第26話 「落石注意」
暑い日差しに照らされ熱された砂に覆われる大地は、風が吹き荒れることもなく、動物の声が聞こえるはずもない場所だ。
しかし、そんな場所で大きな物音たて、叫び声をあげていた3人がいた。
何故? それは巨大な岩に追われていたからだ。
ライアン「潰されるー!!」
ライアンは最も落石に近い地点にいたが、他の2人はもっと先の位置にいた。
天琉「何で何回もこんな目に遭うんだぁ!!」
焦って2人が全力疾走で逃げる2人であったが、それとは裏腹にネルは楽しんでいる雰囲気を出しながらケルベロス化したマインに乗って2人よりも先にいた。
ネル「2人とも、遅い、そんなんじゃ、すぐ潰れる」
「「なら俺たちも乗せてくれませんかね!?」」
何故3人がこんなところでこんな目に遭っているのか、それを知るには2日ほど前に遡る必要がある。
それはニュースで見た魔族による被害に関する情報を見ていたことから始まった。
その時間帯はまだ朝の7時ほどだったので、メンバーのほとんどがロビーに集まっていたときだった。
「ニュースをお伝えします。昨夜、魔族の男性による騒動がありました」
その事を聞いていた天琉は異世界ものではあるあるの魔王軍による侵攻なのかと想像する。
「まず1つ目は暴力について。昨夜、友人の男性と口喧嘩をしていたところ、酷く酔った状態であったため加減ができずに突飛ばしてしまったとのことです。友人の男性は腕を骨折するなどした重傷を負ってはいましたが、「自分が悪かった」と供述しています」
それを聞いた天琉は以外にも普通の出来事だなと小さくズッコけると、それを見ていた仲間たちが不思議に思う。
「続いて、2日ほど前にあった町中での犬系魔獣の被害でしたが、魔族国出身の方が飼っていた魔国大陸に生息するペットがマタタビをもらったところ、制御がきかなくなり起こったことだったようです」
それを聞いていた時に、ネルが部屋からやってきて、マインにマタタビを買おうと思っていると言うが、全員でそれを阻止する。
すると依頼が表示されるボードに新規依頼が2つ表示される。
・種族に関する問題を管理している公務員
魔族に対して悪いイメージがつきつつあり、最近の未登録従魔の被害も彼ら何じゃないかと噂される始末。
誤解を解くためにも、魔族国でより詳しい魔族のことに関する事を調べてほしい。
私は危険なところ怖くて行きたくないので代わりに【犠牲】になっても良い方を最低3人を募集。
天琉「仕事しろよ!!」
ライアン「犠牲を強調するのに悪意を感じるな……」
・未来国在住の発明家
発明を手伝ってほしい
手先が器用な者、もしくは発明家1人と、お手伝い1人を募集。
魔族国がある場所はとはとても危険な大陸で、広大な砂の大地のみと言っても過言ではない場所で、雨はろくに降らず、緑もあまりない過酷な場所だ。
天琉「魔族国かぁ、危ないが興味あるし俺が行く」
ネル「私も、魔族国に、行く、出身地だから、慣れてる。それに、知り合いが、いるから、ついでに、会いに行く」
残る1人は誰かと考えていると、ライアンがあることを思い出し自分が魔族国に行くことを提案する。
最初それを聞いた4人は心配の目を向けるよりも、あまりにも意外な提案に驚きの表情を見せる。
ライアン「いやさ、魔族国に昔の知り合いが行ってるのを思い出してさ! 久しぶりに会おうと思ったんだよ」
と言うわけで魔族国に行くメンバーは決まり、未来国に行くのは発明家であるタコとお手伝いとして玲来が行く事になった。
玲来「未来国かぁ。美味しい氷菓子があるって有名だから行ってみたかったんだぁ」
タコ「そっか…」
玲来は声の具合からタコの様子がおかしいことに気がつき、心配して声をかける。
玲来「どうしたの?」
タコ「えっ? い、いやっ! 別に何でもないぞ!?」
タコはこう言うが、明らかにいつもと様子がおかしいことに気づいていたが、玲来はあまり詮索しないようにした。
その後、各自準備をしたのち、魔族国組は魔大陸に行くために港へ、未来国組は大陸横断列車に乗るために駅に向かうために別れたのだった。
そして時は流れ、魔大陸へと向かう船の上で船旅を満喫しながら魔大陸とはどんなところなのかと心を踊らせる。
天琉「魔族国ってキツいってイメージが強いだけであんま知らないんだよなぁ」
ネル「その通り。でも、港の海は、とても綺麗」
ライアン「マジか! 魔族の可愛い子をナンパできそうだな!」
天琉「お前は相変わらずそればっかだな」
と言いつつも天琉は内心また新たな大陸に行けるという喜びを顔に出して楽しみにしていた。
だが、周りにいた船員たちは皆険しい表情を浮かべていた。
数時間後
ネル以外の2人は荒れ狂う波による船の揺れで酔ってしまい、海に胃の中の物を吐き出していた。
天琉「な、なんでこんな、急に、波が激し… ウッ!」
ライアン「調子に乗った、罰ってやつなのか? それともナンパへの試練なのか…? ウッ!」
自分の言いたいことを言い終わったあとに再び胃の中の物を荒れ狂う海へと吐き捨てる。
ネル「言い忘れてた。魔族国に、行くまでの、国境の海は、常に荒れてる。なめてたら、そうなる」
「「先に言ってほしかったな!!」」
その後天琉がなんとか吐き気が収まり、通りかかった船員にあとどれくらいでこの波を越えられるのかを聞いてみると、あと2時間はかかるらしい。
その事を聞いた瞬間に絶望と共に再び吐き気が沸いてきて、ライアンと共にまた海にぶちまけるのだった。
それを見ていたネルは、こんな揺れ大したことないと思いながらマインと共に2人を見守るのだった。
2時間経ち、それからさらに1時間経過
ようやく魔族国の大陸にたどり着いた3人はその景色の綺麗さに目を奪われるが、空の色が青ではなく黄色のようになっていたことから、別の世界に来てしまったとも思えた。
そこからまた魔族国の首都を目指すが、そこからもまた苦労の連続。
荒れ狂う砂嵐に飛ばされそうになったり、大型のE級魔獣との戦闘になったり、ひと休みしていたら蟻地獄のような魔獣に襲われたり、あまり見られない場所に実っている果実だなと思っていたら食人植物で、食べられそうになったりといろんな事が起こった。
そして、数時間かけてようやく魔族国首都へとたどり着いた3人であったが、ネル以外の2人は慣れない環境の厳しさに疲れが溜まり、ぐったりとしていた。
首都は魔獣からの襲撃を防ぐように、自然にできた岩の壁の中に位置しており、中には想像できないほどの町並みが広がっている。
門での検査を済ませて首都に入り、宿屋で部屋を借り、部屋へ入った3人の内2人は布団へと倒れる。
「「つ、疲れた…」」
疲労を回復させるために今日はもう休もうとライアンが提案するが、ネルはまだまだ行けると言うが、さすがの天琉でもキツかったため今日は休み、調査は明日にすることとした。
◆
翌日、万全な状態になった3人は調べることを分けて別れて調査することにした。
天琉、魔族の特徴
ネル、主に飼うペット
ライアン、色々聞き込み
天琉は見た目や行動などを観察して普通の人間との共通点と違う点を探り、ネルは飼っているペットや植物はどんなものなのかを調べ、ライアンは持ち前のコミュ力でいろんな事を聞き出す。
1日かかって3人は夜に宿屋の部屋に集まり情報をまとめる。
・天琉担当、魔族の特徴
基本的には普通の人間と変わらないが、第1印象の特徴としては頭から生えてる角。
ネルみたいに額からだったり、頭の両サイドだったり、中には天辺から生えてる人もいたな。
本数は個人によって違うが、見てきたところ1本と2本が多かったな。
なんか1人だけ5本のやつがいてビックリしたな。
あと単純にすごいのはやっぱ身体能力だな。
路地裏で喧嘩してるとこ見かけたんだが、殴り飛ばされたさきにあった壁崩れるし、飛ばされた方もピンピンしてるしで…。
あー、でもその家に住んでた婆さんにボコられてたな。
まぁ、それはそれでやばかったがな…。
でも意外と温厚で、聞いてみたら喧嘩も叱り方も魔族ならあれくらい普通らしい。
前のニュースの証言が正しいなら、悪気がある訳じゃないってのが良くわかるな。
・ネル担当、飼うペットについて
飼うのは、魔族国の、大陸にしか、生息しない生き物、ばっかり。
大体は、犬、猫、鳥の種類が多い。
飼ってる子は、マインみたいに、ちゃんと、従魔にしてあったし、登録もしてあった。
だから、最近の騒動とは、関係ない。
ついでだけど、食肉植物も、飼ってるらしい。
でも、人になつく種類、ばかりだった。
・ライアン担当、色々聞き込み
大方は二人と同じだな。
話してみると皆良い奴ばっかだし、喋ってて凄い楽しいし、のりがめっちゃ良い。
俺のジョークとかめっちゃ笑ってくれるし、すぐに信じてくれて焦ったけど、そこも良かったな。
俺から見ても良い奴らだってことがわかるな。
しかも俺が道を聞いたらすぐに答えてくれんだよ。
それらをまとめた結果では、魔族は普通は心優しく温厚で、悪意があっての行動は絶対にすることはないというのが、現時点での答え。
天琉とライアンはネルの事を知っているため、わかりきった答えではあった。
ライアン「あっ、でも変な噂聞いたな」
その噂は聞き込み中にライアンが魔族のお婆さんから聞いたらしい。
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「夜な夜な魔族の人が襲われてるらしいのよ。現場を見た人が言ってたのよ! 月の光に照らされるように不気味に光る赤色の片眼の男が魔族を襲っているところを見たって…!」
信憑性に欠ける噂ではあったが、そんなに怖がる理由があるとも思い、一応聞いてみる。
ライアン「それほんとなのか?」
「それがね。その見た人が赤目の男が去ったところでその人の安否を確認したんだけど、何をされたのか全く覚えてないらしいのよ。だけど、襲われたって言う人には確かに傷が付いてて、それからそんな人が何人も現れて、もう怖くって」
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それを聞いていた2人は魔族に関する事件やも知れないと言う考えが浮かぶ。
ライアン「そのお婆さんが考えるには、ここから歩いて半日はかかる場所に1人で暮らしてるっていう魔族が怪しいんだと」
天琉「なんでまたそんな信憑性のない事を…」
それを言うにはちゃんとした噂があるらしく、なんでもその魔族は、何人もの魔族を恐怖に陥れ、最後には記憶をも奪い去っていくと言う噂がたっているらしい。
その事を聞いた天琉であったが、被害が出ていると言う以上見捨てるわけにもいかず、ついでにその魔族の調査ためにも、次の日はそこに行くことにした。
◆
翌日、首都を出発して数時間たち3人は周りが岩だらけの砂道を進んでいた。
中には不安定な場所には絶妙なバランスを保ってその場に止まる大きな岩もあり、いつ落ちてくるかと不安になっていた。
ライアン「いつ落ちてくるかわかんねぇなぁ」
天琉「やめろ言うな。フラグが立って落ちてきたらどうする」
そんなことを言いながら警戒心マックスで進んでいく。
しばらく進んでいく内に天琉が何かの気配を察知して、2人に気を付けるように言う。
辺りを警戒するが、それ以降はなにも起こらず、ますます不気味になる。
すると、いきなり後ろから犬の鳴き声が聞こえてきて2人は驚きの声を上げる。
ネル「あまり、緊張しすぎても、ダメ」
それはネルが気を利かせたのか、マインにわざと吠えさせたものだった。
天琉「ネルさん!? 悪気がないのはわかるが、もう少し他に無いかな!?」
天琉がいつものごとくツッコミをしていると、ライアンの肩を誰かが触る。
その感覚は人差し指で2回触られた感触だった。
ライアン「ちょっと、今取り込み中… 」
そう言って後ろを向くと、1匹のゴブリンがたっており、まるで「よっ!」と言っているように片方の手のひらをライアンに向けており、後ろには大量のゴブリンもおり、全員が同じく手のひらをライアンに向けていた。
ライアン「デェェェタァァァァ!!」
急いで次元収納から銃を取り出したライアンは直ぐに撃とうとするが、引き金を引く前にゴブリンに銃口の向きを変えられはずしてしまう。
その声を聞き付けた天琉はすぐに刀を抜いて、ライアンの銃口の向きを変えたゴブリンを倒すが、他のゴブリンが周りを囲む。
ライアンは油断したとは言え、3人はゴブリン程度であれば余裕で倒せる。
しかし、ゴブリンたちは3人が武器を構えたところで何故か血相変えて逃げていく。
天琉「な、なんだいきなり?」
ライアン「俺たちに恐れ慄いたか!」
そんなことを言っているライアンにツッコミをいれていると、ネルが変な音がすると言ってある方向を指差す。
そこには、絶妙なバランスを保っていた岩があり、それは嫌な音をたてながら揺れていた。
天琉「ま、まさか…」
そう言った瞬間に、その大きな岩は三人の方に向かって転がってきたのだった。
原因は、先ほどライアンがはずした弾丸が岩に当たったからである。
慌てていた男2人であったが、ネルはたった1人でマインに乗って逃げていた。
そして、冒頭の現在に至る
ライアン「どうすんだよこれぇ!」
天琉「どうにもなんねぇって! 両サイドは高い岩の壁だし! こんなところを飛び越えるだけの脚力ねぇよ!」
そう言いながらも逃げ続ける3人と1匹であったが、先の方の行き止まりがネルの目にうつり、それを2人に報告する。
走り続けてしばらくして壁がすぐそこまで迫ってきたところでネルは先に安全な横の壁の上の道にマインと共に移動して、2人を助け出す準備を始める。
ネルはライアンにロープを投げて、それに掴まるように指示する。
ライアンはその通りにロープを掴むが、引っ張り上げられたあとに地面に何度も叩きつけられるもなんとかマインの背中に乗る。
次は天琉の番だと言いロープを投げるが、投げたロープが途中の岩に引っ掛かってしまう。
もう絶体絶命と言うところまで来てしまい、天琉はどうしようと考え尽くすが、冷静な考えができなくなってしまう。
天琉「くっそぉ! せめて追ってくる岩を飛び越えられるくらいの脚力があれば…!」
その言葉を発した瞬間、天琉は何故かハッとさせられる。
それは彼が声を聞いたからだった。
なぜ今こんな幻聴が? なぜそんな事を? そう思ってはいたが信用できるとも思えた。
そしてその言葉を実行する。
その言葉の内容は…
「飛べ!!」
勢い良くジャンプした天琉は驚いていた。
何故ならいつもの何倍もの跳躍で、追ってくる巨大な岩を難なく飛び越える。
その光景を遠くから見ていたネルは驚いていたが、同時に奇妙なものも見た。
それは天琉の足を覆っていた紅色のオーラだった。
だがそのオーラは役目を追えるように自然と消えていった。
しかしその状況にもっとも驚いていたのは天琉自身であった。
天琉「なんだ今の… 凄い飛んだぞ」
その状況に驚きながらも、先ほど聞こえてきた声は何だったのだろうと考えたが、答えはでなかった。




