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第63話 【向き合う覚悟】

その日、メンバー全員が天琉の相談に乗ってほしいと言う願いを聞き入れ、リベルタスチームハウスのロビーに集まっていた。


天琉から相談事と言うのはあまりないことや、頼むときの表情から見て、全員なにか大事なことなのだと察していた。


そして、緊張するなかで全員いることを確認した天琉は、相談の内容を話し始める前に、引かないでほしいなどの忠告をする。


それらを全員が受け入れたのを確認すると、天琉は相談の内容を話し始めるため、まずは簡潔に内容を伝える。


天琉「実は… 実家に帰ろうと思っててさ…」


それを聞いた瞬間、その場はまるで時間が止まったかのように静になり、その場にいる全員が固まってしまう。


なにか重大なことなのだと思っていたら、いきなり家に帰ると言うことを聞かされたら、誰でもそうなるだろう。


しばらく静になった後、ライアンが半分冗談で「良いと思うぞ」などの返事をしながらその場を去っていこうとすると、天琉はちゃんと説明するから待ってほしいと、ライアンを慌てて止める。


さすがに冗談だと笑いながら戻ってくると、天琉はまず自分が置かれている状況を説明する。


その内容を聞いた瞬間、メンバーは再び固まったが、直ぐに正気を取り戻して驚きの声を上げる。


その内容は「天琉が家出をしている状態」ということだ。


全員が驚くのも無理はなく、そもそも天琉の性格やイメージからして、家族関係が上手くいっていないとは想像がつかなかったからだ。


普段無表情のネルでさえもそれには驚き、驚きすぎたのか目蓋がいつも以上に開いてしまっている。


その事実を知った後、1番天琉と親しく早くに出会っている玲来に質問の嵐が襲うが、玲来もその事実は初めて知ったことだった。


そして、少し落ち着いたところで、何故家出をしたのかと言うことが気になり、聞いてみると、どのみち話すつもりだったらしく、天琉は家出した理由、自分の素性、そして今に至るまでを明かす。


まず、天琉は武道国でかなり高い立場にある一族の現当主の1人息子らしい。


親は父親だけで、母はとある理由で死んでしまっている。


しかし、両親はどちらも偉大な人らしく、息子である天琉にはかなりの期待が寄せられていた。


天琉自身、生まれて物心がついて(転生して)からその事を知り、自分もそれだけ凄い人になれるかと胸を躍らせていた。


しかし、その中で気がかりだったのが父親だった。


父は自分に対して冷たくするどころか、全くと言っていいほど直接干渉せず、世話も教育係のような人に任せていたそうだ。


天琉は忙しいから構っていられないのだろうと思いながらも、不安を募らせていた。


4歳になって、いよいよ霊力の訓練が始まり、天琉は張り切っていた。


霊力とは4歳になってから自然と出るようになるもので、そのときから修行が始まる。


しかし、メンバーが知っての通り、天琉は霊力が使えなかった。


武道国は実力主義な考え方の者が多く、その考え方は霊力を中心に置いている。


そのために、何度も試した後に使えないと知った途端、教育係は今までの表情からは考えられないほどの鬼の形相に変わり、当時4歳だった天琉を殴った。


天琉は突然の出来事で訳がわからなかったが、そんなこと知るかと言わんばかりに罵倒を浴びせ続けてきた。


「出来損ない」「失敗作」「一族の恥」「無能」などの言葉を浴びせ続けた後、訓練場に天琉を置き去りにして去っていった。


天琉はただただ訳がわからず、その場でもう一度使おうとしたが、使えなかった。


何故だろうと思いながらも、一度家に帰ろうと屋敷に戻ると、周りの視線がとても冷たく、聞こえるように陰口を浴びせてきた。


段々と耐えられなくなり、耳を塞ぎながら天琉は走って自室に戻った。


部屋の中で、何故こんなにも言われなければならないのだろう、ただ生まれてきただけなのにと何度も思った。


その翌日、天琉を殴った教育係が辞めたと知らせが入り、新しい教育係が来た。


しかし、その教育係は最初から冷たい目で自分を見ていて、何かにつけて両親と比較してきた。


その後、その教育係も一週間ほどで辞めていった。


そんなことが何度も続き、不安や劣等感に押し潰されそうになっている時、一瞬だが父と話すタイミングを見つけた。


きっとその時、まだ天琉は父に頼れると信じており、どうすれば良いかと聞いてみるが、その返事は良いものではなかった。


父「お前はなにも考えなくて良い。ただ言われた通りにしていれば良いんだ。わかったな?」


その時の父の表情はとても厳しく、その言葉はとても重いものだった。


それだけを言い、父は天琉の前から去っていった。


その日から、本当に父の真意がわからず、自分のことをどう思っているかを聞くのが怖くなった。


もし、本当に自分のことを回りと同じく、失敗作や要らない存在だと思ってると知れば、天琉は本当に居場所を失ってしまう。


それが怖かったのだ。


その日から、より不安が募っていった。


天琉は転生者であり、何も知らない、わからない世界にたった1人で来て、頼ることの出きる存在が1人もいなければ不安が募る。


それに普通に生まれた子供だろうと、転生者であろうと、自分の人生において一番頼りになる存在であり、心の拠り所である親から、そして周りからそんなことしかされなければ、どんな人間であろうと不安になるものだ。


そんな生活が1年も続き、天琉は今では考えられないほど静かで暗い人間になっていた。


だがそんなある日、救いだしてくれた人がいた。


ここでは師匠と呼ぶことにする。


師匠は今まで出会ってきた人とは違い、実力や一族の子としてではなく、天琉自身を見てくれる人だった。


師匠はとても明るく自由な人で、とても強くて、人助けが出きるカッコいい人だった。


そして、天琉は師匠のある言葉に救われた。


師匠「人生ってのは、自分がやりたいことしてこそだろ? 他人になに言われようが関係ない。自分を貫き通せ!」


その時から天琉は師匠のように、自分がやりたいようにやる生き方をし、誰かの手助けが出きる強い人間になろうと決めた。


そして、天琉は師匠の弟子にしてもらい、最初に刀が必要になった。


天琉は一族で保管している刀の1つを師匠から「もとはお前の家のものだから使っても問題ない」と言われ倉庫に入り、そこからピンっとくる物を手に取れと師匠に言われ探し、そこで今持っている刀(炎牙)を見つけたのだ。


持った瞬間、何かが流れてくるような感覚に襲われるが、苦しいと言うものではなく、むしろ心地良い感覚だった。


しばらくしてその感覚が止み、これだと思い外に出て師匠と合流すると、師匠に指摘されて、天琉の髪が青から緋色になっている事に気がつく。


この事を聞いたメンバーは、以前は青髪だったと言うことを思いだし、その時に今の緋色になったのだと納得する。


師匠曰く、霊獣の霊力が流れ込んだ影響で髪の色が変化したのではないかと言われる。


現に、炎牙と同調して話せることが、天琉の中に炎牙の霊力が流れている証明になっている。


天琉は最初驚き、一族の連中は罵倒してきたが、父と同じ青髪で無くなっただけでも、共通点がなくなって、自分を持てた気分になって嬉しかったらしい。


それから厳しい修行と一族の陰口に耐え続け、今の天琉になることができ、父にはなにも伝えずに中央大陸に航り、リベルタスを結成したのだった。


だが、父親の本心については、ずっと気になっていたが、ずっと後回しにしていた。


しかし、今までの見てきた、体験してきた、学んできたことから、しっかりと向き合わなければいけないと思い、実家に帰り、ちゃんと話すことを決めたのだという。


天琉が全てを話し終えて改めてメンバーの顔を見てみると、ライアンは号泣しており、マキナはハンカチを握りながら泣いていた。


天琉はその事に驚いていると、ネルが珍しく今度何か奢ると言ってくる。


天琉がその状況に混乱していると、その理由を説明してくれる。


ライアン「だってお前…! そんなちっちゃい頃からずっと… 耐えてきたんだろ…!? 泣かずにはいられねぇよ!」


タコ「そうだ! それに俺たち皆、お前にすげぇ恩があるんだからさ!」


マキナ「そう言うことなら有無を言わず相談に乗りますよ!」


その言葉の後にネルが頷き、玲来は天琉にこの前相談に乗るって言ったときに言ってほしかったと言うが、天琉はこの前の遺跡の時に聞いた玲来の言葉で相談しようと思えたと伝え、玲来は満更でもない表情になる。


一旦落ち着いた後、その相談の本題と言うのは家に帰る理由を考えてほしいと言うものだった。


家出をしてしまっている状態で、普通に帰れるはずもなく、どんな理由をつけて帰れば良いのかわからなかったのだ。


メンバーが悩む中、玲来が驚くべき返答をしてくる。


玲来「帰りたいなら、普通に帰ればいいじゃん」


それが難しいから相談していると言うのに、何を言っているのだろうと疑問に思い、天琉は顔を会わせるどころか敷地にさえ入れてもらえないかもしれないと予想した内容を玲来に教える。


玲来「その時は、一緒に帰ろ?」


天琉「どこに?」


玲来「ここだよ、皆がいるこのチームハウス! 今の天琉の居場所は、お父さんのいる場所だけじゃない」


その言葉に天琉は驚かされたが、同時にハッとさせられ、納得してしまう。


そして天琉は何故それを思い付かなかったのだろうと自分に問う。


タコ「玲来の言う通りだ。それにお前、俺に言ったよな? 俺たちは家族みたいな存在だって。なら、その家族がいるこの場所も、お前の帰る場所だ」


天琉にとって普通に帰って、顔も合わせてもらうことすらさせてもらえないと言うことは、完全に用済み扱い、つまり要らないものとして扱われるということだ。


それは天琉が恐れていた、唯一の居場所がなくなると言うことだ。


だが、今は違う。


今は仲間が、受け入れてくれる皆がいるこのチームハウスがある。


炎牙(よかったな、相棒!)


天琉(あぁ、本当に良かった…!)


その事を再確認し、皆の顔を見ると全員が天琉に優しい笑顔を向けており、天琉は改めて仲間たちに感謝し、話して良かったと思い、少し瞳が潤んでしまう。


そして、天琉は理由などつけずに真っ向から家に帰ると宣言すると、仲間たちが1人では行かせまいと、着いてきてくれると言ってくれる。


玲来は久しぶりに武道国に行きたいと言うのもあり、他のメンバーはついでに観光を楽しもうと言うことで盛り上がる。


本来の武道国に行く目的は重めだが、これはこれでいつも通りで、リベルタスらしいと思い安心する。


こうして、リベルタス一行は「武道国オウカ」へと向かうこととなったのだった。


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