第54話 【メティス】
エゴイスとの決着がつき、リベルタス一同は歓喜に包まれていた。
だが、メティスの一言でエゴイスをテクノギアの中から引きずり出そうと言う案が出される。
リベルタスメンバーは全員が出した瞬間にボコると言う意気込みを露にして、拳を構えながらメティスがコックピットを開け、エゴイスを出すのを待つ。
しかし、その期待は次の言葉で消えることになる。
メティス「い… いない……」
タコはメティスのもとに行き、コックピット内を確認するが、言ったとおりエゴイスは中に影も形もなかった
タコ「どう言うことだ。あいつ機体のどっかに隠れたのか?」
マキナ「いえ、テクノギアの中には生体反応は見受けられません」
疑問に思いながらコックピット内を探索していると、脱出装置を作動させた痕跡があることがわかった。
テクノギアには非常脱出転移装置が組み込まれており、エゴイスは魔石が壊される寸前に装置を作動させ、逃げたのだろう。
タコとマキナはその存在をすっかり忘れていたことを悔やみ、全員に頼んで当たり周辺を探す。
転送装置のジャンプ先はそう遠くなく、今いる会社の敷地内のどこかにいるはず。
◆
その頃、エゴイス太は太陽の光さえも照らさない森の中を走っていた。
そこは天琉たちがEI社の敷地内に入る際に使った転移装置がある採掘場の近くにある森だった。
エゴイスは自分の邪魔をしたリベルタスとアンドロイドへの罵倒と暴言の数々を口にしながら走っていた。
エゴイス「次はより強力なテクノギアと、より従順な道具たちを作り出し、貴様らを陥れてやる!!」
リベルタスへの復讐の計画を口に出しながら不気味な笑顔でその場を進んでいると、突然身体に衝撃が走る。
何が起こったのか最初は理解できなかったが、徐々に感覚が明確になっていき、背中に蹴りを入れられたことがわかる。
その勢いは凄まじく、たった1回の蹴りで遠くの木に叩きつけられる程だった。
あまりの威力に内蔵をやられ、吐血してしまうが、エゴイスは自分の血を見て困惑する。
エゴイス「血… 血……? これは、私の血か……?」
「いやぁ、ここまで良い具合に行くとは思わなかったなぁ」
そんな明るい声色を発しながらエゴイスへと近づいていくのは、恐らくその蹴りをいれた本人だろう。
エゴイスは自分へこんな仕打ちをした張本人へと暴言を吐く。
エゴイス「貴様…! 私にこんな仕打ちをするとは、どういうつもりだ!」
「どういうつもり? 復讐に決まってんだろ」
そう言いながら暗闇の中から姿を表したのは、水色髪が特徴的で両腕に機械のガントレットを装備した男だった。
エゴイスはその姿を見た瞬間、恐怖と焦りの感情がわいてくる。
エゴイス「バカな…。 お前は… No.86か?」
ダンジ「その名前で呼ぶんじゃねぇよ。今の俺の名前はダンジだっつーの!」
ダンジは言葉を言いきった瞬間に再びエゴイスの腹に蹴りを入れ、くらったエゴイスは更に吐血する。
呼吸が荒くなり、今目の前にいることがあり得ない存在に困惑する。
エゴイス「お前は… No.88が逃げるときの…… 爆発で死んだはずだ……!」
ダンジはそれを聞いて腹を抱えながら大笑いをし始める。
ダンジ「自分で起こした爆発で死ぬほど、俺はバカじゃねぇんだよ」
そう聞いた瞬間にエゴイスは身の危機を感じて逃げようとするが、ダンジのガントレットの拳により足を折られる。
悲痛な叫び声をあげ悶え苦しむが、ダンジは容赦なく背中を踏みつけ、身動きをとれないようにする。
ダンジ「逃げられると思うなよ? お前はゆっくり、たっぷりと痛みを与えて殺してやる」
恐怖と困惑に脳を支配される中、ダンジは作ってくれたことに恩があると言ってきたため、助けてもらえるのかと思うが、それは思い違いだった。
ダンジはせめてもの情けとして、顔だけを殴って殺すと言ったのだ。
エゴイスは何度も顔を殴られ、痛みに苦しんでいるなか思考を巡らせていた。
何故自分がこんな目に合わなければならないのか、何故選ばれた存在である自分にこんなことが起こるのか、何故命を奪われなければならないのか。
そんな事ばかりを考えながら更に恐怖の念は強くなっていく。
そしてしばらくの間、何度も何度も鈍い音が鳴り響いたのち、エゴイスの意識は完全に途絶えた。
殴り終えたあと、ダンジはかなりの時間と力を使って殴ったのか、息切れをしていた。
そして、呼吸を整えたあとに空を見上げ、自分が逃げることが出来るきっかけをくれた人に言葉を告げる。
ダンジ「命をとるまでの事はあんたは望んじゃいないと思うが、これが俺の復讐であり、あんたへの礼だ。メティスさん」
そう言っていると、後ろから聞いたことのある声で自分のナンバーを言ってくる男がやってくる。
タコ「86…? No.86だよな!?」
タコがダンジの事を知っているのは、彼がエゴイスが作り出したたった2体のホムンクルスの戦闘特化型だったからだ。
ダンジ「久しぶりだな。No.… いや、今はタコだったな。俺も今はダンジってんだ」
あまり関り合いの無かった2人だが、存在は知っていたため、お互いに会えたことに喜びを感じていた。
だが、タコはその奥にあるエゴイスの無惨な死体を見て、その喜びは少し消え去り、困惑が出てくる。
ダンジは迷いなく自分が殺したことを明かした。
ダンジ「間接的だが、俺もお前と一緒でメティスさんに救われた身だ。だが、お前ほど俺は優しくも賢くもない。こうするぐらいしか思い付かねぇよ」
そう言うとダンジはエゴイスの死体を頭をもって引きずっていく。
死体さえも自分で処理したいらしい。
奥の闇の中に消えていくが、消える間際にタコに言葉を告げる。
ダンジ「俺は俺で幸せだ。お前と同じく、仲間が出来たからな」
しばらくタコは唖然としていたが、マキナに声をかけられ正気に戻り、全員と合流した後、何があったかを話すのだった。
◆
その後、メティスからの提案で、疲れた身体を癒すためにも、メティスの基地で寝泊まりさせてもらうことになった。
しばらく歩き、たどり着いたそこは全焼している一軒家のような場所だった。
それを見て困惑していたが、タコはメティスと言うロボット名を聞いた時点でまさかと思っていたが、その家を見て確信した。
そこはタコがかつて人間のメティスと共に暮らした家だった。
さすがにそこで寝るわけもなく、地下にある研究所で寝泊まりする。
地下ながらも生活するには十分な設備が整っているため、寝泊まりするには問題はなかった。
その後、食事をしながらと言うことで、人間のメティスが開発した自動で食事を提供する装置で好物を用意し、話を聞くことにする。
ロボットのメティスの正体は、人間のメティスがタコを逃がすためにEI社に乗り込む前に作っておいた、人工知能を搭載したアンドロイドだった。
タコは3ヶ月ほどすぐには来なかったのは、アンドロイドを作っていたからだと言うことを理解する。
メティスはタコを救い出すと言うことは、自分の死んでしまうかもしれないと思った。
故に、死んだ後も自分が望んだ人助けをするために、正義のアンドロイドを作り出したのだ。
このアンドロイドはメティスの死がトリガーになって起動するようにできており、条件が達成されて起動したと言うわけだ。
メティスがアンドロイドにプログラムした願いは3つ。
・人を守るヒーローになってほしい
・自分の名前を名乗ってほしい
・タコがピンチのときには手助けをしてほしい
と言うものだった。
メティスは起動してからその願いの通りに行動し、今に至ると言うわけだ。
それを聞いた全員がメティスという1人の技術者に憧れと敬意の気持ちを持ち、タコはメティスらしいと笑顔になる。
その後、少し沈んだ雰囲気から一変し、食事を楽しんだ後、いざ眠る直前に玲来がとある提案をする。
玲来「皆でトークしようぜ!」
天琉「いや寝ようや」
玲来「お泊まり会の寝る前と言ったら恋バナ、トークに決まってんでしょ!」
それを聞いて一理あると思った全員が賛成し、結局トークをすることになった。
今夜のトークの内容はマキナの事についてであり、これからどんな事をしたいか、心境などを聞く回である。
玲来はまず年齢的には幾つなのかと聞いたところ、1歳だと答えられてタコ以外が驚く。
次に何をしたいかを聞いてみたところ、エゴイスに隠れて調べていたことがあり、動画配信がやってみたいとか、アニメやドラマを見まくりたいとか可愛い内容だった。
そんな会話を楽しんでいる中、結局のところなぜタコが自分からエゴイスの元へ行こうと思ったかについてネルが気になったらしく、タコに質問する。
どうやら、玲来と依頼で未来国に来たときに訪れたゲームセンターで、玲来がトイレに行った際にEI社製のロボットに話しかけられたらしい。
その時、エゴイスから直接通信で「おとなしく会社に戻れ。さもなくば銀髪の女や他の仲間がどうなるかわからんぞ?」と言われたらしい。
タコはその時、玲来と他の皆を巻き込まないため、そして自分のだけで決着をつけるため、「玲来が帰るまでの間は自由にさせてもらう」という条件をつけ、玲来と別れた後にEI社へ向かったらしい。
結局のところ仲間全員を巻き込むかたちになってしまったが、1人で成し遂げられることは少ないと、タコは改めて学んだようだ。
◆
その後、色々と話して楽しみ、リベルタスはとうとう眠りについたが、タコだけがまだ起きていた。
それには理由があり、地下の研究所にはいる前、メティスに眠る前に1人で見てもらいたいと言われ渡されたメモリの中身を見るためだった。
親切にも人間のメティスが使っていた作業室を貸してくれるそうだ。
そんな訳でタコはメティスの作業室へと入り、机に置いてある端末の前にある椅子に座ろうとすると、端末の横に自分の幼い頃の写真を発見する。
それを少し見た後、早速端末にそのメモリを差し込み、内容を確認する。
そこには日記のようなデータが入っており、それはよく見てみると、タコとメティスが暮らしてきた日の数と同じ日数分あった。
その1つを開いて見てみると、その中には写真とメティスが打ち込んだであろう文字があった。
ーーーーー
1日目
EI社からちびっこと駆け落ち!
職を失ったのは痛いけど、可愛い子の未来のためなら問題なし!
名前が数字じゃダメだから、8ってことで「タコ・オーシャン」と名付けた。
56日目
大分この生活に慣れてきたけど、まだどこかよそよそしい。
でも好きに発明をさせてみると、顔には出さないけどとても楽しそうにしてる!
私も張り切れちゃう!
93日目
初めて笑顔を見せてくれた!
失っていた心を取り戻してくれたんじゃないかって思えて、とても嬉しかった!
思わず泣いた
183日目
もう家族同然!
私も息子だと思ってるし、母親だって言ってもらえたことが嬉しい!
初めて母さんって呼んでくれたときはまた思わず泣いた
ーーーーー
それはタコと共に過ごしてきた記録を事細やかに記録した日記だった。
それを見ていてタコは様々な感情が溢れ、それを見るのに夢中になり、あっという間に最後まで見終える。
すると、最後に「メッセージ」と書かれた動画があり、それを再生する。
その映像にはメティスが1人で映っていた。
メティス『やぁ、タコ。これを見てるってことは、私が死んでるってことだろう。
でも、私はきっと悔やんだりなんかしてない。
最愛の息子を守って死んだんだろうから。
でも、1つ悔やみがあるとするなら、君ともう暮らせないってことと、あることを伝えられなかった事だ。
実は、私には実の息子がいたんだ。
でも、その子は生まれがら病弱で、私はなんとか助けようとしたけど、物心がつく前に他界した。
夫も事故で死んで、死にたいって思ったよ。
でも、そんなこと私がすることじゃないって思い直した。
残された私に出来ることは、私の息子のように、未来ある人と子供たちの未来を守るために、発明をし続けることだって。
1つだけ誤解しないでほしい。
私は君を実の息子だと思ってる。
決して死んだ息子の代わりなんかじゃない。
血の繋がりが無くても、生まれ方が違っても、君は私の最愛の息子だ。
もっと一緒に暮らしたかった。
もっと遊びに行きたかった。
今そんな事言っても遅いけど。
君にオーシャンっていう名前をつけたのは、母なる海がいろんな生命を作ったみたいに、君に色んな発明を作れる子になってほしいと思ったから』
タコは少し泣きそうになるメティスを見ていて、押さえてた涙が溢れそうになる。
そしてとうとうメティスがこの後タコを救いに行かなければと言い、動画を切ろうとするが、最後に言葉を贈る。
『愛してるよ! タコ!!』
その言葉を最後に動画は切られたが、その言葉を聞いた瞬間、タコは涙と声を押さえられず、泣きじゃくる。
そして、今では届かないであろう言葉を贈る。
タコ「俺も… 大好きだ…! 母さん……!」
その頃、その光景を外から起きていて聞いていたリベルタスは、玲来は少し涙を浮かべながらも優しい笑顔を浮かべる。
ライアンは号泣しながらタコをハグしに行こうとするが、ネルが声が漏れないように口を押さえ、ライアンを引き止める。
天琉は一連の光景を見ていて、なにかを考え込んでいるようで、炎牙に心配されるが、すぐに大丈夫だと答える。
天琉(ただ、仲のいい家族って良いなって思ってさ…)
炎牙(相棒… やっぱまだ気にしてんのか)
天琉(あぁ、俺も向き合わないといけないのかもな)
ーーーーー
ーーー
ー
その翌日、リベルタス5人と1匹は新たな仲間であるマキナを連れて駅の前にやってきており、メティスはそれを見送りに来ていた。
メティス「いつでも来てください。そしていつでも頼ってください!」
それを聞いた全員が頼りにしていると言い、少し話した後、大陸横断列車に乗り込む。
後からわかった話だが、EI社は今でやってきた悪事が何者かによって流出し、倒産したらしい。
タコによると、ダンジがやったのではないかと見ている。
色々なことがあったが、リベルタスは新たな仲間を連れ、中央都市周辺平原にある我が家へと帰っていくのだった。




