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13.あなたのすべては私のもの

ピザの話を修正しました。

「ぼくのすべて?」


「それは後で教えてあげるから、ピザ食べちゃいましょ?」


「わかった!」


私はピザを口に運び、食べながら考えごとをした。



王様の所に明日行くって行ったけど、この後行った方が早くないかな〜。


いや、でも魔力制御の方もあるし、、


いや、まだこの腕輪と足輪重いけど使えるし、先に王様かな〜。

ん〜。暗くなる前にって言われてるし〜。


早めにここ出るかな〜。


う〜ん。


「マリー。ぼくおなかいっぱい!早くお話しよ」


「あら。ちゃんと食べた?」


「たべたよ」


「わかった。私もこの一枚食べたら、おわりにするよ」


そして食べ終わった。


「食べ終わったよ。イブ」

私は手にきれいにする魔法をかけて、手をきれいにした。


「いまのなに?」


「手をきれいにする魔法よ〜」

「ぼくにもやって!」


「いいよ」

イブは食べ方が上手だったので、手は汚れていなかったがご要望通り魔法をかけた。


「わぁ!すべすべになった!」

私は可愛くてつい笑顔になっていた。


「ご馳走様でした!」


「ご馳走様でした」

私はイブの真似をして言った。


「父様、母様。ぼくの部屋でマリーと話してきてもいい?」


「おなかいっぱい食べたのよね?」


「食べたよ」


「なら、いいわ」

「あぁ、なにか会ったら呼ぶんだぞ」


「マリーがいるのになにかあるわけないよ!」

「お食事ご馳走様。失礼するわね〜」



「イーブは本当に姫様が好きね」

「そうだな。あんなに楽しそうなのは初めてみるかもな」


「食事を一番に終わるのも初めてですね。余程、姫様と話をしたいみたいですね」

「僕も勇者の話とかききたーい」


「今日はイブに譲ってあげましょう?昨日は大分寂しがっていたじゃない。

大丈夫。少ししたら、あなた達とも話してくれるようお願いしましょうね」


「分かってるよ〜。絶対お願いしてよね!母様!」


「もちろんよ」


ちなみに昨日のイーブはずっと元気がなく、空を見てぼーっとしていたりしていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「マリー。さっきの話!ぼくの全てを貰うってなに?」


私はイブの部屋に来て、ベットに二人で座ってイブに前のめりに質問されていた。


「そのままの意味よ。あなたの全てが欲しいの。だから、一緒に過ごしてあなたの全てを貰うわ」


「わぁ!最高だね!ぼくもマリーの全てが欲しい!でも、すべてってたとえばどんなの?」


「そうねぇ。手を繋ぐのとか。

抱きしめるのはさっき貰ったわね。

ねぇ、抱きしめるのは私が初めて?」


「家族以外なら初めて。マリーは?」


「う〜ん。妖精の子達とはあるけど人間の子とはないかな」


「そう、、なんだ」

分かってはいたけど、少し悔しいイーブだった。


「それで、手を繋ぐのとか、顔に触れるのとか、キスとか痕とか、どこかに出かけることとか、

一番長く傍にいることとか、あとは魂とかかな?

他のは追追一緒に探していこうね?」


「魂?」


「そう!妖精と結婚するものはね、魂を女神様に縛って貰えるの。

たとえどちらかが死んでも、また近くに生まれることができるのよ。

妖精になれば妖精としか生まれないからその辺も安全よ!」


「でも、記憶は?」


「記憶は死ぬと無くなるわ。でも、また他の人に奪われることもなく必ず逢えるのは魅力的じゃない?

でも、記憶が無くなるのは悲しいから死なないようしようね」


「うん!」


「そうだ、そのうちアクセサリーに防御の魔法付与してプレゼントするか、、」

私はぶつぶつ喋っていた。


「ねぇ、あとってなんのこと?」


「えっ。あー」

ミレイユが前に言ってたの思い出して、口に出しちゃったけど。

こういうのってまだ早い、、よね?

でも嘘つくのも嫌だし、、、正直に言おう!


「その、唇で肌を吸って痕をつけることよ。赤い痕がつくの。

血管が傷ついて、内出血がおきるの。

痛い時もあるらしいし、まぁ、そういうのは大きくなってからね?」


「でも、早くしないとぼくの初めてじゃなくなっちゃうかもよ?」


いや、でも。さすがに五歳の子にキスマークは、、、


「だ、だめよ!痛いみたいだし!というか私以外にそんなことさせちゃだめよ!!」


「そういうもんなの?」


「もんなの!」


「そうなんだ。よくわかんないけど、じゃあマリーもぼく以外にそれやっちゃだめだからね!」


「もちろん!」


「えっと、手を繋ぐのやろう?マリー」


「分かったわ」


私の左手にイブが右手をぽんっと乗せて、私達は手を繋いだ。


「なんかすっごい嬉しい。マリー。マリー好き」

私は繋いだ手を自分の顔に近づけ、イブの手の甲にキスをした。


「! わぁ!」

イブは驚いて固まっていた。


「ふふ。かわいい」

私は左手は繋いだまま、右手をイブの顔に触れた。


ほっぺにキスをして、イブの前髪をあげておでこにキスをした。

そして首にキスをしようとした。


「ちょっ。ちょっと!なんか恥ずかしいよ」

イブは顔を真っ赤にしていた。


可愛くて、可愛くて、愛しくて、私はぎゅっとイブに抱きついた。


「わぁ!」

イブは後ろに倒れた。


「ねぇ。好きよ。愛してる。愛してるわ」


マリアーナは熱の帯びた瞳でイーブを見つめていた。


―――

マリーが急にいっぱいキスしてきて、わぁ!ってなってたら、

抱きつかれて、気づいたらマリーはぼくの上にいた。


「ねぇ。好きよ。愛してる。愛してるわ」

マリーの瞳を見ていると、頭の中がマリーのことだけだけになる。


「ぼくも好きだよ」


ぼくはマリー見てぽぉーっとしていた。


マリーはぼくの首にキスをした。


さっきキスしていたときより、嬉しそうだった。


「首って急所じゃない?そんなところを私が触れられるのがたまらないの」


マリーはぼくの顔を触って、口にキスをした。


そして、首にもまたキスをされた。



―――

イブの首、おでこ、唇にキスをして、首に痕をつけた。

イブを少し征服出来たような気がした。

かわいくて、かわいい。

私だけを見ている私の痕のついたイブを見て多幸感に包まれた。


イブを眺めていたら、はっとして頭がはっきりしてきた。


わぁー!!!痕つけちゃった!やりすぎちゃった!!

ついかわいくてキスして、抱きついたら押し倒した感じになっちゃって、、

わぁ、、、


まぁ、可愛いからいいか、、


イブは私をどうしたんだろう?っといった顔で見ていた。


かわいい、かわいい。

私はイブの頭を撫でた


いや、ノエルとコーデリアに怒られる、、かな。

まぁ、いいや。かわいいんだもの。


「マリー。ぼく、マリーがぼくのこと好きなのちょっと分かった」


「なら良かった」

私はイブの頭を撫で続けていた。


「マリーは頭撫でるの好きなの?」


「ん〜。そうかも。でも、あなたに触れられることなら何でも好きよ」


「そう、なんだ」


私はイブを起き上がらせて、横向きに私の膝の上に乗せた。


ぎゅーっと抱きしめて、イブの頭に私の顔を近づた。


はぁ。好き。大好き。愛しい。愛してる。

抱きしめていると、今まで生きてきてずっと抱えていた、乾き、消失感、

手に入らないものに手を伸ばし続けるドロドロとした私が満たされた気がした。


好きで、愛していて、可愛いイブ。

ずっと私に笑っていて、幸せでいて欲しいのに、

イブに傷をつけたらイブの全てが私のものになる気がしてしまう。


傷ついたイブなど見たくはないのに。


イブに私しか見えなくして、私しか考えられなくしたい。


「マリー?」

イブの声を聞き、ぐちゃぐちゃした心に蓋をした。


「なぁに?」


「なんかマリーが変な感じがして」


「えっ。変って?」

私は私のぐちゃぐちゃした部分に気づかれたのかと思い、内心焦っていた。


「ん〜。わかんないけど、マリーがすごいぎゅってしてたから、声をかけた方がいいのかなっておもって」


それは純粋で優しい理由だった。

私はまたイブをぎゅっとした。



「どうしたの?マリー」


「抱きしめたくなったの。愛しているから」

純粋で優しい理由で私に声をかけたイブに私はいつか私の汚い部分を話さなきゃいけないときがくる。

でも、まだイブには綺麗な私を見ていて欲しい。

話せばイブに嫌われるかもしれない。そう思うと、まだ言いたくなかった。

綺麗な方が愛してくれるかもしれない。


いや、違う。見て欲しくないだけだ。イブに綺麗じゃない私を見て欲しくないだけ。

だから、まだこのままで。



ぼくはぎゅっとしてきたマリーの肩に左手を回した。

ぼくもマリーを抱きしめ返したかった。


「あっ!マリー。ぼく、マリーにあげたいものがあるんだ!」


「?」


「そこにあるくまさんのぬいぐるみなんだけど」

どうやって取ろうかな?

マリーの膝から移動しないと、、

でも、離れるの嫌だなぁー。


そんなふうに考えていたら、マリーが風でとってくれた。


「これ?」


「そう!」


「マリーはぼくにこのブレスレットくれたでしょ!

だから、ぼくもマリーになにかプレゼントしたくて。

そしたら、マリーお家に帰っても寂しくないかと思って」


マリーはまたぼくのことをぎゅっとした。


「すごいぎゅってするね。マリー」


イブに抱きついたら、涙が出てきた。


みんな帰るときに私が寂しそうだって気づいても大抵なにも言わない。

言ったとしても『また来るから』と。

でも、別にそれ以上のなにかをその人達にしてほしかったわけじゃない。

時間が解決すると、放っておかれたこともある。

別にそれらのことについて思うところがないと言ったら嘘になるけれど、

別にもう彼らにそのことについてはなんとも思っていない。

私の存在はそういうものなんだと、もう理解している。


でも、イブは私のために行動してくれる。


「マリー?」


私はイブを抱きしめるのをやめて、イブの顔を見た。

「好き」


「マリー。泣いてるよ。どうしたの?」


「好きだと思っただけ。イブが好きで涙が出ちゃった」


「そうなの?」

イブは慰めるように私の顔を触ってくれた。


さっきまではイブに汚れた私は知らないで欲しかった。

でも、今はそれも知って愛してほしい。

きっとイブは受け入れてくれる。

なんとなくそんな気がした。


「ねぇ、イブ。そのうち私の話聞いて欲しいの」


「はなし?」


「うん。私の話。長くなるかもしれないから、今度ね。聞いても嫌いにならないでね」

話す前にこんなこと言うのは卑怯かもしれない。

でも、その言葉はいつの間にか私の口から漏れていた。


「聞かなきゃわかんないけど、マリーのことだもんきっと嫌いにならないと思う!」

私はイブの頭に顔をくっつけた。


「そうだといいなぁ〜」


「あっ!それでね。このくまさん、ぼくちっちゃいときから一緒にいたからぼくの魔力とかついてない?どう?」


「ついてるわ」


イブは顔をぱぁっと明るくして、嬉しそうな顔をした。

「じゃあ、くまさんいたらマリー寂しくない?くまさからぼくを感じられる?」


「そうね。きっと寂しくないわ。ありがとう」


「やった!昨日色々考えて、なにをマリーにあげるか考えてたんだ!

良かった!マリーが喜んでくれて」


「まぁ!昨日は私のことを考えてくれていたの?」


「うん!」


「そう〜」


「このくまさん、小さいときから一緒にいたのよね?

私がもらってもいいの?大切な子じゃないの?」


「大切だけど、マリーなら大切にしてくれると思うし、

ぼくの近くにいつもいたからきっとマリーもぼくを感じて寂しくないと思うから、

マリーにもらってほしいんだ」


「ありがとう。そろそろイブが好きすぎてどうにかなっちゃいそうだわ」


「それってどーゆう意味?」


「すっごく好きって意味」


「なら嬉しい」


トントンと扉が叩かれた。

「二人っきりなのに邪魔して悪いけど、お話があるの〜」


「はーい」

イブが返事をした後、イブを膝から降ろして、二人で扉の前まで歩いていった。


「あら〜。ありがとう。あら?イーブ、首のところどうしたの?」


はっ! キスマークそのままにしてた!!

私は気まずくて、つい目を逸らしてしまった。


「くび?」


私が目を逸らしたのがバレて、コーデリアに話しかけられた。

「・・・・姫様。まさかですが、姫様がおつけになったのですか?」


「・・・・はい。すみません」


「??」


「姫様、そういうことはイーブには少し早いかと思いますが、、」


「わ、分かってるけど、気づいたらしてて、、今度から気をつけるから、ごめん」


「首ってなんの話?」


「え〜っと」

キスマークって言っていいのかな?

どうしたらいいか分からず私はコーデリアを見た。


「イーブの首が赤くなっているところがあってね。そのお話をしてたのよ」


首、、、

赤いってことは虫?

でも、マリーがつけたって話してたよね?

ん?赤いってことはもしかして


「もしかして、マリーがぼくに痕つけたの?」


「「!!」」


「姫様、、、イーブと何をお話になっていたのですか?」


わぁ〜!!!


「ご、ごめん!ごめん〜」


結局、コーデリアに怒られることとなった。


「姫様!イーブはまだ五歳でございます。

先程も申しましたが、そのようなことはまだ早いです。

どうして、このようなお話になったのですか?」


「え〜っと、イブの全てが欲しいって話をしていて。

例えばでその話をだしてちゃって、、少し説明をしました」


「なぜ、例えばで出したのですか?」


「口が滑りました。ミレイユに言われた話を思い出しまして」


―――

ぼくは母様とマリーが話をしている間に鏡で痕を確認していた。


「イーブ様、お首のところが痛くはございませんか?」


「痛くない」


「冷やしたり、温めたりなどするとキスマークは早く消えると言われております。

時間は経っていそうですし、温めるものをお持ちいたしましょうか?」


「消したくない」


「どうしてでございますか?」

早く治った方が痛みもなくなるのが早いかと思い、そう口に出したコーデリア付きのメイドだった。


「これ見たら、マリーがキスしてくれたの思い出して、マリーを感じられるから」


「か、かしこまりました。

そろそろ、お話も終わりましたでしょうかね?様子を見に行かれますか?」


なんとなくこのままイーブと二人きりは気まずくなってしまったメイドは、

様子を見に行くことを提案した。


「うん!」




マリーと母様のいる部屋の扉を開けてもらい、ぼくは部屋の中に入った。

部屋にはしゅんとしたマリーと怒っている母様がいた。


「お話、終わった?」


「終わってないですが、これ以上は私の気持ちをぶつけるだけになってしまうので、

終わりにしましょうか」


「わぁ〜。イブ〜」

心を癒したくて屈んでイブに抱きついた。


「怒られてたの?」


「いいえ、叱っていたのですよイーブ」


「それって違うの?」


「全然違うわよ。叱るのはその人のことを思ってるいるわ。怒るのは気持ちをぶつけることよ」


「そうなんだ。じゃあ、マリーは叱られてたの?」


「そうなの〜」

私はへなへなになりながら、そう言った。


「なんで?」


「姫様がイーブの教育に悪いようなことをなさるからよ」


「でも、キスマークは恋人以外の人とはしちゃだめなものなんでしょ?

ぼくはマリー以外とはしないし、それでもだめなの?」


「それでもまだあなたには早いわ。イーブ」


「??」


「イブ、ごめんね?痛くない?つけた後も痛いこともあるってさっき聞いて〜」


「痛くない」


「今、治すから」

マリーは無理をした笑顔をしていた。


「やだ!消さない!」


「なんで?」


「これ見たら、マリーのこと思い出すもん!

マリーがキスしてくれたのとか、好きだって言ってくれたこととか思い出すもん。

それがなくなるはいや。それに、マリーも治したくないのにそんなこと言っちゃ嫌だよ」


なんでイブにはいつもバレるんだろう。

今まで誰にも言われなかったのに。

気持ちを隠すことなんて、あたりまえだったのに。


「ごめんね。いつも嘘ばっかりついて」


「マリーはぼくに嘘ついたことなんてないよ。いっつもぼくのために気持ちを隠してるだけじゃん」


たしかにイブに嘘をついたことはなかった。

じゃあ、なんで嘘って口に出したんだろう?

・・・・私が嘘をついていたのは私?


いつもいつも気づいていない振りをした。

頭で最善だと思う行動が自分の意思だと勘違いした振りをした。

痛む心に見て見ぬふりをした。

いつしかどれが本当に思っていることかわからなくなったときもあった。

でも、私がとるべき行動をとっているうちにいつしか本当にそれが私の気持ちだと勘違いした。

勘違いだと本当は気づいていたけれど、それでみんなが喜ぶならそれでよかった。

よかったはずなのに。


イブに逢った時から変ね。自分に嘘をつくのが下手になった。


イブには気づいてほしくなる。どうかわかってと愛して欲しいという声が体からもれてしまう。


「ごめん。自分の気持ちいつも隠しててごめん。そうした方がいいかと思って、、たから」


「じゃあ、もうやめてね。マリーの辛そうな顔もう見たくないから」


「つらそう?」


「マリーそういうとき悲しそうだったり、辛そうな顔してるよ?」


「そうなんだ、、、じゃあ、もうしない」

できるだけイブの前ではしないようにしよう。

イブに言えないことは隠してしまおう。

イブは私のように考えていることまでは分からないのだから。

イブには嫌われたくない。そう思いながら私は『もうしない』と口に出した。



「ねぇ!嘘ついてるでしょ!ぼく分かるんだからね!」


「えぇ〜。わかった?」


「わかった!」


「イブに嫌われたくないから、全部、隠すのやめるのは無理かな〜って考えてた」


「だめ!絶対、嫌いにならないから!」


「・・・私のこと全部イブに言ってないのに嫌いにならないってのは信じられないの。

だから、わかったってまだ言えない。ごめん」


イブに嫌われたら、生きていけない。

でも、今ならまだ悲しむだけで済むかもしれない。

でも、信じてしまったら、もう。私は怖くてまだあなたを信じられない。


イブの唇にキスをしたくなった。

イブのことを全部信じていないくせに愛されている感覚が欲しくなった。

嫌だこんなの。


今日はもう帰った方がいいかもしれない。

そうしなければ、嫌なことばかり頭に浮かんでしまいそうだった。


「コーデリア。話があるって言ってたけど、明日でもいい?今日はもう帰るわ」


マリーの傷ついた顔が見たくなくて、言ったはずなのに。

また、マリーは傷を隠して笑っていた。


「そ、そうですね。そんなに急ぐ話でもないですし」


マリアーナのなんとも言えぬ空気を感じとっていたコーデリアは姫様がそういうなら帰った方がいいと思っていた。


「ねぇ!マリー!」


マリーはぼくの方を見た。


ぼくは振り返ったマリーから今、今引き止めないと、二度と会えないような怖さを感じた。


「今!全部聞くから!お願い!まだ、まだ行かないで!マリー」


「今はだめだよ。だって、私イブのこと傷つけちゃうもん」


「それでも!それでもいいから!」


ぐちゃぐちゃの心に頭がもっていかれる。

イブがいいというのだから、いい気がしてしまう。


必死そうなイブを見ていたら、余計に頭が回らなくなった。

足に力が入らなくなって、しゃがんでしまった。

しゃがんで顔を両手で隠した。


「わからない。私、イブに逢ってから自分がどうするべきか分からなくなった。

今、どうしたらいいの?」


もうなにも考えたくなかった。

それなのに頭は思考するのをやめてくれない。


自分に都合のいいことがぐるぐると沢山浮かんでくる。

今、話せば愛してくれる?

イブなら傷つけても許してくれるかもしれない。

しおらしくしていれば受け入れてくれる?


今すぐ、イブをおいて飛んで帰ればいいのに、イブに話して、私の全てを愛してほしくて仕方がなくて、そうできなかった。


頭が痛い。


「マリー」

気づいたら、イブが目の前にいた。

今の自分が何するか分からなくて、近くにイブがいることが途端に怖くなった。


「マリーは今どうしたいの?それをすればいいと思うよ」


「だ、だめだよ。それは」


「じゃあ、するかどうかは聞いてからぼく達が決めるから。マリーはなにしたい?」


わたし、わたしは


「抱きしめてほしい」


「わかった」


イブは優しく私を抱きしめた。


「マリー。大丈夫だから、全部話してよ」


「わかった」

痛いほどの思考は止まり、私の頭の中は空っぽになっていた。


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