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第14話 【お散歩へ行こう!】

あれから小一時間ほど経ち、昼食を食べ終えた一同はそれぞれのやりたいことをしていた。


ネルは食後にマインと散歩に出掛け、天琉とライアンは購入した木材で犬小屋作りに取りかかっている。


ネル「楽しい?」


街中を歩くネルはマインに問いかけ、マインはとても嬉しそうに一回吠える。

二人が心地よい気分で歩いていると、後ろから二人の名前を呼ぶ聞き慣れた声が聞こえてくる。


タコ「俺も一緒に行かせてくれ!」


その声の主はタコであり、なぜ一緒に行かなかったのかと疑問に思うが、理由は簡単だ。

犬小屋一号の調節ミスでモグモグされていたタコは、道端に捨てられたガムのように、よだれまみれでロビーに倒れていた。

そこから目が覚めるのと身体を洗うのとで時間がかかってしまったのだ。


ネル「なんで、一緒に?」


タコ「いや、さっき悪いことしたし名誉挽回を…」


そう言ってタコはマインを撫でようとしたが、当然唸り声を上げてそれを拒否する。

マインの気持ちを察したタコは冷や汗をかきながらそっと手を引っ込め、散歩についていくもうひとつの理由を話す。


タコ「それに、散歩してたら良いアイディアが浮かぶかもだからな」


ネル「そういう、もの?」


タコ「そうさ。部屋に閉じこもってるだけじゃ、息がつまるし、何より楽しいことや発見を見逃しがちだ。だから、俺たち発明家にとって、結構大切なことなんだ」


昼間の失態がチャラになるようなそんなまともな発明家の言葉を聞いた二人は少し感心し、創作者の認識を改める。


ネルが感心したことを伝えると、タコは少し照れた後に自分も教わったことだと言う。


ネル「だれに、教わった?」


タコ「んー、まぁ簡単に言うと、かあ… いや、恩人かな」


その人を思い浮かべたであろうタコは、語れることが嬉しそうだった。


雰囲気が良くなったところで、タコはネルに散歩コースを聞き、ネルは適当と言って歩いていく。


そんな2人を見つめる影があるとも知らずに。



しばらく歩いていると、偶然にもタスク受付所に来ていて、ついでにランに挨拶しようと思い、屋内に入る。


ラン「あっ! マーイーンーちゃーん!」


そう言いながらランは受付場からジャンプして飛びかかるが、マインを抱えていたネルはそれをよける。


運悪くタコは後ろのほうにいたので、ランに押し倒されてしまい、後頭部と背中を強打する。


ラン「やはり避けられてしまいましたか… ですが、タコさんを間近で見られたので、十分癒されましたぁ」


タコ「喜ぶか怒るかしたいけど、とりあえずどいてください…。苦しい…」


その後、立ち上がったランはタコに謝ったあと、すぐにマインの頭を優しく撫で、顔が緩む。


ラン「まったくぅ、リベルタスの皆さんはどれだけ私に良くしてくれるんですかぁ~」


ネル「別に、そんなつもり、ない」


ラン「それでも! 私の普段の楽しみがボリュームアップしたことには変わりありません!」


それを言いきったランはまるで機関車のような音と煙の鼻息を出し、目を輝かせる。


それを見ていたタコは、少し過剰反応過ぎるランに苦笑いするが、普通にマインを可愛がるランを見て、平和だなと思う。


それと同時にランのリベルタスへの反応ぶりから、いつかファンクラブなんかを設立しそうだなと考えてしまう。


タコ(いや、さすがのランさんもそれはないか…)


さすがに考えすぎであり、何よりも自分達への過大評価ぎると内心思い、その考えを除外した。


ラン「マインちゃんのお顔の絵が描いてあるマグカップとかどうですかね? あとぬいぐるみ!」


ネル「なんのことか、わからない」


その会話を聞いたタコは「いやワンチャンあるなこれ」と内心思うのだった。



その後、めい一杯遊ぼうというタコの提案で、3人は敷地の広いドッグランに来ていた。


ついたやいなや、タコは収納空間からオモチャを1つとりだし、それで遊ぼうと提案。

それはドッグランや犬と遊ぶと言ったらこれと出てくる王道のフリスビーだった。


ネル「それ、どうやって、遊ぶ?」


タコ「簡単だ。横向きに投げて飛ばすんだ。お手本見せるぞ」


そう言うとタコはマインに投げたら取ってくるように頼み、遠くへ投げる。


マインはフリスビーを追って走っていき、華麗にジャンプしてそれをキャッチし、咥えたまま戻ってくる。

どうやら楽しかったらしく、戻ってくると尻尾を振りながらタコにもう一回とねだる。


それから数回にわたり、タコが投げ続けたが、さすがに疲れてネルに交代。


タコ「遠くに投げすぎるなよ?」


ネル「大丈夫」


そう言いながらネルはタコの倍の距離と高さに投げるが、マインは元の姿になってそれを取りに行く。


その様子を眺めるため、近くのベンチに座ると隣に1人の男が座り、そのまま一緒にその様子を見ていた。

身体はかなりガッチリした感じだが、顔はフードを被っていて見えなかった。


「かわいくてかっけぇな。あの犬っころ」


タコ「あぁ、うちのマインですか? わかりますか~」


しばらく眺めていると、フードの男はもっとかっこいいのを自分はつれて来ているという。


タコ「え! 見たい!」


「良いぜ。連れの魔族と犬っころもつれてきな」


そう言ってフードの男は立ち上がり、茂みが多い方へと歩いていく。


ネルとマインと合流し、しばらく奥の方へと歩いていき、あまり人の寄り付かない一番端の方に来た。


すると、フードの男は立ち止まり、少しの間静寂を作り出すが、それはすぐに終わり、フードの男は喋り始める。


「さて、見せる前に、ちょいと試したいことがあってな」


そう言うと男はスピーカーのような物を取りだし、ネルにそれを向ける。


「ちょっと、付き合ってくれよ」


フードの男はスピーカーのような機械から音を流し始め、タコは最初音波やノイズのような音だなと思った。


しかし、そんな考えは突然にして吹っ飛んだ。


何故なら、その音を聞いたネルが突然耳を塞ぎ、その場に座り込んで苦しみ始めたからだ。


タコ「お、おい! ネル!? 大丈夫か!?」


タコはネルの背中に手を当て、体調を心配し、マインは心配と不安が混じった弱々しい鳴き声を出して寄り添う。


普段は無表情なネルのとても苦しそうな表情を初めて見るということもあり、余計に心配になる。


「ったく、まだ調整がうまくいかねぇのか?」


そんな様子を見るフードの男は、思い通りじゃなかったのか頭をかく。

そんな他人事のような口調で話すフードの男に苛立ったタコは声を荒げる。


タコ「おまえ、ネルに何をした!」


「実験に付き合ってもらってるだけだよ。俺の目的を達成するためにな」


タコ「目的…? いったい何を…」


そんな会話の最中、タコはマインの唸り声に気がつく。

マインはフードの男への怒りが頂点に達し、ケルベロスの姿となって襲いかかる。


タコ「マイン! 待て!!」


「ちっ、躾のなってねぇ犬っころだなぁ?」


マインがフードの男を引き裂こうとした瞬間、地面から突然尻尾のようなものが現れ、マインを弾き飛ばす。


「お前、忘れたとは言わせねぇぞ。俺が、いや、俺とお前が一番憎いやつのことを…!」


先程の衝撃で生まれた風で、タコだけがフードの男の素顔を一瞬だけ見る。

フードの男の言葉を聞き、その顔を見た瞬間、タコは1つのことを思い出す。


いや、思い出してしまう。


タコ「おまえ、まさか…」


「その通りだ。ま、今日はもういいや。試すもん試したし、お前に会えたし、俺は帰る」


そう言うとフードの男はスピーカーの音を消し、ネルを解放するが、ネルはまだ疲れた様子だった。


タコ「待て! お前には聞きたいことが…!」


「あ! そうだ、かっこいいやつ見せる約束忘れてたな! わりぃわりぃ!」


そう言ってフードの男が指を鳴らすと、地面の中から大きな蛇が姿を現す。

その蛇はE級上位魔獣に部類する蛇であり、名前は「アースサーペント」。

先程マインを叩き飛ばした尻尾の正体はこいつだろう。


アースサーペントはフードの男を守るように間に入る。


フードの男は自分が逃げるまで戦えと命令すると、アースサーペントは威嚇の声をあげる。


「最後に言っとくぞ? お前が関わらなくても、あいつはお前をほっとく訳がねぇ」


そう言うとフードの男は歩いてその場を去っていく。


タコはフードの男を追いたかったが、まだ回復していないネルを置いていくわけにはいかない。

そして、この蛇を野放しにしては、ドッグランにいる一般人に被害を出しかねない。

それを考え、タコはフードの男を追うのをやめ、武器を取りだし、マインと協力して大蛇との戦いに望む。


マインは三つの口で噛みつき、前足で大蛇の身体を抑える。

だが、大蛇は長い身体という体躯を駆使し、尻尾でマインの身体を巻き絞めようとするが、タコが両剣をブーメランのようにして投げて防ぐ。


タコ「マイン! そのまま抑えててくれ!」


そう言ってタコは戻ってきた両剣の威力を最大に調整し、再びブーメランのように投げる。


タコ「ブーメランブレード!」


両剣は大蛇の尻尾を切り落とすが、それに怒った大蛇はタコに噛みつこうとする。


しかし、その攻撃は回復したネルが自分の槍を大蛇の目に投げて貫いたことで阻止された。

その隙を狙い、タコは戻ってきた両剣で大蛇の首を切断し、戦いは終わった。


すっかり遠くのほうにいたフードの男は、タコの様子を見て笑みを浮かべ、再び歩き始める。


「近い内にまた会おうぜ…。兄弟…」



その後、チームハウスに戻り、起きた出来事を残っていた2人に説明し、聞いた2人は気を付けた方がいいと考える。


それはさておきで、タコは天琉が傷だらけなことにツッコミをいれる。


タコ「お前どうした?」


天琉「いや、自分でもわからん…」


3人が散歩に出掛けている間、犬小屋を作っていた2人だったが、天琉はなぜか散々な目にあっていた。

ミスをしてハンマーで自分の手を叩いたり、ライアンがこけて飛んできたいろんな工具が頭から降り注いだりしたらしい。


ライアン「俺も驚いてる。普通は俺がこうなるはずなんだが…」


ネル「自分でも、自覚、してたの?」


ライアン「まぁ、俺のキャラ的に?」


天琉「今回のボコられは俺とタコだったか…」


そんな会話をした後、完成した犬小屋をマインにプレゼントし、なんとか気に入ってもらえた。


しかしその夜、マインの犬小屋完成を祝して、いつもよりもスペシャルなネルの料理が振る舞われたのは、また別の話。



タコは自室で発明に手を付けず、ドッグランで出会ったフードの男のことを思い出す。


タコ「忘れるわけない…。 忘れられるわけが…」


そう言いながらタコはかつての、恩人のことを思い出し、それと同時にフードの男が言っていた「あいつ」のことも、思い出していたのだった。

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