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第5話 【チーム結成試験 中編】

試験開始から少したち、それぞれの受験チームが森で分散された頃、リベルタスの3人は方針を決めていた。


30ポイント以上、40ポイント未満という条件のなかで考えると、適当で丁度良いポイント数は35ポイント。


そして、回収する魔石の種類も合否に影響することを考え、G級10体、F級5体、E級2体とねらう魔獣を決める。


それを決めた3人はまず、数が少し限られているF級から探し始める。


理由は、G級は数が多い分焦る必要はなく、E級はそもそも手を出そうと思う者は中々いないだろう。


故に、一番妥当なポイント数であるF級が他の受験チームに狙われる可能性が高く、すぐにいなくなる恐れがあるからだ。


とは言っても、この広い森の中から限られた数の魔獣を探すというのも中々に骨が折れる。


心境的には余裕を持ちつつ、回りに目を配り、いつも通りの会話をしながら森を歩いていく。


タコ「そう言えば、天琉の名字って『青龍寺』って言うんだな」


ネル「カッコいい、のに、なんで、教えなかったの?」


それを聞かれた天琉は、少し気まずそうな表情になり、詳しくは語らないが簡単な返答をする。


天琉「何て言うか、俺には似合わないって言うか…。名乗っていいもんじゃないからな。でも、名字とかは関係ないだろ? 俺は俺だからな」


返答の内容に少しの疑問を抱くが、それもそうかと思い、2人は納得する。


すると、ネルがいきなり2人にその場に止まり、静かにするように頼んでくる。


五感を研ぎ澄ませると、ある方向に指を指し、何かがいることを教えてくれる。


その場所に慎重に行ってみると、青色の魔石が取り付けられた普通より大きく、牙が鋭く大きい狼のような魔獣を丁度5体発見する。


それは「F級中位魔獣 ファングウルフ」


俊敏な動きで相手を翻弄し、隙が出来たところを噛みつき、その牙で身体を抉るという中々にヤバい魔獣。


しかも、ウルフ系の魔獣は単体ではなく集団で行動するため余計に質が悪い。


集団行動を行う習性とその戦闘能力の高さを合わせてF級中位とされている。


その事に十分注意しながらリベルタスは自分に出来ること考えて作戦を建て、動き始める。


まず、先手を打ったのはタコ。


ネルとの出会いの日である【闇夜の槍】の件の時に使った銃のエレキャッチを使用し、あわよくばと思い5体まとめて捕獲しようとするが、内の4匹に逃げられてしまう。


だがそれは想定内だ。


逃げた4体は、身を隠していた天琉とネルが2体ずつ仕留める。


素早い剣と槍の捌きには見事としか言いようがなく、タコは流石と2人を褒め称える。


その後、しっかり魔石と魔獣の死骸を回収し、次の標的であるG級魔獣を探すことにする。


また雑談タイムとなるかと思ったが、以外にも早くG級魔獣を数匹発見する。


それは小さなウサギのような見た目で、頭から1本の角を生やしている魔獣だった。


それは「G級上位魔獣 ラナビット」


戦闘力は極めて低く、人間に対して害を及ぼすことも全く無いが、肉は一般の家庭料理によく使われる。


早速タコが先程と同じようにエレキャッチで捕まえるためにバレないように撃つが、簡単に避けられてしまう。


もう一度撃ってみるが、1回目同様に避けられる。


負けじと何度も撃ち続けるが、ことごとく全て避けられてしまう。


これが戦闘力がG級下位のラナビットがG級上位に位置付けられる理由だ。


逃げ足がとても早く、捕獲が困難なのだ。


タコ「すまん、俺には無理だ…。後は頼む……」


天琉「ナイスファイト。 仇はとる」


天琉がそう言った後にネルは手でグッドサインを作り、タコの頑張りを称賛する。


そして、その頑張りに応えるために2人は全力でラナビットの捕獲に取りかかる。


天琉は足場が悪く、木などの障害物が多いにも関わらず、まるで慣れたような早さでラナビットを追い掛け、木々の複雑さをたくみに利用して回り込み捕獲する。


これを数回繰り返し、5体捕獲する。


ネルは遠くの方から視線を飛ばし、捕まえるチャンスを伺うという作戦だったのだが、ネルの視線に気づいた瞬間、ラナビットは動かなくなった。


ネルは不思議に思っていたが、理由はネルのその気迫だった。


ラナビットは逃走能力に優れており、凄腕のハンターが限界まで気配を殺しても気づくほどに感覚が優れている。


それが故に、ネルの気迫から伝わってくる絶対的な死を感じ取ってしまい、諦めるしかなく、その場で動かなくなったのだ。


それによりネルは6体のラナビットの捕獲に成功。


2人がラナビットを捕獲している間、タコはせめて他のG級を狩ろうと思い、回りに注意を配りながら魔獣を探す。


その時、何やら叫び声が近くから聞こえてきた気がした。



その頃、その近くではライアンのチーム「バレット」が、大きな蜘蛛に追い掛けられていた。


それは「E級中位魔獣 アシッドスパイダー」


その巨体と、獲物に対しての容赦の無さ、そして獲物を狩る際に、必要以上に追い掛け回し、獲物が複数であれば、1匹づつ狩り、獲物に出来る限りの恐怖を与えるという行動からE級中位に位置付けられた。


ライアンたちはただの蜘蛛だと、自分の銃で頭を撃ち抜けば終わりだと調子に乗り、頭を撃ったが、想像以上に硬い表皮に弾丸は通らず、追い掛けられるという状況に至ったと言うわけだ。


逃げている途中、アシッドスパイダーは糸を出し、3人を一気に捕獲する。


何か品定めをするような素振りをし、そこからライアンを選び、まずはお前からだと言わんばかりにライアンに尖った足を突き刺そうとする。


ライアン「お、俺は弱くないんだ…! 俺は……!」


ライアンは恐怖のあまり目を瞑ったが、次の瞬間聞こえてきたのは自分の断末魔ではなく、自分と口喧嘩をしていた男の声だった。


タコ「ブーメランブレード!」


その言葉を言い放ったあと、タコの所持していた両剣がブーメランのように飛んできて、ライアンたちを拘束していた糸を切断し、助ける。


何事かと困惑していたが、その間にタコは戻ってきたブーメランを手に取りる。


武器である両剣にはロックオン機能が備わっているため、先ほどのような一定の範囲の遠方からなら、狙い撃ちならぬ狙い切りも可能。


ただし、このような森で、ラナビットのような小さく逃げ足の早い対象には向かない。


アシッドスパイダーは負けじと再び襲いかかろうとするが、タコはそれを防ぎ、武器である前足の2本を切り落とし、最後に両剣を胴体に深々と突き刺すと、アシッドスパイダーは動かなくなった。


恐怖と助かったことによる安心感で腰が抜けてしまい、ライアンたちは動けずにいた。


だが、ライアンは同時にタコに対してカッコいいとも思えてしまっていた。


タコ「大丈夫か? 最初の威勢がまるでないぞ?」


ライアン「うっ、うるせぇ! 調子が悪かっただけだ!」


そんな口喧嘩をしつつも、タコはしっかりと魔石を回収する。


すると、ライアンはいきなり質問を投げつけてくる。


ライアン「なんで助けた… 5ポイントの魔石狙いか? お前より強かったらどうするつもりだった…」


タコ「確かに、その可能性を考えなかった訳じゃない。でも目の前で、届く距離で誰かがいなくなるのは、もう嫌なんだ」


その言い方に疑問を抱いていると、遅れて天琉とネルがやってきて、状況を把握し、ネルは調子に乗ったからバチが当たったと言い、ライアンはそれに対して「うるせぇ!」としか言い返せなかった。


そんな言い争いをしていると、ネルが天琉の様子がおかしいことに気がつく。


天琉は何かを心配しているような弱々しい表情で、アシッドスパイダーの死骸をチラチラと見ていた。


ネル「どうしたの?」


天琉「え? あっ、いや別になんにも!?」


そう言った後に誤魔化すように元気よく笑うが、その途中でもチラチラとアシッドスパイダーを見ていた。


その様子をネル、そして途中からタコとライアンのチームが見ており、その状況からある説が浮上する。


ライアン「お前もしかして… 虫苦手なのか?」


天琉「いっ、いや別に苦手じゃねぇし! ちゃんと仕留められてるか気になっただけだし!」


そんな言い訳を並べながらも表情は少し弱々しく、説得力に欠けていた。


天琉が言い訳を続けていると、タコが一度落ち着くように言い、ある知恵を天琉に教える。


タコ「蜘蛛は… 虫じゃない!」


※蜘蛛は節足動物であり、昆虫類には属しません


知っている人なら知っている、知らない人なら知らない知識をその場で披露し、タコはドヤ顔になる。


ネルとライアンは始めて知ったその事実に驚くが、ライアンの仲間は知っているのか、「え? 常識じゃね?」と思う。


天琉もまたその事実は知っていたが、見た目や行動が虫のようであるため、頭のなかでは虫と分類してしまうのだ。


分かっているが虫と思ってしまうことと、虫が苦手ではないと言っていると、突然アシッドスパイダーの死骸が少し動く。


それを確認した天琉は恐怖の度合いが最大値になり、叫び声を上げながらその場から走り去っていく。


天琉「虫イヤァァァァ!!」


タコとネルはそれを見て落ち着かせるために追い掛ける。


ネルは必死に追い掛け、タコは虫じゃないと言い聞かせながら追い掛ける。


その光景を見ていたライアンのチームメンバーは困惑していたが、ライアンはそれと同時に何かを考えていたのだった。


ライアン(俺は、弱いのか? あの頃と… 同じ?)

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