第51話 【出動! 正義のロボット!】
EI社の1つの部屋で苛立ちの表情を露にし、己の利益に損害を与える者達への怒号を繰り返す男が1人いた。
その押さえきれない怒りを発散するために周りの物に当たり散らし、己の身なりを整える鏡は割れ、己を撮った写真が入っている額縁は壁から落ち、あらゆる物が壊れていく。
それはまるで彼の中の何かが壊れていく様子を体現しているようだった。
エゴイス「ふざけるな…。私よりも劣るような劣等で下等な醜いやつらが…。 私の完璧な策略を上回ったとでも言うのか? そんなことが……! あってたまるかぁぁぁ!」
そう言うとエゴイスは自室から出て何処かへと向かっていった。
お気に入りと言っていた刀を残して。
炎牙(えっ、俺放置!!?)
◆
その頃タコはマキナが接続されているロボットのコンピューターに侵入するために、必死になってプロテクトを解除していた。
メインコンピューターとロボットはネットにより繋がっていて、そこからデータを移行させることが出きる。
切り離しだけならメインのコンピューターを使えば良いのだが、今回は自分の端末に移さなければならないので、プロテクトをどうにかして入るしかない。
あともう少しと言うところまで来たところで、地震のように少し揺れ始める。
何事だと思っていると、タコが繋いでいる端末にとある報告が入る。
その報告を見たタコはその内容が信じがたかったが、やりかねないと言う考えもあり、肝を冷やす。
それは、エゴイスが今回の計画のために作り出した「エゴイス・テクノギア」が、戦闘態勢で出動するという報告だった。
◆
その頃、サブコンピューターを破壊した3人は一度合流しており、天琉と玲来の武器を取り戻し、エゴイスを捕まえるためにエゴイスがいる部屋に向かっていた。
しかし、突然起きた揺れに困惑し足を止める。
3人が困惑していると、近くにあったモニターにタコが映し出され、エゴイスがロボットを起動させ、街で暴れるつもりだと言うことを伝えられる。
それを聞いてより急がなくてはならなくなり、天琉はネルとマインと玲来には先に向かってもらうように頼む。
玲来「私の刀よろしくね! あの刀スッゴい大事なやつだから!」
と言うのも、あれは軍人になったばかりの頃に父から貰った大切なものだからである。
天琉が任せろと言うと別れ、ネルとマインと玲来は外に向かい、天琉は炎牙を取りにその足をより早める。
◆
EI社の敷地内の工場には、突然アナウンスが流れ始めていた。
『開くゲートにご注意ください。エゴイス・テクノギア、出動します』
窓の外に見えていた道路の交差する場所の中心がゲートのように開き、その中から巨大なロボットが姿を表す。
身長は約12メートルで、体格はゴーレムよりもゴツく、腕はそれよりもゴツい。
背中には飛ぶためのジェトと、マルチミサイルを放つであろう者が装備されており、剣のようなものが腰に差さっている。
その中にはエゴイスが搭乗しており、その中でリベルタスに対しての責任の押し付けをしていた。
エゴイス「貴様らが悪い…。私の邪魔をしたのが悪いんだ……。もうどうでも良い。こうなったら、貴様らが言う大事な命を消し去ってくれる!」
その言葉を言ったあとに狂ったかのように笑い声を出し、エゴイスは人が多く密集している中央に狙いを定め、ジェットを起動させ飛び立とうとする。
だがそれが叶うことはなく、テクノギアはミサイルによる攻撃を受け、バランスを保てなくなり地面へと倒れる。
その攻撃に更なる怒りを覚え、何者だと叫ぶと、その返答はすぐに返ってくる。
「騒ぎを聞き付け、貴方の成す事を、貴方の企みを打ち砕くべく参上しました者です」
その姿はとてもユルい感じのアンドロイドだったが、とても正義感に溢れており、絶対に引かないと言う意思があった。
更に彼はただのアンドロイドではなく、この未来国にリベルタスの1人の命を救った者だった。
メティス「人々の平和を守ることこそ私の指命!」
エゴイス「たかが一般のアンドロイドが私に歯向かうなど、身のほどを知れ!」
そう言うとエゴイスは演算機能で狙いを定め、背中部分に装備されているミサイルをメティスに向けて発射させる。
しかし、メティスもまた自身の解析機能を使いそれらを避け、強烈なパンチを食らわせると、テクノギアは少しよろめく。
自分最高傑作と言っても過言ではないロボットが一般のアンドロイドにダメージを与えられたことにより苛立ちを覚える。
そこから、互いの機能をフル活用した戦闘が始まった。
ミサイルを撃たれたならば撃ち返す、もしくは避けるかを繰り返す。
エゴイスは次の手段として、念のためにテクノギア内部に待機させてある小型ロボットたちを出動させる。
メティスは数の暴力と言う卑怯と言えるがズル賢いとも言える手段に手間取ってしまい、エゴイスに近付けなくなる。
その隙にエゴイスはメティスに致命的な一撃を与えようとミサイルの狙いを定める。
いざ発射しようと笑みを浮かべたその瞬間、テクノギアを突如揺れが襲い、少しふらついてしまう。
そのせいで狙いが外れたミサイルは、自分が出した小型のロボットたちの複数を破壊してしまう。
今起こった揺れの原因を調べると、そこには1人の黒髪の女性が大きな槍を持って地面にゆっくりと落ちていく姿があった。
ネル「間一髪」
エゴイスは今の一撃はネルの物だと考え、その馬鹿げた力に困惑しつつも、魔族だから当たり前と自分に言い聞かせ、平常心を保とうとする。
だが、そんな暇は与えないと言わんばかりに銃声とロボットが壊れていく音が聞こえてくる。
その方向を見ると、そこにはピストルで小型のロボットを打ち落としつつ、近寄ってきた個体もタコに作ってもらった刀で切り裂いていた玲来がいた。
元軍人なだけあってある程度の射撃スキルはあるが、銃は確実ではないことが多いため、基本的には刀で戦う。
使うとしても、今回のように遠くにいる敵を引き付けるためにしか使わない。
ちなみにこの銃は軍事国から出て、天琉たちが乗る帰りの船に乗るときに、ルドルフから別れの品として、一丁だけ貰っていた物だ。
今までは使い道がなく申し訳なかったが、ここに来て役立てることが出来ることに喜びを感じていた。
玲来「ありがとね、ルドルフさん。やっと役立てられるよ」
左手に銃、右手に刀を持って巧みな動きを見せつけ、小型を次々と倒していく。
なぜ二人がこの短時間で外に出られたかを説明するには、時を遡る必要がある。
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建物から出るために走っていると、ネルが偶然テクノギアが見える窓を発見。
わざわざ出口まで行くのでは時間が掛かるので、時短の為に窓を槍で壊して外に飛び出るという案がネルから出る。
玲来「いやいや! 時短になるだろうけどさ! ここ10階くらいの高さだよ!? 時間じゃなくて寿命が短縮されちゃうって!」
そんなことを言っている玲来を問答無用と言わんばかりに腕を引っ張って外に飛び出す。
約10階からの落下だったが、壁に槍を突き刺し、落ちるときの勢いを減速させながら安全に下に到着。
ちなみにこれは、建物に傷をつけると言うエゴイスへの嫌がらせも兼ねている。
玲来は落ちるとき叫んでいたが、無事に怪我なく着地したことを確認したとき、ネルに感謝の言葉を述べる。
その後、全力疾走でテクノギアに近づき、メティスのピンチを察し、スピードを落とさずにジャンプし、そのままの勢いでテクノギアを槍で殴る。
玲来はテクノギアの相手は自分には無理だと判断し、小型のロボットを倒すという自分に出来る最大限の戦闘を行うことにするのだった。
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エゴイスはその状況により一層怒りのマグマは温度を高めていき、もう噴火寸前というところまで近付いていた。
◆
その頃、天琉はようやく炎牙と玲来の刀が置いてある部屋の扉が見えてくる。
その扉を遠くから見てエゴイスの部屋だということがわかった。
何故なら扉にはエゴイスの顔写真が貼られ、それを際立たせる装飾が施されていたからだ。
それを見てイラッときた天琉は時短という理由をつけて減速せずにその勢いを利用し、エゴイスの顔面の中心部分にドロップキックで扉をぶち破る。
そして武器があると思われるエゴイスの部屋の中に入ると、その室内は悲惨そのものだった。
物は散乱し、家具は倒れ、さらにはエゴイスの写真さえも破られた状態で放置される部屋が目に飛び込む。
天琉「あいつも相当追い込まれてるみたいだな」
エゴイスの精神状態が手に取るようにわかる部屋の状態を見ていると、天琉の頭の中で声が響き渡る。
(あ…… ぼ… う………)
天琉「ん、なんだ?」
天琉はなにやら聞き覚えのある声にまさかと思い、その声の主の存在を感じられる場所に行き、本が散乱している場所の下を探る。
すると、とても見覚えのある刀が2本出てくる。
1本は玲来の物で、もう1本は炎牙でだった。
炎牙は見つけて貰ったと同時に泣き声にも聞こえる喜びの声を発する。
炎牙(あ"いぼぉ"ぉ"ぉ"~!!)
天琉「炎牙!? お前こんなとこにいたのか!」
炎牙は先程の揺れが原因で本棚が倒れた際に散乱した大量の本の下敷きになっていたのだ。
炎牙(本当に大変だったぜ! あのクソ野郎にモチベーションだのなんだのと言われて写真撮るための道具にされて! 挙げ句の果てに放置されて! そしていきなり揺れが起きて、その衝撃で倒れてきた本棚から出てきた本に埋もれて!)
天琉「お、おう……。大変だったな」
天琉は頭の中での会話を通して炎牙を慰めながらも炎牙を腰にさし、今の現状を伝える。
すると突然エゴイスの部屋にあるモニターにタコが映る。
内容はもう少しでテクノギアに侵入できるというもので、もう少しだけ耐えてくれというものだった。
天琉は自分もすぐに行かなければという思いが強くなり、時短のためにどうにかならないかとタコに聞くと、とある案を出してくれる。
それは、その部屋から繋がっているとある場所にあるものだった。
◆
ネルと玲来が戦闘に加わってしばらくたち、戦況はエゴイスが少し押されぎみと言う具合だった。
玲来の巧みな動きとマインの攻撃により小型ロボットたちは次々と破壊され、テクノギアは空中からミサイルやパンチなどの攻撃を加えるメティスと槍の攻撃を繰り返すネルにより、段々と傷が付いていく。
しかし、メティスもさすがに動力の消費が激しく、少し翻弄され始める。
ネルはまだまだ行けると言う感じだったが、メティスのアシストを行うという作業が増え、より戦いにくくなる。
そこをエゴイスは怒りながらも見逃すわけもなく、小型にメティスの拘束を指示する。
当然ネルはそれを止めようとしたが、エゴイスが操縦するテクノギアに妨害される。
メティスは複数体に拘束され、1体にビーム攻撃をされそうになる。
それを見た玲来は射撃でビームを撃とうとする小型を撃ち落とそうとするが、他の小型たちにそれを阻まれる。
エネルギーの溜めがもう少しで完了しそうになり、エゴイスはメティスを消せることに笑みを浮かべるが、突然警告音が操縦室に流れる。
その内容を確認すると、レーダーが急速接近する飛行物体を捉えたからだった。
カメラを向けると、そこには来るはずのない物が迫ってきていた。
その急接近してくる物の正体は、エゴイスが自作自演ヒーローをした後、表彰式に呼ばれた時にカッコよく登場するために作ったバイクだった。
それもかなりボロボロの状態で。
しかも、それには怒りの原因の1人である天琉が乗っていた。
天琉はタコに移動用としてこのバイクに乗ることを提案され、自分のために作ったバイクを怒りの原因が乗ってきたらどう思うだろうという嫌がらせの意味も込めて乗ってきたのだ。
初めての操縦でよくわからず、フルスピードでしか走らせることができず、ここに来るまでにあちこちでぶつかってしまっている。
その現状で天琉は「アニメのキャラってなんでぶっつけ本番で乗ったことないバイク乗りこなせるんだろう」と言う疑問を口に出していた。
だが、遠目からメティスが危機に陥っていると確認したため、このバイクで突進してやろうと思い、今に至る。
天琉「おらよ! 借りた物をきっちり返すぜ!」
そう言うと天琉はバイクから飛び降り、バイクをテクノギアの腹部分に激突させ、爆破させる。
成功するかどうかは賭けであるが、これは天琉の作戦だった。
これで少しでもテクノギアと小型の気を引き、メティスを救えないかと思いやった。
しかし、テクノギアにはダメージを与えたが効果はあまり見られず、小型は少し動揺しただけで、すぐにメティスへと視線を戻す。
作戦失敗かと自分の行動に嘆いていると、銃声音が鳴り響く。
何だろうとその場にいる全員が思っていると、メティスにビームを撃とうとしていた小型は風穴が開いた状態になって落下していた。
その現状に驚いていると、またもや銃声音が響き、次はメティスを拘束している小型に風穴が開く。
何だろうと困惑していると、近くの建物の屋上から聞き慣れた男の声が聞こえてくる。
「ありがとな天琉。お前が一瞬気をそらしてくれたおかげで、こっちの射撃に気づかれなかったし、間に合わせることができた」
その声のする方向に全員が視線を向けると、そこには1人の帽子を被った男がスコープが付いた機械じみたライフルを持って立っていた。
その男はハゲであることをバラされ、メンタルブレイクによって搬送された金髪の男だった。
ライアン「さて、俺の敵はそこのデカイのと、ちっこい奴らで良いんだな?」




