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結婚会議  作者: まるサンカク四角
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悪寒

今日やっと俺の結婚が決まった。大学を出て新卒で大手企業に就職、女気が全くなかった学生時代を経て、今の婚約者と正式に結婚を決めたのだ。学生時代は俗にいう陰キャと言うやつで、女子との会話は文化祭、学園祭の業務連絡ぐらいのものだった。そんな俺がこんなきれいな女性と結婚まで漕ぎつけたは奇跡と言ってもいいだろう。


環奏(わかな)さん、プロポーズの時にも言いましたが、私は何があろうとも貴方を愛し続けます」


俺は婚約者である環奏に改めて愛の告白をした。初めて付き合った女性ということもあり、無意識に失礼な態度や言葉を投げかけたこともあっただろう。それでも彼女は優しく俺を包み込み、愛してくれた。俺の婚約者はなんて出来た人だろう、俺は交際期間3年間、日々彼女に対する愛を増していた。


「私も(りく)さんのことを愛し続けるわ」


彼女の笑顔はとても綺麗だった。返してくれた愛の言葉は、彼女の綺麗な顔と相まって信頼に値する。


「それじゃあ、行こうか」


俺と環奏は、とある場所へと向かう。行政機関が用意している個室だ。20XX年、26年前に日本人の年間離婚率が50%を超え、結婚に対する問題が浮き彫りになった。行政は日本人の余りの離婚率の高さに国民調査を大幅に行ったのだ。その結果分かった事実は、「価値観の相違」「浮気率」「過去の恋愛遍歴によるいざこざ」などが大きな割合を占めていたのだ。


結婚を決めたと国に報告した時、この場所に来るように説明された。初めての結婚と言うこともあり、自分には勝手が分からない。ただ国の役人の指示に従って出向くしかなかった。


目的地に着くと、そこには大きなビルがあった。ロビーの前には役人が簡易椅子に座っていた。簡易テーブルも設置されており、その上には様々は名前が書かれた用紙が用意されていた。俺と環奏は、テーブルの前に立つと、自身の名前の欄の横に丸印を描き、役人の説明する部屋へと向かうためエレベーターに乗った。


「結婚する人ってあんなに多いんだな」


俺は先ほどの用紙をみて感じたことを環奏に言った。環奏は要領を得ない顔をしている。


「そう?私には分からなかったわ」

「何を言っているんだ?あんなに名前が並んでいたんだぞ」


先ほどの用紙には様々な名前が記されていた。ぱっと見ただけなので正確には分からないが50名が記載されている用紙が凡そ3,4枚、つまり200名ほどこのビルにくる予定となっているのだ。


エレベーターは物音一つ立てずに勢いよく上昇していく。ものの数秒で目的地である30階に到着すると、チンとういレトロな音がなった。ゆっくりと開いた扉から覗き見える美しい内装、職業ビルとは違うデザイン重視のものだった。


俺たちが促された場所は、エレベーターをでて突き当りの部屋だ。二人でゆっくりと扉に向かって歩く。内装の美しさと、腕を組んで歩く自分たちの姿は、まるでヴァージンロードを歩く新郎新婦のようだった。


辿り着いた扉を開けると、中は人が数百人は入れるほどの大会議室だった。俺たち二人のためにこの様な大きな部屋を用意してくれたことに気後れしそうになるが、勝手に用意されたものなので黙って席に着いた。


「なんでこんな広い部屋に案内されたんだろうな・・」


この時から俺は悪い予感がしていた。環奏の反応と部屋の大きさ、材料は十分に整っていたのだ。


「貴方、これからも愛し合っていきましょう」


環奏の愛の言葉も、この状況で聞くとより焦燥を狩り立てるだけだった。


予定された会議まで後十分を切った頃だろうか、一人の男が入ってきた。その男は、俺と環奏を睨みながら席に着いた。今でも感じる強い眼光が背筋を凍らせる。その男からの視線に煩わしさを感じていたが、今はそれどころではない。次々に男たちが部屋に入ってくるのだ。皆一様に俺と環奏を睨んでいる。会議が始まる頃には、部屋の中には200近い人間がいた。部屋の中にいるのは環奏を除いて全員が男だ、この時点で嫌な予感は確信に変わる。


「皆さん揃ったようなので、会議を始めます」


予定時刻に部屋に入ってきた男が言葉を発した。『あぁ、始まらないでくれ』、俺は心の中で祈りながら残酷な現実を呪った。


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