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第66話 【風水の街】

再び前進を始めてから数十分経ち、ついに武道国東港町「鉄線」へとたどり着いた。


リベルシップは着陸させる場所がないので、1番安い停泊場を借りて、海面スレスレで浮かせたままにしておいた。


念のために錨を下ろし、防犯機能を作動させておいたので、盗まれる心配はない。


とはいっても、マキナがリベルシップの制御件を握り続けているため、盗まれるようなことは決してないだろうが、念には念をとマキナに言われたので、防犯機能を作動させた。


そんなこんなでようやく武道国に着いたので、早速天琉の実家がある場所に向かおうと思ったのだが、昼ということもあって全員空腹だったため、まずは食事を済ませることになった。


せっかく武道国に来たということで、港町にある飲食店で食事していくことにした。


始めてくることもあって、焔がおすすめする魚料理が有名な店で食事をしたが、どれも絶品で、天琉と玲来は武道国産の米の味に懐かしさを感じていたが、他のメンバーは今までに食べたことがないような旨味に感動していた。


港町というだけあって魚料理がとても充実していたが、デザートを食べる際に寄った甘味所の和菓子は最高だった。


タコ「ワァオ! ヤミー! デスネ!」


ライアン「コレェガ! オウカダンゴというヤツデスカ!」


マキナ「お二人とも、言語がおかしくなってますよ?」


武道国に始めてやってくるであろうメンバーは感動しすぎたのか、ネルは常時目を輝かせながら幸せなオーラを放ち、仲良し2人組に至っては「ジャパニーズ◯◯!」のような外国人みたいな喋り方になっていた。


その後、ちゃっかりお土産屋で色々と購入した後、目的の街に向かって3日かけて徒歩で移動していくことになる。


武道国では列車などの設備が全くもって作られていない。


作ろうと思えば作れるが、歩きもまた強くなるための鍛練だという理由で作っていない。


それから2日間歩き続け、とうとう翌日には街へ着く所まで移動し、2日目の野宿をしていた。


その時すでに殆どが眠りについていたが、天琉だけが起きており、焚き火の前で座って、鼻歌を歌っていた。


天琉は父親に再開するのが明日だと思うと、今までの家族と呼べるかわからない関係とやり取りが頭の中を過り、不安になって眠れなかったのだ。


それ故、少しでも落ち着かせようと、自分にとって思い入れのある鼻歌を歌っていたのだ。


歌詞はあるが、皆の眠りを邪魔するわけにはいかないと思い、鼻歌で歌っている。


しかし、そんな天琉に後ろから突然ライアンが「良い歌だな」と話しかけてきて、驚いた天琉は跳び跳ねてしまう。


ライアン「聞いたことないが、武道国の有名な歌なのか?」


天琉「いや、これは姐さんが教えてくれたんだ。姐さんも教えてもらった歌らしい。でも、この歌を歌ってると… なんか懐かしい気持ちになるんだ…」


天琉は質問を返し、なぜライアンも起きているのかと聞いてみると、明日街に着くことが楽しみで眠れなかったそうだ。


天琉「遠足前日の小学生かよ…」


ライアン「いつまでも少年の心を持ち続けているっていう褒め言葉か? よせよ… 照れるじゃないか」


天琉「褒めてねぇよ!」


その後、ライアンは天琉の隣に座り、眠れなかった理由を聞くと、ライアンは「不安になるなんて、当たり前のことだろ?」と言った。


そういうとライアンは、例え話として自分が銃を使う上で不安になることが多いと話した。


狙う時、撃つ時、引き金を引く時、ライアンは自信満々に撃っているようで、内心当たるかどうか不安になっている。


しかし、それが当たり前のことだという。


ライアン「失敗が怖いから、不安になるから、銃をカスタマイズしてより良いものに、より技術を磨いたりと、不安と向き合うからこそ、出来ることもある」


ライアンの場合は、天琉たちと出会ったばかりのチーム結成試験の時にただの銃で挑み、何の恐怖も不安も持たずにいたから失敗した。


だが、今は常に不安を胸に秘め、タコに協力してもらうことで、様々な性能を持つ武器を揃え、技術を磨くからこそ、皆と肩を並べられている。


ライアン「失敗を恐れて何が悪い? 失敗なんてみんな怖いだろ。怖いものは怖くていい、不安なら不安でいいんだ。ただそれと同時に、それと向き合う力があればな」


天琉はその言葉にハッとさせられ、改めて自分がどれだけ初歩的なことで悩んでいたんだろうと思い知らされる。


天琉「ありがとな。今初めてお前が俺より歳上なんだって思ったよ」


ライアン「おい酷いな! あっ、でもそれって俺が若く見えるってこと?」


天琉「二十歳はまだまだ若いだろうが」


ライアンから大切なことを思い出させてもらい、何気ない会話をしたことで、天琉はいつの間にか安心できており、2人ともぐっすり眠ることが出来た。



翌日、リベルタスと焔一行は2時間かけ、ようやく天琉の実家のある街「竜胆(りんどう)」へとたどり着いた。


この街は大きな山の麓にあることと、大きな湖があることが特街で、どちらも普通よりも霊力が溢れている場所らしい。


街そのものも、とても大きく発展していて、武道国の都の次に発展した街だと言われるほど。


始めてくる者は驚き見とれ、武道国人である幼馴染みは懐かしさに浸る。


そんな街の様子に見とれていたが、全員本来の目的を忘れることなどなく、緊張感をもって、天琉の後ろを歩いて着いていった。


そして、神聖な場所とされる山に作られた階段を上がって行くと、とある大きな門が見えてきて、全員がここが天琉の家なのだと察する。


最初に見た印象と言えば「凄い」としか出てこなかった。


門に龍のようなデザインの家紋が描かれていることに大きく印象を受けたが、それに加えて神聖な山の中に作られているということは、それだけ凄い一族なのだと察することができる。


天琉は一度大きく深呼吸して気を引き締めて門を三度叩くと、小さな門から家臣が着るような和服を着た男が1人出てくる。


出てくる際は礼儀正しく言葉を発し、ごまをするような動きをしていたが、天琉の顔を見た途端、一気に嫌なものを見るような表情に変わり、大きくため息をつく。


すると、先ほど快く向かえるであろう雰囲気とは打って変わって、手で虫を払うような動作をしながら「とっとと立ち去れ」と言ってくる。


「二度と帰ってこなけばよかったのに、その赤い髪を見てるだけで反吐が出る」 


他にも様々な暴言を繰り返すなか、リベルタスは全員この状況に混乱していたが、それよりも怒りの感情が滾らせ、今にでも爆発してしまいそうだった。


それを感じ取ったのか、今まで天琉しか見ていなかった視線を天琉の後ろにいる全員に向けると、突然血相を変えて慌て始める。


天琉以外のリベルタスメンバーは何故だろうと思っていると、家臣のような男は突然素早く礼儀正しくお辞儀をする。


「八神様! よくぞ青龍寺家本家いらっしゃいました!」


その言葉に驚き、天琉と烏丸以外の全員が焔の顔を凝視すると、笑顔でありながら怒りのオーラを放っていた。


「して、本日はどのようなご用件で…」


焔「とりあえずまずは中に入れろ。ここにいるやつ全員だ」


その言葉を聞いた瞬間、男は急いで門を開けようと一度敷地内に戻ろうとするが、焦りすぎたのか小さい扉から出てきたことを忘れていて、思いっきりぶつかってしまう。


一連の様子を見ていて、焔がいったい何者なのだと改めて気になり、男が気絶している間に聞いてみる。


その質問に対し烏丸は、天琉がそれを言っていなかったことを知り、天琉の父親がどのような男なのかということを、詳しく言っていないと察する。


烏丸「アネサンはな、現『天下五剣』の1人じゃ」


それを聞いた途端、玲来とライアンが驚きの声を上げる。


他の4人が驚かないのは、天琉は知っているから驚かず、タコとネルとマキナは純粋にその存在を知らなかったからだ。


タコはライアンが驚いている様子を見て、知っているのかと聞いてみると「いや、知らん」と返答され、全員がその場でズコッとしてしまう。


すると、その存在を知っている玲来は天下五剣について説明する。


玲来「天下五剣っていうのは、武道国で(おおやけ)の場で最強を名乗ることを許されてる、五人の剣士のことだよ。実力を魔獣の危険度で表すなら、A級は間違いないね」


天下五剣とは、遥か昔に武道国を破滅まで追い込んだ驚異を倒したとされる存在を倒した五人の剣士が始まりとされている。


それを受け継ぐのは二通りある。


1つは、天下五剣の始まりの時より、その一族として続くものがあり、その当主となる際に天下五剣となる。


これは一族のものしかなることができないが、強さが認められなせれば、当主にはなれない。


もう1つは、単純に天下五剣のうちの誰かを倒すことだ。


天下五剣を一族として代々続いているのは二枠だけで、残りの枠は純粋な実力勝負を行い、勝つことができれば、倒した者に代わって、天下五剣になることができる。


焔は今から5年前に後者のやり方で天下五剣になった。


一通り説明が終わると、烏丸は天琉の親父は前者のやり方でなったと言う。


その事を聞いた全員が天琉に視線を送ると、天琉は隠すことなく話す。


天琉「俺の一族、青龍寺家は始まりの頃から続く天下五剣の家計で、親父は現天下五剣だ」


再び驚きの声を上げてしまい、同時に天琉が霊力が使えないだけで蔑まれてきたのは、その事が大きく影響していると理解する。


その後、正気を取り戻した男は全員を敷地へといれるために門を開ける。


すると、そこには豪華な屋敷があり、敷地もとても広く、まさに貴族が住む武家屋敷だった。


すると、焔は案内人としてやってきた男に天琉の父がどこにいるのかと聞くが、小さな声で言っていたため、焔以外には聞こえなかった。


焔は話を終えると、天琉の父に伝えが届くまでの間、応接間で待つことになった。



竜胆の街にある湖のとある沖に木があり、その前に和服の青髪の男が立ち、木と湖を眺めていた。


そこに少し強めの風が吹くと、青髪の男に中華風の服を着た緑髪の男がなにかを伝えに来る。


「天琉が戻りました」


その知らせを聞くと、青髪の男は振り返り、厳しい表情をしながら青龍寺家の本家へと向かうのだった。

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