋に行って話しかける?
ん〜。やっぱりここからの方が良さそうね!
私は声を魔法で大きくなるようにして、声を出した。
「お城のみなさ〜ん。こんにちは〜。妖精姫のマリアーナで〜す。
王様に話があって来ました〜。入ってもいいですか〜?」
外に出ている子達が慌てたように動いているのをしばらくして見ていたら、
「陛下から言伝を預かりました。入ってもよいとのことです。妖精姫様!」
と下から聞こえてきたので、私は少し下に降りた。
まだ地面には着かず、飛んでいたが近づくと
「妖精姫様」とみんなが跪いて、挨拶をしてくれた。
「わぁ〜。ありがとう〜」
さすがお城の子達ね〜。統制が取れていること。
「妖精姫様。ここからはわたくしが案内致します。こちらです」
一人の騎士が案内を申し出てくれた。
「分かったわ。ありがとう」
私は飛びながら着いて行った。
ほぉ〜。
いやぁ〜、お城はいつ来ても綺麗ね〜。
そして、お城を眺めながらしばらく飛んで着いて行った。
「こちらにライル王がおられます」
コンコンと騎士が扉を叩いた。
中から王様の側近かなぁ?側近の人が私達を確認して、中に入れてくれた。
「ライル、久しぶりね!」
「あぁ、久しぶりですねぇ。姫様。先触れもなく来られて、驚きましたよ」
「それはごめん。急用があって」
「急用とはなんでしょうか」
ライルは真剣な顔をしていた。
「あ〜。別にそういう急用じゃないわよ。私の個人的な急用よ」
「そうですか。なにかあったのかと心配してしまいました」
「それでね、驚かないで聞いてほしいんだけど!」
「はい」
「私、婚約したい子がいるの。マーア国の貴族なんだけど、それを了承して欲しいの!」
「ん〜。なるほど。それはどちらの方でしょうか」
「あれ?思ったより驚かないわね。まぁ、いいわ。
ストラウド家の三男のイーブ・ストラウドよ」
「あぁ、なるほど。ストラウド家なら姫様と会う機会もありますからねぇ」
「全然驚かなくて面白くないわね」
「わたくしではいつまで経っても姫様を満足させることはできないようですね」
清々しい顔しちゃって〜。
「それより、婚約!認めてくれるの?」
「姫様、相手方は了承されているのですか?」
「もちろんよ!私がそんなことすると思う?」
「いいえ。念の為お聞き致しました」
「これがね〜、婚約届けで。こっちが証人の証拠よ」
私は空間魔法で取りだしたそれを自信満々な顔で机に乗せた。
「おぉ〜。なるほど。これは正真正銘の婚約届けですね。
そして、こちらの紙はなんでしょうか」
「それは、婚約の証人の私の大切な妖精に書いてもらったものよ。
念の為、妖精の証明に書いたものよ。魔力を見たら、分かるはずよ!」
「なるほど。婚約のことですが、ストラウド公爵家に確認をとってからでもよろしいでしょうか?」
「もちろん!あと、証人もそれで登録してよね!」
「かしこまりました」
「あと!私の婚約者だって、貴族達に伝えて私のものに手を出さないようにしてほしいのよライル」
マリアーナは含みのある笑みを王様に向けていた。
「それは姫様の大切な方に変なことをしないようにと、私自ら言ってほしいと?」
「そうよ。王様からそういったものが出れば、ことの重大さに誰もが気づくはずよ。
それに万が一、イブになにかあったら、困るのはあなたではなくって?ライル」
「分かっておりますよ、姫様。貴族達にはくれぐれも変なことは考えないようにさせます」
「本当に分かってる?
あの子の魔力量や魔法の才能、私との伝手、あの子はみんなが欲しがるお高い宝石よりも貴重かもしれないわよ?
私はあの子に加護を三つあげるつもりよ。しっかり守ってね、ライル」
「かしこまりました。嫌なことなど考えさせませんよ、姫様」
「嫌なことって〜?」
このおふたりの会話怖いなぁ。陛下は相手が妖精姫様だともっと自覚して欲しいし、姫様もそれに乗っからないで欲しい。怖いなぁ。部屋にいた側近はそう考えながら顔は真顔を貫いていた。
「あと、まだお願いがあって〜」
「まだ、あるのですか?」
「うん。イブが学園の寮に入るときに、私も寮に入れてほしいの!」
「それは、、フリールーブ学園の学園長に聞かないとなんとも言えませんが、お願いしておきますよ。私から」
「わぁ!ありがとう〜」
「して、姫様。寮まで着いて行くということは学園内で婚約者殿と共にいるということですよね?」
「うん」
「それは何故ですか?」
ん?なんか言いたげな顔だけど、何が言いたいんだろう?
「それは共に」
「それは婚約者殿を守る為ですよね?姫様?」
「? まぁ、それもあるけれど」
「つまり、婚約者殿を朝から晩まで、一日中守らなければならない」
「?」
「つまりですよ、姫様。同室にしてもらった方がよろしいのではないかと」
「!! どう!しつ!」
「ねぇ、寮って何人部屋なの?」
盛り上がった雰囲気を一旦止めて、気になったことを聞いた。
「・・・・一人部屋になります」
冷めた顔でライルは言った。
「つまり!一人部屋に二人ってこと!!」
また、さっきの雰囲気に戻した。
「そうです、姫様。それに部屋が狭い方がなにかと守りやすいでしょう!
・・まぁ、一人部屋しかないのですがね」
「でも、そんなことできるの?」
「できるできないではありません。それが必要なのだと訴えるのですよ、姫様」
「・・・・まぁ、感謝するわ。そんなこと浮かばなかったもの」
「まぁ、遊びはここまでにして。部屋が同じだと守りやすいというのは本音ですよ。
姫様の大切な方ですからね。なにかあってからでは遅いですから。
姫様がお傍にいれば安心でしょう」
「まぁ、それはそうね」
「では、婚約者の件と寮の件はこのわたくしライル・マーアが承りました。
お任せ下さい、妖精姫様。大船に乗ったつもりになっていただいても構いませんよ」
「えぇ。大船に乗ったつもりになってあげるから、頼んだわよ」
「一つ確認ですが、姫様の選ばれた方は素行が悪いなどということないでしょうね?」
「しっつれいね!
言い方ってものがあるでしょう、、、 、
ふぅ。素行は問題ないと思うわよ。
ていうかまだ五歳だし、素行とかいうのはまだよ。
ていうか、あの子は素直でいい子よ。次変なこと言ったら許さないわよ」
マリアーナは口を一本に結び、目を少し大きく開きライルを見ていた。
「えぇ、心得ております。ですが、一応王家が守る者として見ておきたいなと思いましてね」
「それはごもっともな意見だけど、言い方がね〜。そういうところ好きじゃないわね〜」
「知っておりますよ」
今度はマリアーナが冷めた目でライルを見ていた。
「まぁ、そういうことなら一回会ってみればいいんじゃない?」
「よろしいのですか?姫様の大切な方と会っても」
「なによ、、会うぐらいいいわよ。もちろん、私も行くけれど」
「では、ストラウド公爵家にそう伝えましょうか。
そうそうストラウド家のイーブ卿とはコンラッドが同い年なのですよ」
「あ〜。そうなの」
コンラッド、マーア国の第二王子。
たしかに思い返してみると、同じくらいの年かも、、
「アーヴィングとコンラッド、オフィーリアも一緒でよよろしいでしょうか。
わたくしからお触れを出すのですから、王家とも仲良くしていた方がよろしいでしょう?」
「そうね」
「ストラウド公爵家に連絡を取れば姫様にも伝わりますか?
それとも、姫様にご連絡した方がよろしいでしょうか」
「ストラウド家でいいわよ。毎日逢いに行くって約束しているから」
「姫様をそこまで射止めるとは。どのような方かより気になってきましたね」
私はライルの座っている椅子の前の机に両手を置き、ライルに顔を近づけた。
「気になるのはいいけれど、イブは私のだから」
マリアーナは瞼を上にあげてライルを見つめていた。
「そんな怖い顔されなくても、姫様のお気に入りを取ったりなど致しません」
優雅な微笑みを返したライル。
「ふん。まぁ、それならいいけれど」
「・・・あなた、そんなんじゃいつか誰かに後ろから刺されるってやつになるわよ」
「そうならないよう相手は選んでおりますので」
「私を選ぶとは随分と肝が据わっているようね」
「お褒めいただき光栄にございます」
「もう。じゃあ、頼んだわよ。私、帰るから」
「また、窓から帰られるのですか?」
「そうよ。なにか?」
「いいえ。たまには扉から帰るところも見てみたいだけですよ」
「そう。じゃあ、見れるといいわね。
じゃ!」
そう言ってマリアーナは窓から飛んで行った。
「あの、妖精姫様にあのような態度で大丈夫なのですか?」
「えっ?大丈夫だよ〜。姫様は優しいし。昔、素で話して欲しいって言ってきたのは姫様だよ。
本当に嫌ならそのうち言われるよ」
「なら、いいですけれど」
妖精姫様に嫌われる国王などこの目で見たくないからな。