表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/70

第49話 【思い出】

3人は武器を取り上げられ、電流が流れる鉄格子の牢屋に入れられていた。


天琉と玲来は普段通りにしているが、タコだけが壁を向いて俯いたままで、2人の方に近づこうともしていなかった。


その状況が気まずい2人は小声で会話する。


天琉「どうする?」


玲来「どうするって、あんなことあった後じゃソッとしておいた方が良いんだろうけど……」

二人がタコの雰囲気を確かめると、ソッとさせてあげるどころではないと思えてきた。


だが、落ち込んでいるタコを黙って見ているわけにもいかないため、まずタコの過去を聞くことにする。


今はまずタコの過去をしらなければなにも始まらないと思ったからだ。


2人は、何故タコはエゴイスに対して敵対的なのか、どんな関係なのかということを知らない。


玲来「タコ、大丈夫?」


タコ「いや、全然。俺は結局何もできなかった。恩人の敵討ちも、協力してくれたマキナすら救えない、俺は無力なんだ……」


タコは自らの不甲斐なさに相当追い詰められた状態だった。


天琉「なぁタコ、お前がいま追い詰められた気持ちってのはわかるが、それでもお前のことは教えてほしい」


タコ「俺はただのホムンクルスだよ、いつでも作れる、そこいらのやつと変わらない……」


玲来「そんなことない! さっきも言ったとおり、タコはタコだよ。心や記憶は私たちと過ごしたタコだけなんだよ」


タコは玲来のその言葉にハッとして恩人の言葉を思い出す。



「君という存在は君だけだ、同じなんて決してないんだよ」



そしてタコは今まで塞ぎ混んでいた心を開いたかのようにうずめていた顔を二人の顔へと向ける。


タコ「…… わかった、話すよ俺の事について」


2人はタコが少しだけ立ち直ったかのように見えてホッとする。


そしてタコは、自分の過去について語り始める



知っての通り俺はエゴイスが考えた人工生物製造の過程で、人型に寄せて作られたホムンクルスの1人、No.88。


人型は俺以外にも作られてたんだが、ほとんどが失敗続きだったらしく、技術と知能に特化した俺と、戦闘に特化したもう1人だけが成功例だった。


他の人工生物たちもそうだ。


成功した個体にはNo.という名前が与えられ、失敗したのなら容赦なく焼却炉行き。


俺は生まれた時点から、何の感情も持たせられない、会社の利益を生むだけの道具として教育を受けたんだ。


あいつが言う俺への教育は「ただ命令に従え」「口答えはするな」「自分の思想なんてもつな」とか、そのくらいだった。

 

普通の人間の社員たちがいたころ、5歳くらいの時から、俺はエゴイスの側近で働いてた。


昔は人間の社員たちがいたんだが、エゴイスに着いていけないとかの理由でやめていった。


エゴイスはちょうど良いって言って、社員を全部ロボットにする、ロボット研究員製造計画を始めたがな。


それがこの会社の社員が全部ロボットの理由だ。


俺が疲れてもあいつは俺に労働させた。


自分はスキンケアだのなんだと言って、夜は自室に行った。


俺を置き去りにしてな。


今となってはムカつく話だが、あのときの俺は本当に物言わぬただの人形も同然のやつだったんだ。


感情を表に出さず、常にエゴイスのために働いた。


だが、俺が11歳になったある日、ある人が現れたんだ。


それが俺の恩人メティスさんだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「「メティスさん!!?」」


タコが過去の事を話す中、2人はすっとんきょうな声でその名を口にする。


タコ「あ、あぁ……。どうした?」


天琉「い、いや……別に」


玲来「何でも… ないよ?」 


2人はタコがいる方向の逆方向を向いてしゃがみ、タコに聞こえないような小声で会話する。


玲来「ね、ねぇ。メティスさんって……」


天琉「あぁ、ライアンを助けてくれたあのロボットのことだよな。だが、たぶん違うんじゃないか?」


玲来「だよね。同じ名前の人なんてたまにいるし、きっと偶然……」


タコは二人の様子が気になり「大丈夫か?」と声をかける


「「い、いやいや何も!? 続きをどうぞ!!」」


タコは二人の様子に少し疑問を抱いたが、二人が言う通り気にせずに話の続きを話し始める。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

メティスさんは、EI社の優秀な研究員の1人で、もとはフリーで発明をしてたんだ。


世のため人のためになる発明をしようと心がけていた、素敵な女性だった。


EI社に入ったのは、エゴイスのところの技術を学ぶことと、生活面を良くするために就職したらしい。


だが、入ってすぐに会社の闇に気づき、入ったことを後悔したらしい。


そんなある日、俺と出会ったんだ。


昔は社員は交代制で俺の健康状態をチェックする役目があって、その日はメティスさんが担当だった。


俺の姿を見たメティスさんは、いきなり訳のわかんないこと言った。



メティス「君、私と一緒に駆け落ちしないかい!?」



メティスさんは有無を聞かずに、その日のうちに俺をEI社から連れ出して、自分の家兼研究所に連れてこられた。


タコ「いったい、どうゆうつもりですか?」


メティス「あんなナルシストのクズがいるところで過ごしてたら、楽しくないでしょ? 君みたいな子供は、楽しく自由に、やりたいことをやって、自分の意思をもって人生を謳歌するべきなの!」


最初は意味がわからないって感じだったんだが、始めて自分の意思を持っていいと言われたことに、胸が温かくなったんだ。


メティスさんは色んな事を俺に教えてくれたよ。


俺がどんな存在なのか、俺がどう生きていけば良いのか。


心や命の大切さを。


メティスさんは、色んな発明を見せてくれた。


訳のわからない発明をしてて、その理由を聞くたびにメティスさんは同じ答えを出したよ。


メティス「作ってみたいって思ったことは、楽しくチャレンジすれば良いんだよ。それがどんな発明でもね。まぁ、危ないものはちょっと控えた方がいいかも」


俺はそれがとてもカッコ良くみえた。


何だかんだ言って技術は凄くて、起業すれば良いのにってレベルだった。


なんでエゴイスのとこで働くのかって聞いてみたら、普通に社長とか柄じゃないとか、難しそうだし堅苦しそうだから嫌だったらしい。


嫌いなエゴイスの会社を直ぐに辞めなかったのは、丁度ロボット研究員製造計画が始まった頃で、いつかはクビになるってわかってたらしい。


ならクビになるまでは働いてやろう、給料をもらえるだけもらい尽くそうって思って会社に残ったらしい。


メティスさんと過ごしてだいたい1年が過ぎたくらいかな。


俺はすっかりメティスさんに懐いて、まるで子と親みたいな関係だった。


俺なんて昔は敬語だったのに、半年たった頃には普通の子供みたいな話し方になれたんだぜ?


メティスさん自信も俺の事を息子って呼んでくれた。


俺はその事が誇らしく嬉しかった。


ずっとこの生活が続けば良い、ずっとこのままの関係が続けば良いって思ったよ。


だがある日、エゴイスのやつが襲ってきやがった。


俺が1年間無事でいられたのは、全てエゴイスの策略だったんだ。


俺が普通の人間とくらして、どんな成長が見られるかの実験だったらしい。


その後、メティスさんはその場で拘束され、俺は捕まり、またEI社に帰ることになったんだ。


また1年前と同じ日々が始まった。


1年前までならなんとも思わなかったことも、メティスさんと過ごした後の俺はその日常がおかしかった事に俺は気づいたんだ。


それから、2、もしくは3ヶ月が経ったんだろうか、俺は心が折れかけてた。


またあの頃の人形みたいな自分に戻っちまいそうで怖かった。


だが、そんなとき社内に侵入者への対処を呼び掛ける警報が鳴り響いたんだ。


俺はなにかと思いながら、少しの期待を抱いていた。


そしてその期待は的中した。


メティスさんが、武装をして俺を助けに来てくれたんだ。


メティスさんが俺の部屋に来たときには身体中がボロボロで、いつ倒れてもおかしくないほどだった。


そのあと、何とか社内から逃げ出そうとしたが俺と同じロボットや人工生物たちに足止めされて、追い詰められちまった。


そして、エゴイスと遭遇した。


何もかも駄目だと思った、だがメティスさんは笑ってた。


メティスさんは俺に「突っ切るよ」と言うと、俺を庇いながら集団に背中からジェットを噴射させてタックルし、その場を切り抜けた。


だが、後ろからの銃撃を何発も受けてしまったんだ。


そのあと、ある研究室にたどり着いたメティスさんは新型の転送装置で俺を中央都市付近の森にいくつかの道具を渡すからと言って、送ろうとした。


メティスさんにも来てほしかったが、メティスさんは転送先がわからないように俺が送られた後に装置を破壊すると言った。


もちろん俺は嫌がったさ。


大好きなお母さんだったんだからな。


今でもあの時の瞬間は忘れない。


タコ「嫌だよ! 母さんも行こ!」


メティス「ごめんね……。でも最後にこれだけは言わせて」


タコ「最後なんて言わないでよ! 嫌だよ!そんなの……!」


あの時は顔も心もがグシャグシャで、ただメティスさんと離れたくないって気持ちでいっぱいだった。


メティスさんは最高の笑顔を見せてくれたけど、それと同時に涙を見せた。


メティス「君は、君のやりたいことをしなさい。自由に生きなさい。でも少しの間君は1人になるかもしれない。でもいつか、きっと……」


最後の言葉をしっかりと聞き取った後に、メティスは転送装置を起動させ、転送させた。


俺は何度も中から窓の部分を泣きながら叩いたが、どうにもならなかった。


そして俺はメティスさんのお陰で今から大体5年くらい前に中央都市付近の森に転送されたんだ。


そこからは、俺はメティスさんへの憧れを持って、あの人と同じく人のためにと言う願いをもって発明を続けたんだ。



タコ「だいぶ色んなふざけた物ばっか作ったた気もするが、今となってはそれも良い思い出だ。そのお陰で天琉に会えたんだからな」


天琉「最悪な会い方だったがな」


玲来がどんな会い方なのかを聞き、その出会いかたを面白そうに笑い、天琉とタコは思い出し笑いをする。


天琉「まぁ、これでタコの過去はわかった、後はどうするかだ」


玲来がコクりと頷くと、2人は同時にタコのほうを見る。


タコ「な、なんだよ……」


玲来「ちょっとは楽になったでしょ?」


タコはいつも通りのチームとの会話にいつの間にか楽になれていることに気づく。


玲来「1人で抱え込むより、皆で抱えた方が軽くなるでしょ? もっと私たちのこと頼ってよ! 仲間なんだから」


天琉「メティスさんがお前の中で大きな存在ってことはわかった。だがな、俺たちにとってもお前は大きな存在なんだぜ? メティスさんよりは日が浅いが、俺はチームの皆のことを家族同然だと思ってる」


玲来はその言葉に同意の意味を込めて首を縦に降る。


だが、それだけでは止まらずにチームでのポジションを語り始める。


長男はライアンで長女は玲来、次男はタコで次女はネル、そして天琉はペットの猫というポジション。


もちろん天琉は猫であることにツッコミをし、それと同時にライアンが長男であることにツッコミをする。


タコはその言葉を聞き、その光景を見て溢れる感情が押されられずに涙を流したが、恥ずかしいのか全員から顔をそらす。


2人は当然泣いていることに気づき、その事を指摘するが、タコは泣いている事を全力で否定する。


天琉「素直になれよ」


玲来「そうだよ、こんなときくらい豪快に泣いた方がいいよ。玲来お姉さんがハグしてやんよ」


天琉「まだ言うか……」


タコ「だから泣いてねぇって!」


そう言いながらタコは壁の方に身体を向ける。


その姿を見た2人は、満面の笑顔で目を輝かせながらタコのほうに息を潜めて近づき、全力でくすぐる。


タコは泣きながら大きな声で笑った。


嬉しくて泣いているのか、笑いすぎて泣いているのかがわからなくなるほどに。


玲来「泣くのが嫌なら!」


天琉「泣いてるか笑ってるかわかんなくすれば良いだろ!?」


タコは、その状況に嬉しさで溢れ、メティスが別れ際に笑顔で言ってくれたことを思い出す。


 

「いつか、きっと…… 君と共に歩んでくれる、素敵な人たちに出会えるから」



しばらく笑い続け、呼吸を整えてタコは改めて2人の方に顔を向ける。


タコ「それじゃあさ、頼って良いか?」


2人はもちろんと即答し、タコへの協力を決意する。


そしてタコはマキナを救い、エゴイスの悪事を白日の元に晒し、メティスさんの仇を取りたいことを伝えると、2人は喜んでそのことに協力すると答えを返す。


やる気に満ち溢れている2人を見ていたタコは、メティスが言っていた言葉が本当であったことに感謝する。


だが、作戦を考えるにしてもまずこの檻からでる方法と、バレずに移動する手段が無いことに悩んでいると、後ろから声が聞こえてくる。


ブラックユルルン「皆、ケイドロ、してるの?」


タコは突然話しかけてきたアイラシスギルンに驚くが、他の2人はその見た目と声から中の人が誰なのかわかった。


それは紛れもないネルであった。


ネルはここまでアイラシスギルンを着て安全に進んできたのだ。


その様子を見た2人は移動手段を思いつき、タコに提案すると、タコは作戦を思い付く。


タコ「これなら行けるぞ! よし、作戦を伝える!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ