第44話 【恩人】
天琉たちは、ライアンを制裁したあとライアンを救った人物に礼を言っていた。
天琉「改めてありがとうございます、うちのバカが」
「いえいえ、先程も言いましたが、これが私の使命ですので」
レイラ「見た目の可愛さに加えてその正義感とかギャップで惚れるわぁ。 どっかの金髪バカとは大違い」
ネル「本当、世話がやける」
身体中にできたタンコブから煙が出て、民衆の注目を浴びながらライアンはその言葉に心を痛ませていた。
ライアン「本当ひどい"……言われ"よ"う、」
そういうと三人はライアンに向かって同時 特大の言葉の刃を投げつける。
「「「しばらく黙ってろ、世話が焼ける金髪バカ」」」
ライアンの心に言葉の刃が刺さり、涙目で吐血しながらぶっ倒れてしまう。
その光景を見たライアンの恩人は、助けたのにも関わらず、おそらく地面に落ちるよりも重症になっている彼を見て、こんなことをして大丈夫なのかと聞く。
しかし、リベルタスにおいてライアンがこうなるのは日常茶飯事なので、恩人は心配いらないという答えに少し困惑してしまう。
玲来が恩人の名前を知りたいと言い、困惑している途中であったが気を取り直して自己紹介する。
「私はメティス! この未来国の平和を守ることこそが指名の、自立思考型ロボット!!」
そう言いながら短く太い腕足を振り回しながらカッコいいポーズを決める。
しかし、ゆるいデザインのせいで可愛いようにしか見えなかった。
ポーズについての感想を心の中で言っていると、メティスは未来国に来た目的を聞いてくる。
当然それを聞く理由が何故なのか聞くが、答えはシンプルだった。
未来国に住んでいればライアンのように修理中の歩道から落ちるなどということは、小さい子供でない限り無い。
なので、町の仕組みに対応しきれていない、国外から来た人なのだとすぐにわかるのだ。
そして、天琉たちは未来国に来た理由を打ち明ける。
メティス「未来国には密かに犯罪を行う研究者、組織が少なからず存在しますからね。いずれかに関係するとは思いますので、私も協力しましょう。友人探しも含めてね」
リベルタス一同はその事を聞いて喜んだ。
そしてその喜びのお陰でライアンは完全回復したようで、メティスの両手を自分の両手で握って上下する。
ライアン「ありがとうございます! 命だけじゃなく俺の髪の仇を、親友を探してくれるなんて…! 本当にいい …人? …ロボ? なんだ!」
その光景を見ていて少し呆れつつ、いつも通りに戻って良かったなと安堵をする一同なのだった。
感謝の言葉を伝えた後にメティスは飛び立っていき、リベルタス一同は2手に別れて情報を集めることにした。
◆
ネル&玲来
今回このペアになったのには理由があり、それはネルが自分から玲来とペアになることを志願したからだ。
いきなりの提案で少し驚いたが、玲来もネルともっと仲良くなりたいという思いで同意し、このペアになった。
日常の中でも会話したり、一緒に出掛けることはあるが、ネルからの誘いというのもあまりなかったので、それが嬉しいのだ。
嬉しくなって顔が無意識に緩んでいると、ネルがいきなり質問を投げつけてくる。
喜びで気が緩んでいたせいでいきなりの質問に少し驚いてしまう。
ネル「天琉とは、どんな関係?」
玲来「……ほへ?」
突然の質問への驚きに、その内容も相まって余計に驚く。
天琉と玲来の関係はリベルタスに来たときに幼馴染みだと説明をしたから、わざわざ聞く必要はない。
なら何故そんなことを聞くのか?
それについて思考を巡らせていると、あることが頭に浮かぶ。
魔族の調査依頼に行った際、魔王と協力して大きな敵と戦った。
その事を聞いて3人が凄いことを成し遂げたこと、魔王という存在と魔族は誇り高い種族。
そして、いつか観光に行きたいというのは認識だけがあった。
だが、その段階においてあることが導き出された。
大きな戦いで自分の故郷を、自分の知り合いを共に守った中になるのなら、その中で何らかのフラグが立つのは必然。
その事から導き出された答えは……
玲来(まさかネル…… 天琉にほの字!?)
ありきたりな話ではあるが、これまでの流れを考えると、こう考えるのは玲来にとっては普通なのだ。
玲来(ネルが天琉を!? まぁ、大きな戦いの後は恋が芽生えるっていうのは、どんな物語でもありがちなことだけど、まさか現実にあるとは……! ってか、本当にそうならヤバイ…… って何が? 何がヤバイの? なんで私危機感感じてんの!? 違うって! 私はそういうんじゃなくって……!)
頭の中でそんなことを考えながら少し顔を火照らせていると、ネルが次の質問を投げつけてくる。
ネル「玲来が、どうやって、天琉と出会ったのか、知りたい」
その質問を聞いてよりいっそう謎の焦りを感じて、何故そんなことを聞くのかを聞くと、玲来が考えていた答えとは全く違っていた。
魔族国でライアンの知り合いの家に泊まった日の夜、ライアンが天琉に昔の事を話していたのをコッソリと聞いていた。
その時から、ネルは仲間の昔の事を知りたくなっていたのだ。
今回玲来とペアになったのは、玲来の昔の話を知りたいことと、天琉との出会いを知りたいという純粋な思いだった。
それを聞いた玲来は何故か謎の安心感が湧いてきて少し焦る。
だが、自分のことを知りたいと思ってくれたことに喜びを感じた。
少し心を落ち着かせてから、玲来は天琉との出会いを語り始めた。
玲来「なら、まずは私のことから話さないといけないかな。簡単にいうと、昔の私はいじめられっ子って感じだったんだ」
◆
その頃、玲来が住んでいたのは武道国の東。
武道国は知っての通り実力主義の国。
一族などの生まれも重視するところがあり、それにより比較されることがある。
玲来はまさにその比較対象にされる立場の生まれだった。
彼女の父はかなりの腕が立つ武術家であり、その実力は武道国随一とも言われるほどだった。
その娘として生まれた玲来には、当然才能があると期待されたが、知っての通り玲来は霊力が使えない。
父が使う武術は霊力を利用した物であり、それを使えない玲来は、意味嫌われる存在として扱われた。
遠回しな悪口、冷たい軽蔑の視線。
それは彼女の容姿にも関係していた。
父の髪色は黒色で、玲来の青みがかった銀髪さえも軽蔑の対象ともなったのだ。
玲来がその状況で思ったことは、認められたい。父の威厳を守りたい。友達がほしい。
それを果たすためにしたことは努力だった。
来る日も来る日も霊力を使えるようにするために精神統一したり、少しでも強くなるために鍛練をつむ。
そして、少しでも軽蔑の目をなくすために伸ばしていた髪を男のような短さに切った。
父は気にしてくれていたが、玲来は心配してほしくないと言う思いがあり、いつも通りの笑顔を突き通した。
だが、父の前以外では笑顔など作れなかった。
そんな日々を続けたある日。
7歳になる頃、森の中でいつも通り鍛練をしているときに、近所の子供たちがいつものように罵倒をしにきたとき。
何を思ったのか、石を投げつけようとしたとき、それを止めにはいる男の子がいた。
おそらく玲来と同年代くらいの見た目で、その年で立派な刀を腰に指している。
それが天琉との出会いだった。
自分を助けてくれる人間は初めてだった。
始めて出会った人間にたいして最初は疑ったが、安否を確認する言葉を聞いたとき、悪意なんてものは無い。
純粋に心配をしてくれていると知ったとき、玲来のなかでは疑問しかなかった。
何故いきなり、見ず知らずの自分を助けるのか。
それを確かめると、答えは簡単なものだった。
天琉「俺は困ってる人の手助けが出きる男を目指してるんだ。女の子1人守れなきゃそんなことできないだろ?」
その言葉に嘘偽りはない純粋なものだと玲来は感じ取った。
それがわかった瞬間、玲来は初めて自分のことを助けてくれる存在に涙を流した。
ずっと我慢を続け、ずっと本来の自分を押し殺して来たため、それが溢れてしまったのだ。
それを見た天琉はとても困ってしまい、ずっとあたふたはしていたが、ずっと寄り添ってくれていた。
その後、玲来は自分の現状を打ち明けた。
天琉「凄いなお前は。ずっと周りからの視線に耐えてたんだな」
玲来「凄くなんてないよ。私はお父さんみたいに霊力だって使えないし、髪の色だって違うから、我慢するのは当然で……」
それを聞いた天琉は直ぐに、そんなことは我慢しなくていいと言う。
天琉「俺もお前と同じ感じだぜ? でも周りの目なんて関係ないだろ? 自分らしく生きたほうが良いんだよ。その方が楽しいしな!」
その言葉と純粋な笑顔は玲来の中で氷っていた何かを溶かした。
そして、天琉が次にした問い、「お前の今の思いはなんだ?」に対して、今までの自分の願いをぶちまける。
玲来「私は、結べるくらい髪を伸ばしたい。自分らしくいたい! 友達がほしい!!」
その事を聞いた天琉は自分が友達になることを提案する。
この頃の天琉も友達ができる立場では無かったらしく、同じ境遇らしい自分と友達になりたいと言ってくれたのだ。
そして、玲来は天琉と友達になり、今の関係になるまで仲良くなれたのだ。
そして、この時から玲来は新たに決めたことがあった。
自分らしく、自分の意思で生きよう。
周りの目なんて気にするな。
そして、強くなろうとする本当の理由を思い出した。
以前父が人を守ったときに見た助けられた人の笑顔を、人を守るために強くなろう。
天琉が自分にしてくれたように、人を幸せにしようと。
◆
玲来「これが天琉との出会いでもあって、今の私になれた理由」
ネルは天琉と言う人間は、昔からそうだったのだということと、玲来が自分らしくあろうとする心も、人を救うという心も、単純な彼女の願いなのだと。
そして、以外にもリベルタス全員が何かを抱えているのだとわかった。
ネル「この事を、話して、つらい?」
玲来「全然。むしろこの事を思い出すと嬉しくなってくる」
そう言った玲来はネルに自分ができる最大限の笑顔を向ける。
玲来「あの出来事があったから、私は私になれたんだもん!」
エゴイストインダストリー
そこでは、エゴイスが何かの操作パネルの前で椅子に座っていた。
エゴイス「さぁ、ヤツの心を折るとしようか」
◆
どこかの研究室で、緩いボディのロボットは誰かの写真を眺めていた。
メティス「マスター。あなたの願いは私が果たします。必ずあの子を、守ってみせます」




