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3.カネメノモン

「ええと、つまり。レイブンお義兄さまがこの『カネメノモン』を取りに来るのね」

「はい、必ずこちらをお渡しくださいませ」

 私はスティーブンから手渡されたものを見て首を傾げる。


「お義兄さまはこんなものもらって何にするのかしら?」

 そう、スティーブンから渡されたのは、私の目から見たらどうしてもおもちゃにしか見えない宝石やアクセサリーのレプリカたち。

「どうみてもおもちゃじゃなくって?おままごとでもして遊びたいのかしら…」


 私の呟きにスティーブンは、はっはっはっと笑った。

「それは幼き頃から本物しか見ておらず、本物しか触れてこなかったお嬢様にとってはそうでしょうな。ですがあの者には充分です」

「これが俗に言う『カネメノモン』なのね…」

 ほう、と感心していると、目の前のスティーブンが肩を震わせて噴き出した。


―――――


「オイ、準備してあるんだろうな」

 朝食も摂り終えて、本を読んでいる時にレイブンお義兄さまがいきなり部屋に入ってきた。

「まあ、まあまあお義兄さま!お待ちしておりましたわ。私あれからカネメノモン、きちんと集めましたの」

 本を閉じてぱああっと自分でもわかるくらいの笑顔が出てしまう。だってお義兄さまが自ら訪問してくださって!しかもノックも無しだなんて、どれだけ私に心を許してくださったのだろう。もう!嬉しすぎます!


「はい、こちらがカネメノモンですわ」


 そう言って先ほどスティーブンから手渡された箱をそのままお義兄さまに渡すと。


「フン…さすが侯爵家令嬢。もちもんだけはご立派なこって」

 ぺっと吐き捨てるようにお義兄さまが言うのだけれど…


―――それって、私が小さな頃にお姫様ごっこで使っていたおもちゃなのだけれど…


「あの…お義兄さま?本当にそれだけでいいんですの?」

「ああ???他にも何か持ってんのかよ。なら出せや」

「い!いえ!!他には(おもちゃは)持っていませんわ…!あ、で、でも、またどこかで見つかりましたらお義兄さまにお渡しすると誓います!私にはもう不要なものですので」


 私の言葉になぜかお義兄さまは一回目を丸くして、そして舌なめずりをされた。あらやだそんな仕草も妖艶に見えるほど私のお義兄さまは美しいわ。

「…へえ、まだ持ってんのか…。さっすが侯爵令嬢様だなぁ」

「ええ、探せば無尽蔵に出てくるはずですわ!(おもちゃが)…あの、ぜひ楽しんでくださいませね」


 まさかのいい年齢の義兄におままごと遊びの趣味があっただなんて、とっても興味深い。


「楽しむ…?まぁ、これを質に入れれば相当楽しめるけどな」

 お義兄様の言葉は私の耳には届かなかった。


―――――――


 その日の夕方、血相を変えてレイブンお義兄さまは屋敷に戻ってきた…らしい。


「お゛お゛お゛い゛!!!!!!くそ!!!!!アンジェラお前このクソ野郎!!!今すぐ出てこいぶっ潰してやる!!!!!!」

 ロビーでお義兄さまがなにか騒いでるようだったけど、扉の防音がやっぱり我が家は素晴らしくて全然聞こえない。でも、お義兄さまが帰ってらっしゃったので私は嬉しくなって部屋から飛び出してお義兄さまをお迎えした。


「お義兄さま!おかえりなさいませ!今日は市井にお出かけになったのでしょう?いかがでした??」

 満面の笑みで問うと。

「いかがでしたもなんもねえよこのクソ!!!お前が用意した金目のもん!ぜんぶ偽物じゃねえか!!!」


 …。


 ………。


 ……???????


「???ええと…そうですけれども?ええ?お義兄さま何をおかしなことをおっしゃるの???あんなの、誰が見ても偽物じゃありませんか。まさかお義兄さまとあろうお人が偽物とお気づきになってなかったとかそんなことありえませんわよね!??!?」

「んな…っ!あ…っ!あ…っいや、ちが…っ」

「もうっ、嫌ですわ~~っ!お義兄さまったら!!!次期侯爵さまともあろうお方が!そんなご冗談!笑うしかないですわ~~っ!」

 もう堪らない!なんて素敵なユーモアで私を笑わせてくださるお義兄さまなんだろう!思わず声を上げて笑ってしまう。


 あ、あと…これだけは伝えておきたいと思っていたんだわ。

「…ねえお義兄さま?」

 眉をピクリと動かすだけでお義兄さまが返事してくださる!ああ、とても貴族ぽいですわ!もう、完璧じゃありませんか。


「あの…アンジェラももう十八ですので、なかなか昔のようにはいきませんが、お義兄さまがお望みであるのなら、いくらでもお付き合いできます。…その、お姫様ごっことか、王子様ごっことか…」

 

 うふふ、おままごとのお誘いなんて十数年ぶりだわ!!

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