第39話 【一難去ってまた一難】
どうも! 転生者ことリベルタスの天琉です!
今私はとてもフカフカな病室のベットの上に乗っています!
いやぁ、やはりベットはいいねぇ。
フカフカとした感触が身体を包んでくれる。まさに擬似的天国!
こんな布団の感触があるなら、全身で堪能するために転がり回りたい!
ただ、残念なことに、俺はゴロゴロするどころか、そのフカフカを味わうこともできません。
傷のせいじゃないです。
え? じゃあ何でかって?
うん、だって今
全身包帯ぐるぐる巻きなんだもん
天琉は魔王城にある病室のベットの上に全身どころか顔までぐるぐる巻き状態になって動けない状態で乗せられていた。
何とか首は動かすことができたので、回りを確認してみると、自分と同じ状態になっている魔族の兵士達がいた。
魔族たちは治療の際の包帯も適当になることが多いため、とにかく巻いておけば良いと考えることが多い。
なので、治療されるとこうなるのは普通なのだ。
(随分雑な包帯の巻き方だよな~)
そんなことを言っていると、もう驚くこともなくなった声が横から聞こえてくる。
その視線の先には、戦闘中にいきなり喋りだした天琉の愛刀があった。
天琉『いい加減お前のことを聞きたいんだけど……』
炎牙(だから言ってるだろ? 俺はお前の相棒だって!)
天琉『いやだから! いきなり言われても納得できないっての!』
天琉がツッコミをした後、いきなり話せるようになった炎牙は自分のことについて語り始めた。
炎牙はこの刀に封印と言う形で入っている赤龍という霊獣らしい。
なぜ封印される羽目になったのかというと、昔とあるうっかりをしたせいで封印される立場となったらしい。
ちなみにそのうっかりというのは、くしゃみをするときに思いっきり炎を吐いてしまい、その炎が偶然、飛んでいた近くにあった村のシンボルに当たってしまったらしい。
それが原因で刀に封印されたんだとか。
天琉『なんでうっかりでくしゃみで炎が出るんだよ』
炎牙(くしゃみすると、たまに鼻水がめっちゃ出る時あるだろ? あれと同じだ!)
天琉『確かにあれは防げないけども!』
次に、何故いきなり会話できるようになったのかについて。
出会って、つまり天琉が刀を手にしてからしばらくして、人柄を認めてからすぐにでも話したいとは思っていたらしい。
しかし、封印状態では話せないため、今までずっと封印を解こうとしていたのだ。
しかし、長い間封印され続けたせいで、封印の扉が錆び付いている状態になっていて、中々封印を解けなかったらしい。
だが、今は少し開いた状態になっている。
後にこの少し開き始めた頃が、天琉が流星光底を使えるようになった日と一致することがわかった。
天琉『でも、今も少し開いてる感じなんだろ? なんで今までは無理だったのに今は話せるんだ?』
炎牙(あー、実はさ。 俺今扉に胴体挟まれてる状態なんだよなぁ)
それを聞いた瞬間、天琉は頭の上にハテナが浮かび、『ほへ?』というマヌケな声を出してしまう。
炎牙(ほら、相棒がラブリュスに会いに行く途中で、岩に追いかけられたときあったろ? あの時ヤバイってなって焦ってさ、無理矢隙間に理ねじ込まれて、なんとか力を使って相棒の手助けが出来たんだが、その後抜けなくなっちって……。もう慣れたが、最初は苦しかったぜ……)
それを聞いて、天琉は思い出した。
ラブリュスの家に向かう際に岩に追いかけられピンチになったとき、天琉が聞いた「飛べ!!」という声は、炎牙のものだったのだ。
そしてそれと同時に思い出したのは、ラブリュスの家で見た悪夢。
あの苦しんでいた声は、炎牙が扉に挟まれて苦しむ声だったのだ。
炎牙(だがな、それだけじゃないんだ。これは相棒のお陰でもあるんだぜ?)
それを聞いて、なんのことかわからず質問する。
炎牙(黒鉄の野郎との戦い、ヒュドラとの戦い。その中で相棒が成長したから俺と話せるようになったんだ)
実戦で得られる経験、そして今まで対峙したことの無い強い敵との出会い。
それらが連続した出来事の中で、天琉は戦いの中で精神的な強さがより増した。
その成長によって、炎牙と会話が出来るようになったのだという。
精神が強くなり、炎牙との同調が高まり、喋れるようになったらしい。
炎牙(赤龍の俺はよぉ、相棒の努力するとことか、諦めねぇ心とか、そう言う熱いのが堪らなく好きなんだよ! だからこれからもよろしく頼むよ!)
天琉はその言葉を聞いて、自分を見てくれている存在が、ずっと側にいてくれていたのだと気付き、喜びが溢れる。
天琉『応! これからもよろしくな!』
天琉は相棒が出来たことに、炎牙は天琉と話せるようになったことを喜びあっていると、途中から部屋に入ってきた看護師が話しかけてくる。
看護師「あのぉ、苦しそうなので、口回りの包帯とりますね?」
そう言って看護師は天琉の口のほうに手を伸ばし、何かを力任せに剥がし、痛々しい音がバリィ! と鳴り、天琉はその痛みに苦しむ。
天琉「ちょっ! いきなりなんですか!?」
看護師「いえ、先ほどからずっとモゴモゴ言っていたので、苦しいのかなと」
天琉「え、そうなのか? 炎牙」
炎牙(あぁ、相棒ずっとモゴモゴ言ってたぜ? 俺は意志疎通で何言ってるのかわかるけど。 あっ……)
炎牙の最後の「あっ」という言葉に疑問を抱き、天琉が質問をしていると、看護師から質問される。
看護師「あのぉ、さっきから誰と話してるんですか?」
天琉「……え?」
炎牙(わりぃ相棒。実は、俺の声が聞こえてるの、相棒だけなんだよ)
それを聞いた瞬間、天琉は驚いたと同時に青ざめてしまう。
そう、炎牙と話すことが出来るのは、同調している天琉だけなのだ。
今まで天琉は口も包帯ぐるぐる巻きにされた状態で、喋ったとしてもモゴモゴとなるだけだ。
しかし、天琉はそれに気づかずに炎牙と会話をし、しかも誰もいないところで1人でモゴモゴと言っていた状態だったのだ。
端から見れば、ただのヤバイやつである。
看護師「かなりお疲れなんですね。お仲間にも伝えておきます」
そう言って看護師は病室から出ていこうとするが、天琉はなんとか誤解を解こうと引き留めるために身体を動かそうとするが、包帯のせいで身動きがとれない。
しかも、強引に身体を動かそうとしたせいで転がり、布団から落ちてしまい、顔面を強打してしまう。
炎牙(すまねぇ相棒。俺も普通に話せれば良いんだが……)
その後、なんとか誤解を解き、全身の包帯を外してもらった。
以外にも天琉の身体の傷は完治しており、看護師は驚いていた。
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その後、天琉はレナトスと仲間達が待っている客室へと赴き合流した。
そしてレナトスからお礼の言葉を言われ、ヒュドラのことについて聞くことになった。
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ヒュドラとはこの魔族国が作られた理由でもある存在だ。
遥か昔、この魔大陸を脅かしていた存在、ヒュドラ。
9つの首を持ち、多数の魔物達を操り、何人もの同胞達を亡き者にした。
その圧倒的な力による支配のせいで、大陸から食料の獣が減り、生活が苦しくなっていた。
立ち向かう者も何人もいたが、全員が敗れていった。
怯え、恐怖し、自害する者もいたそうだ。
しかし、中には諦めない者もいた。
諦めずに戦おうと立ち向かう勇敢な者が現れたのだ。
その者こそが初代魔王、私の先祖だ。
その言葉に賛同する者は多く、皆が誇りと戦意取り戻し、魔族全員が立ち向かった。
昔は今のように魔法を使える者がいなかったが、かつての魔族たちは今の我々の何倍もの力をもっていた。
ゆえに、全員で戦えば大丈夫だと初代魔王は教えた。
そして、長きにわたる戦いを制し、ヒュドラを打ち倒した。
その後、魔族たちはより平和で強い国を作ろうと考え、初代魔王を筆頭にこの岩の壁に囲まれる場所に国を作り、平和を取り戻したのだ。
しかし、ヒュドラは生きていた。
正確には、私達魔族に対する憎みが現世へと魂を繋ぎ止め、遺骨として残った。
いつしか力を取り戻す好機を狙い、何処かで身を潜めた。
そして復活したのだ。
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魔族を操るという能力は、科学者であるジニアが魔物を操る能力を応用したものだと、改めて日記を見直してわかった。
魔族限定だったことは、魔族が魔物に近い遺伝子を持っていたからだった。
魔大陸での厳しい環境を生き残るために、協力が出来て、より動きやすいように進化した魔物の姿が、今の魔族という説があるらしい。
ヒュドラもやつらを利用し、復讐を果たそうとしたが、失敗に終わった。
今回の騒動はヒュドラによる策略なのか、単なる偶然なのか、今となっては分からないが、互いに利用しあったことによって起きたことだったのだろう。
しかし、因縁であるヒュドラは遂に倒され、魔大陸に真の平和が訪れたのだ。
この戦いに参加した魔族たちには、それぞれ褒美が与えられ全員が喜んでいた。
その中にはもちろんラブリュスも含まれている。
ラブリュスはその強さと、戦いが終わった後に用意した食事の腕の評判から、料理長件魔王城の特別戦闘員として働くことになった。
本人も友人が増えて喜び、同僚となった魔族たちも喜んでいた。
手合わせをお願いするものも多いらしく、全員が返り討ちに合うんだとか。
ラブリュス「さぁ! 疲れた後は美味しいご飯が待ってるよ!」
その言葉を聞いた兵士たちは歓声をあげる。
しかも、今回の戦闘に参加した人間であるシンにも褒美が与えられた。
シンには魔王城の書庫を管理するという役割のもと、自由に読んで良いという権利と職を得た。
本人は興奮しすぎて存在感が上がり、聞いたとき気絶したんだとか。
シン「こんなに本を読める仕事なんて、最高です!!」
しかし、本を読み始めると影の薄さが発動し、書庫を見つけるのが困難になったんだとか。
レナトスが探知魔法を使ってようやく見つけられるほどらしい。
そして勝利を祝福する食事を済ませた後、リベルタス3人は出入り口の門へと赴いた。
そこにはレナトス、キル、ラブリュス、シンが見送りにきていた。
レナトス「またいつでも来い! そのときまた会いに来い」
天琉「応よ! 今度は他の2人もつれてくる」
そう言って2人はグータッチを交わし、別れの挨拶を済ませる。
ネル「レナを、よろしく」
キル「言われずとも私はいつでもレナトス様のお側にいます。あなたも元気でね」
無表情でありながらもお互いに別れの言葉を交わし合う二人。
ライアン「シン、また合おうな」
シン「うん。楽しみにしてるよ」
ラブリュス「来てくれたら、またご馳走を振る舞うよ!」
その言葉を聞いたリベルタス3人、それに加えてその場にいたレナトスとキル、シンがそれを思い浮かべてうっとりする。
それを全員がお互いに確認すると笑いが起きる。
そして、最後の別れの言葉を済ませ、3人は首都から出て、チームハウスへと帰り始めたのだった。




