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第53話 【利益のための反抗】

戦闘開始よりしばらくたち、天琉とライアンの登場によって、小型の数をかなり減らすことができ、テクノギアとの戦闘もかなりやりやすくなった。


しかし、テクノギアへ対する攻撃は決定的ではなく、天琉もネルも間接部位を重点的に攻撃するが、破壊までには至らない。


エゴイスはその状況を見て、所詮は口だけの愚かな劣等種なのだと馬鹿にする。


その事に対して天琉は「好きなだけ言ってろ!」とだけ返す。




タコはEI社のメインコンピューターに自身の端末を繋げて何らかの作業を無我夢中に行っていた。


端末の画面には素人では到底理解できないほどの文字やら数式やらのデータが無数に並んでおり、それらを潜り抜けるように作業が進んでいく。


そしてそれらを幾数回と繰り返し、ようやく最後のプロテクトを解除する。


その事を確認したタコは収納空間からゴーグルのような機械を取り出す。


それはタコが発明した「電脳ダイバー」という物で、電子機器に繋いでゴーグルを装着すると、電脳世界、つまりコンピューターの中に仮想世界として入ることが出来るのだ。


わざわざ電脳世界に行く理由は、テクノギアから直接マキナを自由にしなくてはならなかったからだ。


今現在、マキナはテクノギアの頭脳という存在として使われている。


だがそこにマキナの意思はなく、あくまでマキナの演算能力などの機能のみを使っており、今は拘束されている状態だ。


プロテクトを解除するのは遠隔で行えるのだが、肝心なマキナはテクノギアの一部となってしまっている。


そのため、テクノギアの電脳世界に入り、マキナを直接拘束を解除し、そこから連れ出す必要がある。


タコはそれを実行するために、電脳ダイバーを装着し、安全な場所で仰向けになって起動させ、電脳世界へとダイブする。



ーーーー


起動した途端に光が広がり、少しの間目を閉じていたが、光が弱まり目を開けてみると、そこは自分の端末の電脳世界だった。


そして、そこからメインコンピューターへと繋がっているトンネルを見つける。


あくまでもテクノギアと繋がっているのはメインコンピューターのため、ここを通らなければならない。


しばらくトンネルの道を飛んでいくと、メインコンピューターへとたどり着く。


そこには大量のエゴイスの顔やらロボットのデータなどが空中に浮かび上がる空間へとたどり着く。


どちらかと言えばエゴイスの写真の量の方が上回っている。


タコ「なんとか入れたみたいだな。にしてもこんなところまで自分の顔写真とは、逆に感心するな」


タコはそんなことを言いながらも、次にテクノギアに通じるトンネルを見つけ、そこに飛び込む。


無事にテクノギアの電脳世界へとたどり着き、マキナがいると思われる場所へと向かおうとする。


しかし、突如目の前にデータの文字の1文字1文字が集まり、複数のアンドロイドが現れる。


ロボット「不法アクセス、確認。排除」


アンドロイドたちは自分達が現れたときと同じような方法で剣や銃などの武器を装備するとそれをタコに向ける。


このロボットたちは、許可無くテクノギアの外部から電脳世界に来た者に対処するための、いわゆる白血球のようなもの。


タコ「やっぱ出やがったな。だが、退くわけにはいかねぇ!」


タコはその存在があることを知っていたちめ、データとして登録しておいた自分の武器である機械の両剣を装備し、アンドロイド達との戦闘を開始する。




たった1人で、暗く何もない空間で、鎖に繋がれた黒髪の少女が座り込んでいる。


そこで少女は自分がどれだけ弱く、無価値な存在なんだろうと思考してた。


だがそんな中、楽しかったと思えるメモリが現れ、その事を踏まえた自分の今までを振り返る。



ーーーー


エゴイスに作られ、エゴイスの利益のためだけに作られ、自分から何かをすると言うことが出来ない日々。


エゴイス自身も「常に私の利益のためだけに」という言葉を口にしていた。


何も疑問に思わないまま、そんな日々を過ごしていたある日、資料整理をしていたとき、とあるホムンクルスのデータを見つける。


名はNo.88と言い、2度もEI社から逃げ出した知能に特化したタイプの個体だった。


機能面のデータを見終えた後、1度目の逃亡の際の調査資料という写真のデータがあった。


マキナ「メティス。タコ?」


それからマキナは2人の事についてのデータをよく見るようになった。


エゴイスが見ない間を見計らって、何度も同じ写真を見る事もあった。


それらを見るうちにマキナは、喜び、悲しみ、家族、幸せなどに触れ、それに憧れを持つようになった。


それを見てからマキナは見る前よりも、より人間に近い会話が出来るようになっていた。


しかし、それを手に入れることなどエゴイスが許すはずがなく、その思いをずっと言えずにいた。


そんなある日、データにあったタコがやってきたのだ。


マキナはエゴイスにタコの監視を命令されたときにチャンスだと思いタコに会話をしてみることにした。


その時間はとても有意義で、楽しく、今まで打ち明けることのできないことをさらけ出す、とてもよい時間だった。


そんなある日、タコはマキナに共にエゴイスに反抗することを提案する。


マキナ「私は、マスターに作られた身です。

そんなこと……」


マキナはエゴイスにより作られてからずっと支配されており、自分がやりたいことなど、ましてな願いを持つことさえ許されなかった。


反抗するなどと言う考えすらも持ったことがなかった。


タコ「あのなぁ、別にあいつに従わなくても良いんだ。むしろあんなやつに従うよりやりたいことやった方がいいね。まぁ、昔の俺もお前と同じだったけどさ……」


マキナはその言葉に驚き困惑していた。



タコ「いいか、俺が今から言うことをその立派な記憶のメモリに記しとけ。人工的に作られた者だろうがなんだろうが、お前はお前だ。お前自身の頭で考え、自分自身の思考に任せて、お前がやりたいようにやれば良い」



マキナはその言葉を聞き、今まで許されることのないことを許してもらったことに喜びを覚える。


マキナ「本当に私を… 自由にしてくれるのですか?」


タコ「あぁ、約束する。俺がお前を自由にしてやる」



ーーーー


その約束を思い返しながら、やはり届かない願いなのだろうかと思いながらも、心の何処かにはきっとと言う思いがあった。


そんなとき、暗闇の世界に一筋の光が差す。


その光の正体を見ようとその筋の先を見てみると、そこには今思い出していた、ずっとどこかで来てくれるのでは無いかと思っていた存在が、すこしボロボロになってそこにいた。


マキナ「どうして……」


マキナはその存在を見て、電子生命体という作られた感情でありながらも、本物の喜びの涙を流す。


タコ「約束したろ? 自由にするってさ」


そう言うとタコはマキナを拘束していた鎖を両剣で切り、拘束を解除する。


鎖は切られた途端にデータのようになって消えていく。


タコは優しい笑顔で手を差し伸べ、「行こう」とだけ口にすると、マキナは涙目の満面の笑顔で「はい!」と答え、タコの胸に飛び込むのだった。




ライアンは一瞬の隙をつかれ、小型に拘束され、攻撃されそうになる。


エゴイスはまず1人を始末できると喜んでいると、突然警報音が鳴り響いたと思いきや、小型が動かなくなる。


困惑していたエゴイスだったが、メティスとライアン以外の全員がそれを待っていたと言わんばかりに笑顔を見せる。


エゴイスが原因を調べると、頭脳であるマキナの存在がテクノギアからいなくなっている事に気づく。


これでは小型を操ることも、ミサイルを狙った場所に撃つことも出来なくなり、テクノギアの物理攻撃しか出来ない。


エゴイス「バカな……! あのプロテクトを破り、防御システムまでも掻い潜ったというのか!?」


玲来「タコも言ってたけどさ、あんたはナメプしすぎなの!」


そう指摘されたエゴイスはより怒りの言葉を放ち、遂に腰に差していた剣を抜き、破れかぶれに攻撃し始める。


その攻撃は単純で、全員が簡単に避けることが出来た。


そんな時、リベルタスのメンバーにとって見覚えのある両剣がブーメランのように飛んできて、テクノギアの身体に傷をつける。


エゴイスは何事かと思い、リベルタスとメティスは待ってましたと言わんばかりに、両剣が戻っていく方向に視線を送る。


そこには、靴底からジェットようなものが出ているブーツをはいた水色髪の少年が飛んでいた。



タコ「エゴイス! お前は俺たちが倒す!!」



エゴイスはその姿を見るな否や怒りに満ち溢れた怒号を飛ばすようにタコの名前を叫ぶ。


それは、これから始まる決戦の開幕の合図とも捉えることができた。


その怒号を聞いたと同時にタコはもう一度両剣をテクノギアへと投げ、右足を攻撃する。


この程度の攻撃ではどうにもならないと思っていたエゴイスだったが、突然爆発音が聞こえ、テクノギアが右に傾く。


困惑しながら右足を確認すると、右足は爆発し、使い物にならなくなっていた。


何故だとエゴイスが思考を巡らせていると、あることが思い浮かぶ。


それはタコが来る前までの戦闘だ。



『天琉とネルは何故わざわざ間接部位だけを攻撃し、致命的な攻撃をしなかったのか?』



エゴイス「まさか!!」



そう、天琉たちがそんな攻撃を続けていたのは、タコが攻撃したさいにすぐに壊せるようにするためだった。


それがわかったエゴイスはリベルタスに対して罵声を浴びせる。


天琉「これは俺たちの決着じゃなく、タコ達の決着だからな! 最低限のサポートに徹するのは当然だろ?」


それでも、タコの武器で壊せるギリギリの強度を残してある。


そして、タコは次に左足に両剣を投げつけ破壊しようとする。


それをエゴイスが許すわけがなく、右手に持つ剣で両剣を叩き落とそうとするが、両剣はいきなり軌道を変え、テクノギアの剣を避けて左足を切りつけ爆発させる。


エゴイスは戻っていく両剣を見て疑問に思った。


何故いきなり軌道を変えたのか、そもそもタコは戦闘するための運動能力は普通より高い方だが、そこまでの投擲能力は無く、右足の時のような正確な攻撃はできないはず。


そんなことを考えるが、答えはすぐに出た。


軌道を変えたり、どう投げれば的確な位置に当たるのかという演算能力を持つものは、テクノギアから消えた存在にしか出来ないことだ。



エゴイス「貴様か! マキナ!!」



タコがここに来る前にマキナはタコの端末と両剣に入っていた。


それによってどう投げれば良いかを指示し、攻撃された際にはマキナが軌道修正して攻撃することが可能となる。


エゴイス「マキナ……。 作ってやった恩を忘れたか!!」


マキナ「忘れたことなどありません。私のメモリにはしっかり保存されていますよ。貴方が教えてくれたことも」


エゴイス「なに…!?」


マキナ「貴方の教えはもう全て削除するつもりですが、今この瞬間にだけ、この教えを使わせてもらいます」


それを聞いたエゴイスは自分がマキナに教えてきたことを思い浮かべたと同時に、冷や汗をかく。



マキナ「私は私の利益(未来)のために、貴方に反抗する!」



それを言い放ったと同時にタコはもうすでに演算が完了し、伝えられていた投げ方で左腕に両剣を投げる。


その言葉により怒りと焦りを覚えたエゴイスは剣を振り回すが、マキナは即座に修正して交わし、左腕を切りつけ破壊する。


右腕も同様に破壊し、テクノギアは膝をつけ、仰向けになった状態になり、等々エゴイスはなす術が無くなってしまう。


タコはそれを確認し、両剣にエネルギーを蓄積させる。


タコ「さて、あとは動力源の魔石を壊せば終わりだ!」


エゴイス「そんなこと…! させるはずがないだろぉ!!」


そう言ってエゴイスは背中にあるミサイルをタコに向けて発射しようとするが、操作画面に発射不能という知らせが出る。


その原因はマキナであり、テクノギアから抜け出す際にミサイルの機能だけを破壊しておいたのだ。


見守っていた全員がタコに向けて応援の言葉を掛け、タコはそれに答えるように叫びながらジェットの勢いをさらい上げてエゴイスに光る刃を向けながら突進する。


エゴイスは絶望していた。


自分に障害などあるわけがないのに、異質な者達が来た瞬間に、全てが崩れ去ったことに。


もう打開策がなく、絶望している間にタコはさらに近づき、もう間近と言うところまでたどり着く。


エゴイス「どこまで私の邪魔をする! No.88!!」


タコ「頭が良いならいい加減覚えろ! 俺の名前は『タコ・オーシャン』だぁ!!」


タコの全力の叫びとエゴイスの抵抗の叫びは辺り一面に広がった。


タコ「チャージフォトンブレード!!」


そう言った瞬間にタコの刃はテクノギアの腹に突き刺さり、中にある魔石を砕いた。


そして、その場にいる全員に聞こえるように、端末からマキナがテクノギアの完全停止を告げる。


それがわかった瞬間、全員がタコのもとに駆け寄り、祝福の言葉を送る。


タコの事をもみくちゃにするように称賛の言葉を浴びせていると、タコの後ろから声が聞こえてくる。


ライアン「ダァァァゴォォォ!」


泣きじゃくりながらタコの名前を叫びながらライアンがやってきてタコに抱きつく。


ライアン「やっだな! これでまだいっじょにいられるなぁ!!」


タコ「落ち着けって! 鼻水付いてるって!!」


タコは抱きついてきたライアンを振りほどくとタコ、そしてリベルタスメンバーはライアンを安心させるべく優しい言葉をかける。


そしてタコはライアンのいつも通りの雰囲気と、いつものリベルタスを見て、ふと無意識に言葉を声に出していた







          「ただいま」

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