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第13話 【犬小屋を作ろう!】

事件解決から3日経ち、いつも通りの清々しい平和な朝がやってきた。


天琉は訓練場にて日課の鍛練を行い、タコは朝から発明に取り組み、ライアンはまだ布団に潜っている。


だが、3人にとってこの朝はいつもの優雅な時ではなく、生命の危機を迎えるかもしれない日だった。


その証拠に、いつもと違う険しい表情で自分がいつもすることをしている。


なぜなら、本日の料理担当でネルの番が回ってきてしまったからだ。


かといって食べないというわけではなく、少し冷めた状態で食べる。


いくら味が残念でも、一生懸命作ったものを無下にするわけにはいかない。


そして、食べ物を粗末にしてはいけないという考えから、食べるようにしている。


わざわざ冷めてから食べるのは、最近になってネルの料理は時間がたつと味がましになるということがわかったから。


どう調べたかというと、タコが天琉とライアン、主にライアンを使って比較して突き止めた。


例えると、フライドポテトが出来立ては美味しいけど冷めたら不味くなる現象の逆である。


ちなみに、タコは独自に他の不味いものも冷めたらましになるか2人で試してしまった罪滅ぼしで自分で食べて調べた。


結果腹を壊しただけで、ネルの料理が理論を越えたレベルでおかしいことがわかった。


そんなわけで、3人は朝食ができても、少し冷めてから食べることにし、そのために各々時間を潰していた。


天琉「あと30分はやるか。終わる時間とっくに過ぎてるけど、今日は…」


そんなことを言っていると、頭にチクッとした感覚が走り、その痛みは徐々に増していき、「アダダダッ!」と叫びながらその場で倒れ転がり回る。


ネル「おはよう。ごはん、できた」


痛みで頭を抑えて悶絶していると、ネルの声が聞こえてきた。


ネル「最近、みんな、できてたて、食べさせて、あげれて、ない。だから、直接、呼びに来た」


ネルは純粋な思いであったが、逃げる3人に対する少しの怒りもあったのかやり方は荒々しかった。


天琉「だからって、いくらなんでもマインに噛ませるのはやめてくれ…。すっごい痛い…!」


天琉は頭に突き刺さるような感覚で、マインが頭に噛み付いてきたのだと察していた。


ネル「甘噛みに、するよう、頼んだ」


天琉「いや、こう見えて流血してるよ? 緋色髪だからわかりにくいかもだけど!」


ネル「わかってた」


天琉「流血してもなお甘噛みというか!?」


まだ抵抗するだけの気持ちがあった天琉は、不屈の精神を燃やし、ネルとマインがいる方を向いて走り去ろうとした。


しかし、広がっていた光景をみて、天琉の炎は一瞬にして弱くなってしまった。


なぜなら、マインはもとの姿になっており、3つの頭のうち2つには、タコとライアンの頭が咥えられていたからだ。


2人は天琉より先に捕まり、逃げられないように咥えられている。


天琉「や、やってみなきゃわかんねぇ!」


天琉は再び己の心に火をつけ、ほぼやけくそ精神で思いっきり飛び出した。


しかし、頭を残った口に納められ、3人は出来立てホヤホヤのネルのご飯のもとに連行され、リベルタスの日常が始まるのだった。



時は進み昼食の時間の少し前、全員がロビーに集まり、タコがあるものを持ってくるのを待っていた。


マインは普段は子犬の姿になっていて、基本はネルが両手で抱いている。


すると、タコの自室の扉が大きな音を立てて開き、中からタコが勢いよく出てくる。


タコ「出来たぜ! 我ながらいいできだ!」


妙に興奮し、作ってきたものを見せるためにロビーに走ってくる。


そんなタコが作ったのは、マインの犬小屋だ。


ここ数日たって思い付いたことだが、マインには犬小屋というものはなく、せっかくだし作ろうとなった。


犬だって、1人でゆっくり寝たいときがあるだろうから。


マインが寝ているのはネルの部屋で、基本は同じ布団に入って寝ている。


というわけで、自分から名乗り出たタコが作ることになり、マインの体を調べ尽くした後、自室に走って行き、作り終えるまで待っていたというわけだ。


タコ「待たせたな! これぞ俺が作り出した究極の犬小屋だ!」


そう言ってタコは収納空間から作った犬小屋を出す。


それはなんとも近未来的なデザインの犬小屋で、とてもキラキラとしていた。


それを見た3人、そしてマインも目を輝かせてその全体を見る。


ネル「早速、居心地を、試させて、あげたい」


そう言ってマインをおろそうとしたが、扉がついていて入れなかった。


天琉「ん? なんか、扉の横にパネルみたいなのがついてるぞ?」


それを見て天琉が触ってみるが、エラーが起きたような機械音が鳴るだけで開かない。


ライアン「おいおい、これじゃ入れないぞ?」


そんなライアンの疑問を聞いたタコは「ちっちっ」と言いながら人差し指を出して揺らす。


タコ「これはただの犬小屋じゃない。超絶安心安全な防衛機能を搭載した、スーパー犬小屋なのだ!」


そう言ってタコはマインを犬小屋の扉の前に立たせ、天琉が触ったパネルに、マインの右前足の肉球を当てる。


すると、「肉球認証クリア」という音声が流れる。


タコ「まずポイントとして、生体認証によるセキュリティロックを搭載した!」


それを見ていた全員が称賛の声をかけようとすると、また違うものが犬小屋から出てくる。


それを見たタコ以外の全員が頭の上にハテナを浮かべる。


何やらマイクのようなもので、マインに吠えるように頼み、マインが吠えると「音声認証クリア」と音声が流れる。


すこし厳重すぎることに苦笑いしながら気を取り直して凄いの一言をかけようとしたが、また別の物が出てきて、全員言葉を失った。


その後出てきたものは、網膜認証、鼻先認証、口臭認証などなどで、見ている3人と色々されているマインも訳がわからなくなっていた。


最後に体毛認証を終えると、ようやく扉が開かれた。


タコ「な? 凄いだろ? これだけ厳重ならだれも侵入できないぜ?」


天琉「いや、厳重にもほどがあるだろ! いや凄いけど! 犬小屋につけていい機能の範囲を余裕で限界突破しちゃってるから!」


タコ「いやぁ~ 犬小屋作ったことなくて、つい張り切りすぎちまった~」


自分の犬小屋製作時の気持ちを語り、タコは少し照れ顔になった。


天琉「まぁ、始めてのことにチャレンジするとき、自然と感情が高ぶるのは俺も一緒だし、仕方ないか」


その様子に負け、自分も同じことがあると言うことで納得する。


もう防犯機能だけでお腹いっぱいだが、次は内装を見てみる。


その中は見た目に反して広く、なんと空調機能まで備わっていた。


タコ「チームハウス同様に空間拡張で広くして、冷暖房完備、あとついでに犬用テレビもつけた」


天琉「いや、詰め込みすぎだろ! すごいけどっ! 冷暖房はともかくテレビまで備わってる犬小屋なんて聞いたことないから!」


2人が作った犬小屋についての話し合いをしているのをよそに、ネルとライアンはマインがその犬小屋に入っているところを見る。


色々な認証やら説明で少し疲れてしまい、空調が効いていることもあってぐっすりと眠っている。


ネル「そういえば、今日、ライアン、おとなしい。なんで?」


ライアン「いやぁ、下手したらまた傷が、ね?」


事件のこともあり、ライアンは犬系魔獣にたいし、少し恐怖心を持っていた。


そのため、マインの件に関しては、あまりふざけないようにしている。


今でもまだ噛まれるんじゃないか不安であり、マインは金髪のイメージがまだ悪く、お互いに距離が縮まらない。


ちなみに、天琉とタコはというと仲良くはなっているほうで、ネル曰くマインは2人の内、天琉のほうが好きらしい。

理由は野性的な匂いがして親近感が沸くのだとか。


天琉はそれに心当たりがあり、少し複雑な気分だったが、懐かれているなら良いかと納得している。


それはそうと、ライアンはかわいい生物であるマインに歩み寄りたいとは思っていた。


だが、トラウマになったのがかわいい系の犬系魔獣だったのがいけなかった。


ネル「じっくりで、いいと思う。すぐ、よくなると、思う」


ライアン「あんがとな。でも、何を根拠に…」


そんなことを言っていると、天琉とタコのほうから何やら物騒なワードが聞こえてくる。


タコ「さらに! 極め付きに緊急脱出機能も搭載してある!」


タコは少し興奮気味で、回りの声が聞こえなくなっていて、その起動ボタンを押そうとする。


天琉「だから詰め込みす…!」


そんなツッコミの途中でボタンを押してしまい、眠っていたマインは吹っ飛ばされてしまう。


タコ「あ、飛ばす威力の調整ミスた…」


天琉「何やっとんじゃぁ!」


今マインは寝ている状態から起きたばかりで、冷静に対応できないはず。


しかも、子犬の状態で高いところから落ちればただでは済まない。


全員が一斉に走りだし、マインをキャッチして助けようとする。


そして、落ちる寸前でキャッチしたのは落下地点から一番近かったライアンだった。


サッカーのスライディングのように滑り込んでなんとかキャッチしたのだ。


全員がその状況に肩を落としてホッとするが、ライアンのトラウマと、マインの金髪嫌いを思い出して気にする。


どうしようかとあたふたするが、ネルが見ているように言って2人を止めた。


ライアンは何とかキャッチできたことにホッとしたが、マインに凝視されたことで、すぐに噛まれるのではと恐れて青ざめる。


しかし、マインはライアンを見つめた後、なにかを理解した後、ライアンに御礼をするように顔を舐め、可愛らしく1回吠えた。


ネル「ライアンが、いい人だって、わかったみたい。マインは、ライアンの良いとこ、直に見て、なかった。だから、警戒してただけ」


それを聞いて3人は、よかったという思いに包まれ、ライアンはマインを撫で、マインはとても嬉しそうにそれを受け入れる。


そんなの様子をほっこりした気分で見ていると、マインが突然なにかを思い出したかのようにライアンの元を離れる。


すると、タコのほうへと歩み始め、近づくに連れて圧と身体が大きくなっていく。


天琉「さて、木で犬小屋作るか。あ、でも空調機能はつけてあげてくれよ? 今日はできないかもだが」


ライアン「タコ、俺ら木材買ってくるから、あとよろしく」


ネル「骨は、拾ってあげる」


そう言って3人は今から起こる出来事を察して、ロビーにタコとマインを残して外に出る。


タコ「えっ、皆待ってくれ! あれ!? 今回俺がこうなる流れ!? ちょっ…!」


言いきる前にチームハウスの扉はしまり、言葉が遮られる。


タコ「ちょっ、待って!? 頼む! わざとじゃないんだって! 話をさせてくれ! 話を! はな…!」


扉がしまった後、何やら言い訳をするような大声が聞こえたが、まだ言いきる前に叫び声が響き、静寂に包まれたのだった。


何故いきなり静かになったのか、簡単に言うと、後に犬小屋の主になる存在にモグモグされているからだ。


これだけで、誰もがタコがどうなったかわかるだろう。



そんな事が起きている時、木材を買っている最中で、天琉はとある心配をライアンに伝える。


天琉「お前… 今回1回しかボコられてないけど、次回から大丈夫か?」


ライアン「なんの心配してんだよ」


ライアンのボコられ体質に対し、正常な思考とツッコミができなくなった天琉であった。





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