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第67話 【青龍寺親子】

応接間でかれこれ数十分待ち続けるなか、その場にいる仲良し2人が自分のことでもないのに緊張し、落ち着いていられなかった。


タコは何度も時間を確認していて、ライアンはその場で激しく貧乏ゆすりをしている。


マキナはその光景を見て2人に落ち着くように言うが、そうしようにも落ち着けないらしい。


それを聞いたマキナは今一番緊張しているであろう天琉が、なにも動じず座って下を向き、精神統一していると言って天琉を指差す。


しかし玲来はそれを全否定し、天琉の顔を見てみるように言われ、3人で顔を見てみると、天琉は白目を向いた状態になっていた。


3人がその事に驚いているとき、玲来は天琉の頭に軽くチョップすると「え… なに?」と言って天琉が戻ってくる。


玲来「緊張のしすぎで放心状態になってたぞぉ?」


そう言うと玲来は天琉をいつものようにいじり、天琉はいつも通りに言葉を返していると緊張がほぐれて余裕を取り戻す。


その様子を他の者が微笑ましく見ていると、応接間の襖が開き、全員がその方向を見てみると、緑髪の中華風の服を着た美男子がそこにいた。


「準備が整いました。ご案内します」


天琉はその姿と言葉を聞いたと同時に再び意識を改め、案内に従おうとするが、いきなり烏丸が緑髪の男に話しかける。


烏丸が「茶の一杯もださへんのか?」「こんだけ待たせといて何もなしか?」から始め、毒のある言葉を浴びせていると、緑髪の男もキレたのか反論し、口論になる。


烏丸「相変わらず堅苦しいやつやのぉ」


「私はお前のようなお気楽な鳥と違うのでな」


烏丸「はっ、そんなお気楽鳥に負けたんは誰やったかなぁ?」


「あれは負けの内に入らないだろう!」


そんな2人の間に電気が走っている中、その場にいる殆どの者がどうしたものかと思っていると、焔がそれを止めにはいる。


焔「今は仲良く口論してる場合じゃないだろ? 烏丸はおとなしくしてろ。『シーナ』は早く天琉を連れてってあげな」


焔の仲介によって2人の口論は互いに腑に落ちないまま終わり、天琉は去り際に仲間たちからの応援の言葉を受け取る。


そして、自分の刀である炎牙に行ってくると伝え、玲来に預かってもらい、笑顔で応接間から出ていく。


応接間の襖が閉ざされてしばらくたった後、ライアンが先程やってきた男について気になり、焔に誰なのかと聞く。


彼の名は「科戸風(しなとかぜ)」。


あだ名でシーナと呼ばれ、現青龍寺家当主、つまり天琉の父親の側近という立場にいる存在らしい。



天琉は科戸風の案内のもと、父親が待つ広間まで歩いているとき、家臣たちが白い目でこちらを見てくるところを見て、昔を思い出す。


陰口を言われ、冷たく白い目で見られ、蔑まれてきたあの日々。


だが、天琉は不思議とそれに対して恐れは無く、冷静でいられた。


それは精神が成長したからということもあるが、己の心の輪の内側には外からの視線など気にならなくなる程、沢山の人たちがいる、その思いがあるからだと天琉は思う。


今までであった人たち、今共に来ている仲間たちがいると思えば、そんな視線は怖くもなんともない。


そして、とうとう父親の待つ部屋の襖の前にたどり着く。


科戸風はここまで天琉を案内することが仕事で、この襖の先までついてくることは出来ないらしい。


科戸風は襖を開こうとするが、天琉が突然科戸風の手首を掴み待ったをかける。


何事かと思っていると、天琉は何か重大なことを伝えたいと言わんばかりの険しい表情を科戸風に向ける。


天琉「1回… 深呼吸しても良ろしいでしょうか?」


やはり、直前になると緊張してしまうようだ。


何故か絵柄が変わったように渋い顔をして、ガチトーンでのその質問に対し、科戸風は天琉と同様に渋い絵柄と険しい表情とトーンで「どうぞ」と返す。


天琉は大きく深呼吸をするが、息を吐くときに白い煙のようなものが出てきていた。


それは寒い季節に白い息が出る現象のようだった。


ちなみに、今の季節はまだ夏の後半である。


それを見ていた科戸風は、何かを堪えるような表情を浮かべていた。


深呼吸を終え、決心した天琉は科戸風に大丈夫であることを伝える。


そして科戸風は、ゆっくりと慎重に襖を開く。


するとそこには、自分が向き合いたいと思っている青髪の男が厳しい顔をして、座布団を敷いて座っており、その前には天琉が座るためであろう座布団が敷かれていた。


彼こそが天琉の実の父親にして、現天下五剣の1人「青龍寺 功敦(かつのぶ)」。


その姿を確認した天琉は、少しの恐れを持ちつつも、部屋の敷居を跨ぎ、部屋のなかに入る。


完全に部屋に入ったところで襖は閉まり、完全に父と子のワンツーマン状態になる。


功敦「久しいな… 天琉」


天琉「あぁ… 親父」


あの時父が放った言葉以来の親子の対面に、天琉は緊張していたが、とにかく一度用意されている座布団に座ろうとする。


だが、天琉の頭に突然ある疑問が過る。



それは「あぐらをかいて座るべきか、正座で座るべきか」というものだった。



その疑問が浮かんだ瞬間、天琉の脳内では様々な意見が飛び交っていた。


天琉(やっぱこういう時は正座だよな。真面目な話するわけだし……。


いやでも、俺の独立の意思を示すためにもあぐらか……? 


いや、それは関係ないか…。


親子の関係は悪くしたくはないし、やっぱ正座……。


だが待て! 親しくなるには親しい雰囲気を出す必要があるから… やはりあぐら……?)


天琉なりに父親と関係を良くしたいと思う点もありつつ、礼儀正しくした方が良いかもしれないという思いがぶつかってしまい、中々決められない。


天琉はこの時だけ、よくある洋風な家具を羨ましく思っていた。


何故ならただの椅子であれば座れば良いだけで、正座やあぐらなど気にする必要がないからだ。


そして、永遠とも思えたその考える時間は功敦からの「好きなように座れ」という言葉で終わり、結局あぐらをかいて座る。


功敦と再会の言葉を交わし、座布団の前で立ちながら考え、座るまでかかった時間『約10分』。


座ってからも緊張が途切れること無く、天琉はまず何か話そうと思うが、まったく話題が思い付かず、互いに無言での見つめ合いが続く。 


悩んでいると、その緊張感は高校の面接試験の緊張感に似ていると思い、一瞬懐かしさに浸る。


だが途中で我に返り「それとは比べ物にならないくらい緊張するわ!」と自分で自分にツッコミをする。


しばらく悩んでいると、先に功敦が口を開いた。


功敦「今まで… 何をしていた?」


天琉はその質問をされたとき、少しの驚きを感じていた。


何故なら、最初は家出の事で憎まれ口を言われると考えていたからだ。


今まで自分にまったく干渉してこず、一族に関することしか考えていないと思っていた父が、最初に自分の事について聞いてきたことに驚いたのだ。


天琉「チーム作って、仲間たちとワイワイやったり、色んな場所に行ったり、人助けしたり…」


天琉は聞かれたことが嬉しかったが、逆に父の真意がわからず、あやふやに答えを返してしまう。


その事を心の中で後悔し、頭の中で荒れ狂っていると、功敦は次に「何故いきなり帰ってくる気になった?」と聞いてくる。


それに対して天琉は、自分が色んな所に行って、色んな人たちに出会い学んだことから、しっかりと向き合わなければならいと思ったことを伝える。


そして話し合うことで、自分が一族と関係なく生きたいということも伝えると、功敦は「そうか」とだけ言うと、少し沈黙に入る。


しばらくすると、功敦は何かを決心したかのような表情を浮かべ「わかった」と言う。


天琉はそれに希望を抱いたが、それは全く違う形で、提案となって返ってくる。


功敦「なら、私と手合わせをしろ」


その提案を聞いた瞬間、天琉は訳がわからず一瞬思考が止まるが、直ぐに我に返って何故かと聞く。


功敦「武道国人なら、武道国人らしい説得をしろ。手合わせをして、私が認められる技量があるなら許す。だが逆に無ければ、私の言うことを聞いてもらう」


その事を聞いた天琉は戸惑ったが、それしか手がないのであれば、今はそれに従うことにした。


逆に考えれば、手合わせの際に父から色々と聞き出せるかもしれない。


了承の言葉を聞いた功敦は、場所の準備が整うまでの間、再び仲間たちと共に応接間で待つように言い、天琉はそれに従って部屋を出る。


科戸風が案内をしようかと申し出るが、天琉は1人で行くと言って、その場を後にする。


応接間に行くまでの間、天琉は緊張感から解放された反動により、疲労感のようなものを感じて息が荒くなっており、心なしか早歩きになっていた。


その後、皆がいる応接間に戻った天琉は、仲間全員から安否の心配をされ、タコから念のために健康チェックするかと言われ発明品でスキャンされそうになる。


いつもの様子を見ていると、その疲労感はなくなり、無事であることと手合わせをすることになったと伝える。


それを聞いた瞬間、タコとライアンとマキナが屋敷の外に響き渡り、漫画でいうところの吹き出しで「えぇ!?」と出るほどの驚きの声をあげる。


叫んだあと、タコとライアンはその場で驚きを身体で表現するように荒れ狂い、マキナは焦りながら勝率を計算する。


しばらくしてなんとか落ち着き、手合わせをする理由を聞く。


相手が武道国最強の1人だと知ってしまっている全員が一瞬心配するが、焔がその空気を打ち壊す。


焔「天下五剣なんて、最強かなんて関係ない。大事なのは、どちらも最後までやりきれるか、諦めないかどうかだ」


それを聞いた瞬間、全員の中から不安要素が少し取り除かれ、天琉の勝負事への様子を思いだし、きっと大丈夫だという気持ちになる。


そんな中、玲来は天琉に近づいて「天琉は大丈夫なの?」と、いつも笑顔を絶やさない彼女からは想像できないような真剣な表情で質問される。


天琉はそれに1度だけ頷いて返すと、玲来は再びいつもの笑顔になり、天琉の胸に軽く拳を当てる。


玲来「なら私が言うことは1つだけ。 いつもみたいに全力でやってこい!」


天琉「当たり前だ! 親父を認めさせられるかどうかの勝負… 全力でやってやる!」


それを見ていた全員が天琉の元へと近づくと、一人づつ玲来がしたように胸に軽く拳を当てる。


最後にネルが来て、力の加減を間違えてしまい、拳が当たった部分をへこませてしまう。


天琉はこの雰囲気で少し油断してしまい、防ぐことが出来ずに白目を向いて倒れてしまう。


それを見た全員がどうしたものかと焦り、天琉はこれはこれでいつもの日常だと思いながら苦笑いし、そのまま気絶する。


その様子を焔と烏丸は笑いながら見ていたが、あることに気にくわないと思う気持ちがあった。



青龍寺家の武家屋敷のとある部屋では、功敦が科戸風と会話をしていたが、穏やかな様子ではなかった。


科戸風「本当にこんなやり方で良いんですか? もっと他に…」


功敦「もういい… 私はもう取り返しのつかないところにいる。せめて、最後のわがままくらい許せ」


そう言いながら功敦はどこかへと歩いていき、科戸風はそれを呆れたような表情でついていくのだった。


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