第48話 【真実と正体】
EI社の社長室にあるモニターを確認していたエゴイスは想定外のことに少し焦っていた。
天琉と玲来は想像以上の手練れであり、行く先々で出会うロボットも生物兵器も返り討ちにしてしまう。
自分がスキンケアに夢中になっている間にこんなにも早いとは想定していなかった。
本来であれば、3階の探索を完了し、疲れきっているところにNo.200をぶつける予定だった。
そして、2人が戦闘しているときにNo.88(タコ)ことについて話し、混乱させて始末する予定だったのだが、甘く見すぎていた。
エゴイス「よくも私の予定を狂わせたな……」
エゴイスは怒りのあまり自分で掲げる美しい顔を崩し、シワだらけの顔を見せる。
そしてエゴイスは、四階にいるNo.200を解き放つようマキナに指示する。
だが、まだ調整が済んでおらず、その場にはまだ研究員ロボットがいたため、出来ないと提言する。
だが、エゴイスにそんなことは関係ない。
エゴイス「構わん! コントロールが効かない出来損ないなどいらん! ロボットなどいくらでも作れる!」
その命令に逆らうことが出来ず、マキナは小声で謝罪の言葉を述べ、遠隔でNo.200を起こす。
その操作に反応し、とある研究室の液体が入ったカプセルの中にいる何かが唸り声をあげ始める。
その後、エゴイスは苛立った顔をしたせいで崩れてしまったスキンケアをやり直しに向かう。
◆
2人は3階までの探索を完了したが、ロボットや人工生命体の研究についての部屋だったり、エゴイスの写真館ばかり。
合計でも3つの写真館を見つけ、「美しい」「色々ヘアスタイル」「マッスルポージング」などという下らないものばかり。
あと1つ変わったものがあるとするならば、なにかとても大きなコンピューターがある「第3コントロールルーム」と書いてあった部屋だった。
正直に言うと、2人はエゴイスのナルシストのレベルに精神的ダメージを受けていた。
しかし、遠目から見た本社の階数はかなりのもので、あとどれだけあの顔を見なければならないのだろうと考えていた。
玲来「次にあの顔見たら、私イライラが最高値に達しちゃうと思うんだけど……」
天琉「大丈夫、俺もおんなじだから……」
おそらく次にエゴイスの顔を見たならば、容赦なく攻撃を加えるほどまでに2人の精神はエゴイスの顔にうんざりしていた。
何か気を紛らわせることができるような物はないかと話していると、玲来がいきなり足を止める。
そのことに疑問をもった天琉は質問したところ、何か変な感じがするらしい。
玲来「なんか…… やばい!」
玲来が感覚を研ぎ澄ましていると、持ち前の勘が危険を訴え、それを回避するために天琉を押し倒す形で後方へと下がる。
下がったと同時に先程までいた地点の横の壁が吹き飛ぶように崩れる。
勘の鋭さに救われた天琉は玲来に礼を言い、「これくらい朝飯前」の言葉とピースサインで返される。
すぐに体勢を整え、いったい何が起こったのかを確認すると、壁が崩れた際に舞った煙の中に何かが見える。
それは、今まで見てきたどんな生物よりも異様な姿をしていた。
その生物は2人に向けて殺意を込めた咆哮を放ち、その声は舞っていた煙を全て飛ばしてしまった。
顔は半分機械のようで、半分は人型のようだったが、口は鬼のようになっていた。
身体はオーガのような体格で、右腕はその身体に釣り合わないほどのより大きな剛腕を備えており、左腕はカマキリのような腕の大きな鎌を備えていた。
こちらに殺意を向けているが、それと同時に壁や地面などに攻撃をしている。
それを見た2人は殺意しか纏っておらず、ただ壊すことしか考えていないように感じ、自分の武器を構える。
同時にその生き物は2人に突進していき、無作為に剛腕を振り下ろす。
単調な動きだったので、簡単に避けられた。
床はクレーターのように円形にへこんでしまい、そのことからかなりの腕力と予想できる。
剛腕による初撃を外した生物は次に鎌で切りつけてくるが、普通よりも優れた反射神経と動体視力を兼ね備えた2人には見きれる早さだ。
しかし、それでも鉄の壁に切り傷ができるほどの切れ味であることに驚く。
この生物はエゴイスが2人を始末するために無理やり起こしたNo.200という個体。
攻撃能力、素早さにおいてかなり高いものだが、様々な生物を付け足した結果、破壊衝動しか持たず、制御が効かなくなってしまった。
攻撃手段としては、剛腕で掴み身動きがとれないところを鎌で切り裂く。
もしくは、鎌を防いでいる間に剛腕で殴り殺す。
多少の素早さも兼ね備えているため、2人は簡単に始末されてしまうだろう。
だが、それは『体力を消耗してれば』の話である。
エゴイスは2人が3階まで様々な調べのものをしているうちに戦闘が起き、それが原因で体力が消耗するだろうと予測し、そこをNo.200に始末させようとしたのだ。
しかし、2人は幼い頃から鍛練を積んでいるため、この程度では疲れの範疇に入らない。
戦闘はあったものの、どれも2人の相手になるようなものでも無かった。
そして2人には高いコンビネーション能力があるため、単に素早く図体が大きく単調な動きしか出来ない相手などすぐに倒せる。
天琉と玲来はその自慢の両腕を切断し、致命傷レベルに斬撃を与え、No.200を撃破する。
事が終わった2人は自分の刀を鞘に収め、No.200が壁を突き破ったことに感心しながら壁の向こう側を見てみると、そこには研究室があった。
今までと違うとするなら、カプセルは1つしかなく、それも壊されている。
床には書類のようなものが散乱しており、それに加え研究員ロボットの残骸が転がっていた。
No.200がここから出てきたので、ヤツによって壊されたのだろうと考える。
2人は念のために調べるために落ちている資料に目を通す。
そこには今まで魔物などを使っていたものとは違う内容で、人の形に近いホムンクルスを作り出す研究だった。
そこで2人は初めてさっき倒した生物がNo.200であることを知る。
No.200は今まで作られた2体の成功例の要素である、知能と戦闘に特化した物、そしてそれに様々な生物を組み合わせた個体だった。
その成功例とは何だろうと天琉が考えていると、玲来がある資料を見つけ、焦った様子で天琉にその資料を見せる。
そこには人型の成功例の1体であり、知能に特化したNo.88の事が書かれていた。
2人はその存在に驚かざるを得なかった。
何故ならNo.88の資料に載っている顔写真は、今よりも幼いがタコにそっくりだったからだ。
2人がそのことに呆気をとられていると、その研究室の壊れていないモニター2つが起動し、1つに拘束されたタコが映る。
そして、もう1つにはエゴイスが腹が立つほどのにやけ面をしながら、少しやけくそのように2人に話しかける。
エゴイス「見ただろう? それがこいつの正体だ! 貴様らの仲間は、貴様らが倒したNo.200同様に、いつでも、何体でも作れる化け物だ!」
それを聞いていた2人はただただ無表情で、言われた後に画面に映されるタコの顔を見る。
タコの表情はまさに苦しそうで、知られたくなかったと言うことがよくわかる。
その様子を見ていたエゴイスは、リベルタスが完全に幻滅したのだろうと思い、タコに罵倒と煽りの言葉を投げつける。
エゴイス「貴様は所詮、私に従うしかないただの道具! 思いどおりに使われるモルモ……!」
「モルモット」という言葉を言おうとした瞬間、エゴイスの顔が映る画面に天琉の拳が放たれる。
壊れたことに驚いたエゴイスはすぐに別のモニターに切り替え、理解できない行動に質問しようとする。
だが、質問の途中で玲来の蹴りがその画面を壊す。
天琉「さっきからうるせぇんだよ。化け物? いつでも作れる? ふざけんじゃねぇよ……!」
玲来「私たちの仲間のタコは1人だけ。何体も作れるとか関係無い……!」
2人の顔には怒りが溢れており、その怒りを体現するように拳が強く握られる。
玲来「これ以上タコのことをバカにするなら、あんたのそのムカつく顔に蹴り入れてやるから!」
天琉「あと髪を全部焼き払ってやるよ! ライアンの髪の仕返しだ!」
2人が自分が思っていた通りの反応をしなかったエゴイスは、普段の冷静さを取り繕うこともせずまくし立てる。
よりタコを助けると言う気持ちが強くなり、もう少しの辛抱だとタコに伝えるが、画面に映るタコは動かなかった。
何故だろうと疑問に思っていると、エゴイスが映る画面からタコの声が聞こえてくる。
タコ「ありがとな。やっぱりお前らに出会えてよかった」
その言葉が発せられた場所には何もなかったが、突如リベルタスが見慣れた武器が現れ、エゴイスの後頭部に刃の先端が向けられる。
それはタコが使っている武器である両剣だった。
その姿が露になった次の瞬間、何もないところからローブを着たタコの姿が露になる。
タコ「驚いたか? お前がスキンケアしてる時に近づかせてもらった」
エゴイス「何故だ… カメラにはしっかりお前の姿が…」
「それは私が作った偽装映像です」
その声は天琉と玲来には聞き慣れないものだったが、タコとエゴイスにはとても聞き慣れた声だった。
その声の主はエゴイスが作り出した人工知能であるマキナである。
エゴイスの部屋がよく見えず、状況に困惑する天琉と玲来だったが、タコからの簡単な説明を受け、マキナは仲間であることを伝えられる。
マキナは改めて2人に挨拶をすると、今の状況を確認しやすくするために、エゴイスの部屋のようすを画面に映す。
何故ここにタコがいるかと言うと、倉庫にリベルタスの反応があったと感知し、マキナに指示。
その後、スキンケアに行ったとき、マキナは映像を偽装し、タコは拘束を解いてもらった。
その後、マキナが移動用に用意してくれていた光学迷彩機能があるローブを装着し、密かにエゴイスの部屋へと移動していた。
No.200を無理矢理起こすように命令した時点でもう到着していたが、2人の意思を確認したかったため、しばらく待機していたと言うわけだ。
タコ「さぁ、切られたくないなら俺の言う通りするんだな。マキナと俺を自由にしろ。そして、大人しく今までの悪事を認めて自主しろ」
マキナ「抵抗は無駄だと思ってください。私とタコはあなたの悪事についてのデータを集めて持っています。今すぐにでも拡散できます」
その要望を聞いたエゴイスは、諦めたのか、絶望してしまっているのか、ずっと黙ったまま俯いていた。
その様子を見ていたタコは返事を急かすが、エゴイスはいきなり小刻みに震え笑い始める。
タコとマキナはその様子に異常なものを感じ、何故笑うのかを問うが、エゴイスは簡単な返事をする。
エゴイス「愚かだな、お前らは……!」
その言葉を放った瞬間、エゴイスの身体はまるでホログラムのように光の粒になって消えてなくなる。
タコもマキナも、別室から映像で見ていた天琉と玲来もその状況に困惑せざるを得ない。
マキナ「まさか…! 魔法と科学を合わせた分身体!? なら本人はど……!」
エゴイスがいったいどこにいるのか探そうとすると、マキナはいきなりノイズがかかったように言葉が途切れてしまう。
タコはマキナの声が途切れたことに疑問を持ち、安否を確認するために呼び掛けるが返事は返ってこない。
そんな状況になって、タコのいる部屋の画面にエゴイスの顔が映し出された。
そこは巨大なコンピューターのようなものが置いてある部屋のようだった。
エゴイス「これが何かわかるか?」
その手には「マキナ」と書かれたチップがあり、そのことからタコはマキナのメインメモリー、つまりマキナの魂のような物であることがわかった。
エゴイスはマキナが裏切り、自分を襲おうとしていたことは予想してた。
そのため、スキンケアの時にマキナに部屋を見るなと命令したことを利用し、そこで偽物を作って入れ替わった。
そして、マキナのメインメモリーを接続してある「中央コントロールルーム」に向かい、それを抜き取ったと言うわけだ。
エゴイス「マキナという人格はお前を脅すためだけに作ったオマケだ。本来は今回の計画に必要な物の頭脳だ」
天琉と玲来は計画というのは何なのかと聞くと、エゴイスは誇らしげに答える。
まず、未来国のある一定の範囲にいるEI社のロボットを暴走させ、一般人を襲わせる。
暴走させるロボットは他の会社の物に偽装させたもの。
人々は逃げ惑い、助けを求めているところに、エゴイスが操縦する巨大ロボで人々を救い、ヒーローになる。
これにより、他の会社の利益を落とし、よりEI社の利益を上げるという自作自演の計画だ。
その計画を聞いた天琉と玲来は、どれだけ自分勝手なことをすれば気が済むのかと怒りを露にする。
それを言葉としてぶつけようとするが、怒りのあまり背後の天井から出てきていた銃に気づかず、そこから発砲された電気の塊をくらってしまい倒れてしまう。
2人が苦しむ声を聞き、タコは2人の名前を呼ぶが、返事は返ってこない。
エゴイス「さぁ、マキナの人格プログラムを消去されたくなければ、仲間を失いたくなければ、大人しく檻に入れ」
タコは人を、心のあるものを陥れ、あまつさえそれを自分のためだけに利用するエゴイスにこれ以上ない怒りを覚え、中央コントロールルームに向けて走り出す。
部屋のドアは両剣で切り裂いてぶち破ろうとするが、それを警備ロボが食い止める。
拘束されながらも悶えて暴れているところに電撃を与えられ、気絶してしまう。
ロボットたちに武器を没収し、3人を檻へいれるように命令したエゴイスは、ある場所へと移動していく。
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エゴイスが来たのはEI社の敷地内の地下にある格納庫であり、そこに格納されている巨大ロボットに用があった。
そのロボットの首の付け根にある何かを入れる部分を開け、片手に持ったマキナのメインメモリーを差し込む。
すると、ロボットの起動する音が格納庫に響き渡る。
エゴイス「さぁ、ヒーローのためのメイクをしなくてはな」




