11.婚約届け
見直して、書き足したりしていたら少し長くなってしまいました。
長めとなっておりますが、よろしくお願い致します。
婚約について、ノエルが話し出した。
「婚約するには役所に婚約届けを出すことになっております。
ですが姫様の場合、そのまま書いて出してもまず信じてもらえないというか扱いに困ることになるでしょう」
「そうよね〜。・・・となると王様に頼むしかないかなぁ〜」
「それしかないと思います。
我々からも陛下にお伝え致しますが、姫様からもお伝えして頂けないでしょうか」
「それはするわよ!もちろん!任せてね〜。ノエルも王様にきっちり伝えるのよ!」
「かしこまりました。お任せ下さい」
「婚約は陛下にお話してからになりますので、婚約届けを使うか分かりませんが書いておきますか?」
コーデリアはそう言った。
「そーねぇ〜。使う時に用意があった方がいいし、書いておきましょ!」
「イーブここに名前をかけるか?」
「書く!書ける!」
「まずは練習してからにしましょう?何枚か貰って来ているけれど、練習するに超したことはないわ!」
そうして、イブとコーデリアは文字の練習を始めた。
「ねぇ、私も練習していいかしら」
マリアーナは少し恥ずかしそうにそう言った。
「姫様も練習なさるのですか?」
「ん〜。あんまりペンって使わないのよね〜。ていうか人類語合ってるかしら。急に不安になってきたわ」
普段はペンをあまり使わず指に魔力を込めて文字を書くため、
ペンで書くことを練習しようと思ったマリアーナだったが、
妖精同士では妖精語しか使わないため、人類語が書けるか不安になってしまったのだった。
「姫様、人類語書けないの?」
「昔、練習したんだけど、あんまり書くことないから忘れてきたかもしれないな〜って」
「へぇ〜。長生きならそういうのバッチリなのかと思ってた」
「それが意外とそうでもないのよね〜」
「というか名前ってマリアーナって書けばいいのかしら?」
「そうですね。他に同じ名前の方はおりませんし」
「それもそうね」
「どう?母様、名前書けてるでしょ?」
「えぇ。書けてるわ。その感じでこっちにも書いてみましょうか」
私はちらっとイブの書いた文字を見た。
おぉ。かわいい字ね〜。紙にマリアーナって書いてもらって飾ろうかしらね〜。
後で書いてもらいましょう!
おっと、私も練習しなきゃ。
「ん〜。合ってる?」
「合っておりますよ。姫様」
「合ってる!ほんと!」
意外と練習したものって忘れないものなのかもしれないわね。
「でも、姫様。字あんまり上手くないな。貸して?こうだよ姫様」
文字を書く私を見ていたコリンが近づいてきて、そう言った。
「おお!なるほど、、こう?」
「そんな感じです。姫様」
ノアも近くに見に来ていた。
「わぁ〜。もうちょっと書いてみるね」
「ここはもう少しこういう感じですね」
「こう?」
「おおー、良くなってきたじゃん」
そうやってノアとコリンに手伝ってもらって練習した後、本番を書くことになった。
「き、緊張するわね。失敗したら、イブもう一回名前書いてくれる?
婚約しないなんて言わないでよね」
もう名前は上手に書けるようになっていたが、婚約届けに書くということが妙に私を緊張させていた。
「絶対言わないよ!何回でも書くよ!」
「自分の名前でそんなに失敗するなよ、姫様」
「大丈夫ですよ姫様。いっぱい練習しましたから」
先にイブが名前を書いた。
かわいい字がこれから私が名前を書く欄の隣に書かれていた。
「よし!いくわ!」
私は気合いを入れて、名前を書き始めた。
さっきまで沢山練習して、上手くなったはずの字は緊張で少し下手になっていた。
「どう?緊張しちゃって変になったかもだけど、合ってるわよね?」
名前を書き終わったため、ノエルとコーデリアに確認してもらった。
「合っていますよ」
「大丈夫ですよ〜姫様」
確認してもらった婚約届けをもう一度見た。
イブと私の名前が並んでいた。
なんだか名前を書くと一気に婚約するんだって感じがするわね。
婚約できるんだと実感が湧いてきたのか、急に心が高揚して心臓がどきどきして目が熱くなった。
「おお!」
「本当に婚約するんだね。イーブ」
私達の名前が書かれた婚約届けを見たコリンとノアも私と同じようなことを思っていたみたいだ。
「こちらの住所と戸籍は私達が書いても良いことになっておりますので、
私達で書こうかと思っているのですが大丈夫でしょうか。姫様」
「大丈夫だけど。私、住所分からないわよ?というか戸籍なさそうだし、、どうするの?」
「姫様の住所は確認済みでございますので、そちらを書かせていただきます。
戸籍は空欄にしようかと考えおります」
「!! もう確認してあるの?」
「えぇ。イーブが姫様との結婚を決めたのが早かったため、昨日のうちに確認しておきました」
結婚を決めるのが早かったかぁ〜。へぇ〜。そっか。嬉しいなぁ〜。
知らないないうちににやにやとした顔をしていたマリアーナだった。
へぇ〜。うちこんな住所名になってるんだ。
・・・ん〜。でも、良く考えればそれもそっか。
マリアーナは地名を思い出し、住所名に納得した。
「姫様。お次はこちらを書きます」
コーデリアの声で住所のことから婚約届けに思考が戻った。
「うん」
「ここは両親の名前か、知り合いに名前を書いてもらうことになっているのです。
貴族は大体両親か親戚になりますね。
そういう方がいらっしゃらない平民の方になると知り合いの方にお願いすることもあるとお聞きしております。
まぁ、平民の方は婚約を飛ばして結婚なさる方が多いと聞いてはおりますけれど。
それでですね。
こちらはお互いの両親が書くことが基本となりますので、4人の方に書いてもらうことになるのです」
「う〜ん。となると私も誰か知り合いに書いてもらう方がいいかしら?」
「そうなりますね」
「う〜ん。持ち帰って文字を失敗しても嫌だし、ちょっと誰か二人呼んできてもいいかしら?」
「「「「「えっ?」」」」」
「呼ぶってこちらにですか?」
「他にも妖精様がここに?椅子が足りな」
みんな急にあわあわと慌て出した。
「じゃあ、呼んでくるわね〜」
マリアーナは羽を出して飛び立とうとしていた。
「マリー!!」
後ろからイブの焦ったような声がした。
「なぁに?イブ」
「また帰ってくるんだよね?」
「もちろんよ!すーぐ来るから待っててね」
マリアーナは窓を開け、そこから自分の家へと一目散に帰った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ただいま!ちょっと誰か急ぎで二人必要なの!誰か来てくれないかしら?」
「どうなさったのですか?姫様」
「どうしたの〜姫ちゃん!それより」
「婚約届け書いてたんだけどね。証人が二人いるのよ!」
「「!!」」
「それはつまり、求婚を受けてもらえたってことよね!姫ちゃん!」
「そうなの!受けてもらえたの!
それでなんだけど、誰か二人来てくれる子いないかしら?
イブが待ってるから、早く行きたいんだけど、、」
「一人はわたくしが行きます。姫様がお生まれになった時から傍に付いておりましからね。
そうでなくともゆきますが」
「私も行く!!メルも一緒に行ってもいい?」
「もちろん!じゃあ、行くわよ!私に着いてきてね」
「かしこまりました」「は〜い」
「メル、自分で飛んでくれる?
落としちゃったら怖いからさ。なんかすごい速く飛びそうだし、姫ちゃん」
「分かったよ。みー」
メルヴィルは猫から人の姿になった。
「準備できた?」
ミレイユとメルヴィルが話していたため、待っていたマリアーナは三人を確認した。
「じゃあ、行くよ!」
―――
四人で空を飛んでいた。
「で?名前イブっていうの〜?」
「イーブ・ストラウドね!
イブは私だけが呼んでいいんだから、ミレイユは金輪際呼んじゃだめだよ!!」
「えっ、本当にごめん。まさかもう愛称で呼んでるとは、思わなくて、もう絶対呼ばない。
なんかお詫びした方がいい?」
「婚約届けの証人になってくれるし、いいよ。ミレイユが証人なんて、幸せになれそうじゃん?」
「それはありがとう。絶対幸せになってね!それとメルもごめん。メル以外を愛称で呼んじゃった」
「知らなかったんだし、いいよ。知ってて呼んだら許さないからね。
それと、次からは名前確認してから口に出してね」
「わかった。次から絶対確認してから口に出すね。
愛称だって知ってて呼ぶことなんて絶対ないけど、もしあったら私を殺していいよ」
ミレイユは愛のこもった目をメルヴィルに向けていた。
「みーが死ぬのはさすがに嫌かな。殺さないけど、もうそんなことできないようにお仕置するね」
メルヴィルもまたミレイユに笑みを返していた。
「分かった!」
まるで微笑ましい会話でもしていたかのような
ふんわりとした雰囲気を醸し出しながら二人は微笑んでいた。
隣で緩急の激しいなにかを見た私は念の為、二人には釘を刺すことにした。
「もし、殺す事態になったら、先に女神様と私たちに伝えてよね、、、
ていうかそんな事態にならないようにしてねもっと気をつけてよね二人とも!
まぁ、ないと思うけど?二人ラブラブだし」
「そうね!ラブラブだもの〜。メルになら殺されてもいいけど、やっぱり一緒がいいし〜」
「僕もそう思ってるよ。みー」
「メル!」「みー!」
二人は熱い視線を送り合っていた。
今ストラウド家に向かって飛んでいる最中でなければ、二人の熱い抱擁が見られたことだろう。
「物騒ですね。おふたりには一生仲良くしていて欲しいものです」
「ね〜」
そんなこんなでストラウド家に着いた。
「あら?イブが外で待ってるわ!」
「ほー、あの子が姫ちゃんの」
「帰ったわ!イブ。待ってたの?」
「待ってた!早くマリーに会いたくて!」
「愛称で呼びあってる!」
姫ちゃんが愛称で呼んでいるのはさっき聞いたけど、まさか姫ちゃんも愛称で呼ばれてるなんて!!
ミレイユは愛称で呼びあっている二人を見て感動していた。
メルヴィルはそんなミレイユを愛おしそうに見ていた。
「ん?証人になってくれる妖精様?」
「あら?妖精の愛し子じゃない!私まで見えるなんて、、出来る子捕まえたね!姫ちゃん」
「でしょ!」
「イーブ様。こちらは八大妖精のミレイユ様とミレイユ様の夫であるメルヴィル様でございます」
「!! 八大妖精の妖精様?えっと、名前で呼んでいいの?」
「大丈夫よ〜。姫ちゃん以外の妖精は名前に様とか殿?とかつけて呼べば大丈夫!
私達の許可なく愛称とか、呼びすてにしなければ大丈夫だよ〜。姫ちゃんの恋人ちゃん!
でも、姫ちゃんの旦那様になるんだし〜。今から呼び捨てでもいいけどね〜。ははっ」
「それはダメだよ。みーちゃん。みーちゃんを呼び捨てなんて。
伴侶になるって言ったってまだなんだし」
「ん〜。そうかな?」
「まだ姫様と結婚してないし、だめ!」
「え〜」
イーブは二人をじーっと見て、マリアーナに目を向けた。
「じゃ、マリー中に入ろうよ。続き書こう?」
「えぇ。ミレイユ。メルヴィル入るわよ〜。ステイシーもついてきてね!」
「は〜い」「はい」「はい。もちろんついてゆきます」
みんなでストラウド家の中に入った。
「へぇ〜。人間の家ってこんな感じなんだ〜」
「ミレイユ様、ここは公爵家ですので、格式の高いお家なのですよ。
他の人間様のお家はここまでではない方が多いかと思います」
「そうなの〜」
「これが人間の家、、、」
メルヴィルは初めて入った人間の家をキョロキョロと見ていた。
「入ってもいい?」
マリアーナは扉の前に居た者に話しかけた
「もちろんでございます」
そう言って、二人の護衛は扉を開けた。
「ただいま〜。証人連れてきたよ〜」
「お待ちしておりました。姫様」
「おかえりなさい姫様」
「おかえりなさい姫様」
「姫様おかえり〜!!」
「ただいま〜」
イーブにはマリアーナが自分の家にただいまと言った事実が猛烈に心に刺さっていた。
イーブはあまりの衝撃に扉の前で立ち止まっていた。
「イーブ?」
「!! おかえり!マリー」
イーブは名前を呼ばれてはっとなり、
自分はまだおかえりと言っていないことに気づき、おかえりと言った。
「ただいま」
マリアーナはイーブを見て微笑んだ。
私は手を横に向け、紹介する姿勢をとった。
「こちら、証人のステイシーとミレイユ、そしてミレイユの夫のメルヴィルが来てるわ。
見えないと思うけど」
イーブ以外には見えない証人をマリアーナは紹介した。
「お久しぶりです、皆様。ステイシーです」
「初めまして!ミレイユです。姫ちゃんの証人です!」
「ミレイユの夫のメルヴィルです。ミレイユと仲良くしたら許しません」
「こら〜。メル!そんなに威嚇しちゃだめでしょ!これから姫ちゃんの伴侶となる人のお家だよ!」
「でも、みーが僕以外と仲良くなるはいやだから」
「そんなことあるはずないんだから、大丈夫でしょ!」
「みー!!」
ミレイユとメルヴィルはくっついてイチャイチャしていた。
「あの〜。もしかしなくてもミレイユ様って八大妖精のミレイユ様ですか?」
みな驚いて固まっていたがイチャイチャしてる声を聞き、正気に戻ってきたコーデリアが尋ねた。
「そうだよ〜。八大妖精の愛のミレイユだよ!」
みなには見えていないが、ミレイユはえっへんと挨拶した。
メルヴィルは隣でえっへんっとしているのがかわいいなと思っていた。
「これはご挨拶が送れまして申し訳ありません。ミレイユ様。メルヴィル様。ステイシー様。
ストラウド家当主のノエル・ストラウドと申します」
「妻のコーデリアでございます」
「長男のノア・ストラウドでございます」
「次男のコリン・ストラウドでございます」
「確認になってしまい、申し訳ないのですが、
この度は証人として来てくださったということでよろしいのでしょうか」
「もちろん!」
「そうでございます」
「まさかミレイユ様がいらっしゃるとは思わず、驚いて挨拶が遅れてしまいました。
申し訳ありません」
コーデリアはマリアーナと他の三人に謝った。
「そんな〜私は大丈夫よ!じゃあ、証人になるけど、なにしたらいいの?」
「こちらにですね」
ミレイユに説明を始めたノエル。
「姫様、まさかミレイユ様が来られるとは思いませんでしたわ」
「やっぱり?まだ居たから、連れてきたの〜。それに証人がミレイユとか幸せになれそうじゃない?」
「それはそうですけれど」
コーデリアとマリアーナはひそひそ話していた。
「それより姫様。証人とは何をすればよろしいのですか?」
「あら!ステイシーにも知らないことがあるなんてね〜」
マリアーナはにやにやとステイシーを見た。
「それくらいございます」
「ふふ。そうかもね。あの紙に名前を書いて欲しいのよ〜」
私はミレイユとノエルが話している紙を指さした。
「名前ですか」
「文字は人類語でペンで書いて欲しいの」
「かしこまりました。ですが、ペンで書くとなるとわたくしだという証明にならないのではないですか?」
「あ〜。それは確かにそうかも。でも、人間は文字の魔力を見ても誰かわからないんじゃない?」
妖精は文字に魔力を込めるため、文字を見れば誰が書いたか分かるのである。
そのため、魔力に耐えられる紙を使わなければならないので婚約届けにはできないことであった。
「それもそうかもしれませんが名前だけ書くとなると、
妖精だという証明ができないのではないですか?もう一枚証明になるものが必要ではないですか?」
「う〜ん。あった方がいいかも〜。というか今更だけど、妖精で証人になるのかな?」
「それなのですが、姫様。
証人というのはその人の大切な方がなるものなのです。
ですので、姫様の証人は姫様のお知り合いの方がよろしいのではないかと思いまして」
「なるほど、、まぁ、王様には私が言いに行くし、証人が妖精でも大丈夫だよね!」
「姫様、人類語となりますとわたくし正しくかけるか不安にございます」
「それはみんなに教えてもらって書くのよ〜。名前だけだし、大丈夫よ!
ステイシーなら、すぐできるわよ!」
その後、ミレイユとステイシーに名前を教え、名前を婚約届けに書いた。
「これで婚約届けできた?」
「最期に一人一人血判が必要になります」
「そんなことまでするの?」
「人間って大変なんだね〜」
「貴族は受理されますとたとえ間違いであったとしても破棄がしにくいのです。
ですので、間違いがないように徹底されているのです。
マーア国では五歳になると洗礼を受け、そのときにに魔力の記録を教会に残します。
婚約届けや結婚届けなどはその教会に記録された魔力と同じであるか確認がなされ、
同じだと判断されますと受理されるのです。
ですので、血判が必要になっているのですが」
マーア国とはマリアーナ達が住む国の名前である。
「それって〜。血液に魔力が含まれるから、血判なんでしょ?
でも、魔力残すだけでいんじゃないの?血判にしなくても」
ミレイユが疑問を口に出した。
「人間の子たちは魔力操作が苦手な子もいるじゃない?だから、血判なんじゃない?」
「あ〜。なるほど!できない子がいたら、困るもんね!よく出来てること。
じゃあ、私達は残すだけでいいね!」
「ですが、わたくし達が魔力を残すとこの紙が耐えられない可能性があるのではないですか?」
「あ〜。でも、私達が妖精だって確認の紙書いた方がいいって話してたじゃない?」
「はい」「そうなの?」
「うん。それで、そこに魔力残せばいいんじゃないかしら?」
「なるほど〜」「それなら問題ありませんね」
「ミレイユもステイシーも大変だと思うけど、もう一枚書いてくれる?」
「もちろん!姫ちゃんのためならね!」
「わたくしもでございます」
「わぁ!二人とも!」
マリアーナはミレイユとステイシーに抱きついた。
イーブ以外には見えないため、みんなには何も無いところに抱きついているように見えていた。
なので、『姫様しか見えないから話してる様子とか、今の抱きついてるのなんか姫様が一人芝居してるみたいでちょっと面白いんだよな〜』と思われていた。
その後、書く文を決めて練習をした。
そして、紙はステイシーが持っていたものに書くことになり、指に魔力を込めて人類語で書いた。
婚約届けに書かれた〇〇とは妖精の〇〇である
と言った具合のものを三人とも記入した
(念の為マリアーナも記入した)
「よし!これで完成ね!」
「もう証人いらな〜い?」
ミレイユの問いに私はノエルとコーデリアの方を向いた。
ノエルとコーデリアはこそこそと話した。
「ここまで書いておけばもう大丈夫だよな?」
「大丈夫だと思いますよ」
そして、マリアーナの方を向いて言った。
「証人の方が書かれるものはもうないかと思います」
「ふ〜ん。メルどうする?帰る?」
「みーはどうしたいの?」
「ん〜。イーブくんとお話したいけど〜。姫ちゃんに怒られそうだし、またの機会にするかな〜」
怒んないわよ!と言いたかったマリアーナだったが、
この後ミレイユがイブと話をしているのを想像したら、
今日はあんまりイブと話せていないのに、、、と怒るかもと思い、ムッとした顔で黙っていた。
「ふふ。姫ちゃんってすーぐ顔に出るんだから〜。
また、今度みんなに紹介するってなったときに話しさせてね〜」
ミレイユは帰ろうとして、ピタっと止まり振り向いた。
「ねぇ、姫ちゃん。イーブくんと一緒にいるなら魔力制御のアクセサリーつけた方がいいよ」
「あ〜。あれね。確かにそうかも。ミレイユはなににしてたっけ?」
「私はね〜手首と足首に輪っかつけてたよ〜。姫ちゃんのと一緒。
新しいの必要なら、リチャードとナイトハルトに連絡してこようか?」
「あ〜〜。いいよ。私が、、、、やっぱり、新しいの作りたいって話だけしてくれたりする?」
「は〜い。いいよ〜。じゃ!姫ちゃんまたね〜。人間ちゃん達も紅茶ご馳走様ね〜」
「お邪魔しました」
そして、ミレイユとメルヴィルは帰っていった。
あれはあんまりいい思い出がなくて、頭からぬけてたわ。
そして、私は空間魔法で魔力制御の腕輪と足輪を取りだし、パチン、パチンと両方の手首と足首に嵌めた。
それは金属製で細い輪ではなく、縦の長さがそこそこあるものだった。
「ふぅ。重い、、、どう?みんな。魔力収まってる?」
「ないと言っていいかと思います」
「さっぱり消えました!」
「先程までの大きな魔力を感じません」
ステイシー、コーデリア、ノエルにそう言われた。
「これ、もっと早く付けておけば良かったわね。ごめんなさいね。
存在を忘れていたわ。
ミレイユも来ていたし、みんな体調は大丈夫?」
「私は大丈夫でございます」
「私も問題ありません!」
「私も大丈夫です」
「僕もへいきー」
「ぼくも大丈夫」
「良かった〜」
「ねぇ、マリー」
「なぁに?」
「マリーの隣に座りたい」
「まぁまぁ!」
マリアーナは確認のためノエルとコーデリアの方を見たら、
いいよという頷きと微笑みをもらったので、風でイーブを自分の隣に座らせ、にっこりと笑ってイーブを見た。
「それ重いの?大丈夫?」
「重いけど、大丈夫よ」
「ステイシー」
マリアーナは真剣な表情でステイシーの名を呼んだ。
「なんでしょうか、姫様」
「この状態なら、イブに触っても大丈夫かな?」
「おそらく大丈夫かと思いますが、念の為イーブ様の体調は気になさった方がよろしいかと思います」
「ん〜。リチャードに一応聞いてからの方がいいかな〜」
そう話していたら、イーブがマリアーナの腕に手を触れていた。
「えっ?わぁ!危ないわよ!体調は?大丈夫?」
「大丈夫だよ。体調悪くなったら、やめればいいんだもん」
「悪くなったら、すぐ言ってよね!」
私はイブの手を指でつっついた。
そして、恐る恐る手のひら全体で手に触れ、頭に触れ、顔に触れた。
「どう?大丈夫?」
「全然大丈夫。すっごくしあわせ」
イブは嬉しそうに笑っていた。
「はぁ。可愛い。抱きしめるのもいけるかな?」
「あの、姫様。結婚の話の続きをしても大丈夫でしょうか、、」
「あぁ、ごめん」
私はイブの頭を撫でながら答えた。
「結婚はイーブが成人するまで待っていただきたいのです」
「成人って十八歳だっけ?」
「はい。そうでございます。
そして、十八歳までは貴族の一員として過ごすため、夜会や学園にも行かせたいと思っております」
「学園、、、、あんまり学園とか詳しくないから、少しずつ説明してもらえるかしら?
成人するまで待つのは反対しないからさ」
ノエルは反対されるかもしれないと思っていたため、少し驚きながら返事をした。
「! ありがとうございます。
まず七歳から家庭教師による勉強が始まります。
そして十一歳になった次の四月にデビュタントを経て、夜会などに出る機会も増えます」
「デビュタントをすると本格的に婚約者探しなんかも始まるのですわ。
学園が始まる前までに見つけるのが理想になりますね」
コーデリアが補足をした。
「そして、十三歳になると学園に入ることになります。
学園は基礎を学ぶ二年と自分で学びたいことを学ぶ三年とで十八歳となります。
成人すると、結婚することが可能になります。
そして結婚して家の仕事をする者やどこかに所属して仕事をする者にと別れます
結婚相手によって、学園で学ぶことや交流する相手も変わってきますので、
婚約者は学園までに決めるのが理想となるのです」
「まぁ、学園での良い出会いもありますので、
変に決めるくらいなら学園での出会いを期待するものですかね〜。
爵位を継がない方は婚約者は無理に作らない方もおりますしね」
「ほぉ〜。なるほど、、、ねぇ、ステイシー」
「はい」
「私、イブとずっと一緒に居てもいい?」
評価をしてくださった方ありがとうございます。嬉しいです。