知ることのない女神
神は実在する。
とは言ってもそう大層な物じゃない。
人の心をちょっとだけ明るくしたり、ちょっとしたラッキーを与えたり出来るだけだ。
悪い事をした人には、転ばせたり、アンラッキーを与えたり、その位なのだ。
偉い神様ならもっと何か出来るのかもしれないけど、残念ながら私の様な弱小女神にはそんな力はない。
なんてったって神様の力の根源は人からの信仰心だ。
お金や思いや奉仕など、信仰には様々な種類があるが、この神社にはそれも少ない。
お金はお正月やお盆にいくらか入るけれど、あまり多い金額ではないし、掃除もたまにボランティアで誰かがちょこっとして帰る。
奥の方にはホコリが溜まって仕方ないし、巫女も神主もシーズン限定の老人の暇つぶし、つまりボランティアだ。
一年に一回村で神社を掃除するから大晦日の時は綺麗なんだけど、6月にもなってくると既にホコリの匂いがする寂れた神社に逆戻りだ。
ある町の隅っこにひっそりと佇む日差しが暖かい寂れた神社。
それが私、竹霧を祀る竹霧神社のおおよそであった。
……要は情けないことに信者もほとんどおらず、街の善意だけで成立している憐れで瀬戸際な神社ということだ。
来年には誰も掃除に来ないんじゃないかと毎年毎年不安で仕方がない。
が、そんな神社にも常連客というものが付くもので。
それが今神社の鳥居をくぐった少年、名を、確か、えっと……。
……そう、神様はいちいち少年の名前など覚えてはおけないのだ。
贔屓になっちゃうからね。
だけど毎日鳥居をくぐって私のもとにお参りする信仰心溢れる少年には、少しだけ贔屓してやっても良いだろう。
だから久しぶりに、人の前に姿を表してみるのも良いかもしれない。
私は自分に言い聞かせるように贔負ではない理由付けをすると、お参りを終えて何時ものように帰ろうとした少年の前に、ふわりと降り立つ。
「やぁ、少年。毎日お参りとは精が出るね」
「えっ!?えっ!?」
突然目の前に現れた私に驚いて腰を抜かす少年。
ちょっとした悪戯のつもりが、やり過ぎてしまったかもしれない。
私は未だ私の顔を茫然と見ている少年ににっこりと笑いかけた。
「驚かせてしまったかな、私は……」
自己紹介をしようと
少年は、顔を真っ赤にして逃げていってしまった。
「しまった、人の姿で浮遊するのはまずかったかな」
走って鳥居の外へ逃げていく少年を見ながら失敗を悔やむ。
私はいつもそうだ。
何かをしようとするとすぐ失敗する。
恐れを抱いた彼はもう二度と、この神社に来ないかもしれない。
私は土を思いきり蹴りあげる。
土がとれて白くなった石ころか、石畳に転がって、やがて止まった。
少年は次の日もこの神社に来た。
怯えた様子はあったけれど、私が居ないのを見るとほっと息をついていつものように5円玉を賽銭箱に投げ入れると、2度、頭を下げて2度拍手し、1度礼をした。
朱印も御籤もない神社に毎日5円、1ヶ月に150円もお賽銭箱にお金を入れてる事になるだろうか。
2年前から毎日来ていたので、だいたい合計1800円くらい?
全くもって、よくやるよなぁ……。
「っと、失礼だけどお願いの内容を覗いてみるかね」
今までも何度か少年のお願いが気になって覗いたことはあるが、どれも私には叶えられないものだった。
所詮は弱小女神、頑張って叶えられる願いと言ったら運良く10円玉をゲットするとか、ガリガリ君の当たりを出すとか……。
……ガリガリ君も厳しいかもしれない。
まぁ、兎に角私は定期的に少年の願い事を覗いていたのだが、少年は今日に限って、何時もより随分と優しめの願いをしていた。
「あんまり綺麗だったから喋れなかったお姉さんともう1回会いたい」
なるほど、意外と気に入られていたらしい。光栄の極みだ。
しかもこれなら私にも叶えてあげられる、なんてったって本人ですから!
私はウキウキと心を躍らせて少年の後ろに立つ。
少年が深いお辞儀を終え、後ろを振り向く。
目が合った。ばっちりと。
「あ、昨日の……」
恥ずかしいように顔を赤らめて下を向く少年。
なるほど、可愛い。
「昨日は驚かせちゃってごめんね?私は……」
と、そこで私は言葉に詰まった。果たして人間ではない、女神であるということを明かしていいのだろうか。
私は人に嫌われるのが苦手だ。好きな人なんて居ないだろうが、多分人以上に苦手だ。
だから人とのコミュニケーションもあまり取らない。
女神と言ったら逃げてしまうかもしれない。
願いを叶える力がないと分かって、もう来ることも無いかもしれない。
変な女が住み着いてると、取り壊されるかもしれない。
不安は私の心の奥深いところまで包み込み、私は結局……
「私は竹川詩乃。ここの神社によく通う、普通で健全なお姉さんだよ」
*
少年と出会ってから数ヶ月が経過した。少年は結構私と打ち解けてくれたし、仕事も住所さえも秘密にして話す私を多分、良くも悪くも好奇の視線で捉えていたのを知っている。
しかし全くもって問題は無いのだ。
私の体はいつまでお風呂をサボろうとも臭くなることは無いし、顔のケアも肌のケアも必要ない。
常に最高の状態を保つのだ!
というかむしろ肌荒れを再現する方が時間がかかる。
神様には人間に近づきたくて肌荒れとか顔とかも平均的にして生活するとかいうガチのマゾヒストみたいなのがいないでもないが、私は少なくとも違うのだ。
まぁ、神で、自分の事なんだからそのぐらいはできて欲しいものだけれど……と。
兎にも角にも少年と不思議な関係になってから数ヶ月の時を経って、私は自分に言い訳がつかないほどこの少年を気に入ってしまったわけだ。
人と関わらなさすぎてチョロいのレベルを大分オーバーしてるが。少なくとも神社の近くに出没する謎の美女Aのことを気味悪がらずに訪問を続けてくれる少年は、私の人恋しさを見事に射抜いたわけだ。
まぁ、恋愛や愛慕、情愛等という感情よりも、「友情」とか「親交」のような、そういう感情の方が強いわけで。
そもそも私は神様なので、少年との恋路など許されないわけなんだけれど。
と、訪れた少年お参りを眺めながら考える。
……いつから私はこんなにモジモジと考え込む様になったんだろうか。性格変わった?元から?あぁ、そう……。
私は少年が最後の一礼をしたのを見ると、ヒョイっと木から飛び降り、少年の肩を叩く。
「やぁ、昨日ぶり」
「あ、昨日ぶり」
少年は雑念ない顔で振り向くと、挨拶を返した。
「今日は何を願ったんだい?」
そう聞くと少年が悲愴な面持ちで呟くように言った。
「クラスの子が飼っていた犬が死んじゃったらしいんだ……それで悲しくって、その犬が天国に行けますようにってお祈りしてた」
少年の目が少し潤んでるのを見て、私は驚嘆した。少年のような小さい子供が人のためにこうも悲しめるか?いや、大人なら尚更難しいかもしれない。彼はクラスメイトとはいえ「赤の他人」の「飼い犬」の幸せを祈れるのだ。
私は天国地獄は管轄外だし、地獄に行くか天国に行くかなんてわからない。
ただ私も彼のために、彼のクラスメイトの犬の為に天国へ行けるよう祈っておいた。手を2回叩いて祈りを捧げる。神様の祈りだ、きっと天国に行けることだろう。
ふと、少年を見ると彼はこちらを潤んだ目でじっと見て、零すように呟いた。
「神様っているのかな」
縋るようだった。祈るようだった。
いるのなら助けて欲しい。手を差し伸べて欲しい。どうか自分を見て欲しい。
彼が何に悩み、何に苦しみ、何を想ってるのか分からない自分が情けない。彼が祈る神様は、そんな大層なものじゃないんだ。助けてあげたいけど、助けてあげられないんだ。
「ごめんね」
「なんでお姉さんが謝るの?」
「なんでかな、分かんない」
気が付くと頬を水が伝っていた。そんな風には作ってないはずなのに、どうしてだろう。
「雨が降るかもしれない、今日は早く帰りな」
「でも、晴れてるよ?」
「ううん、きっと降る」
少年はいく秒か不思議そうに首を傾げていたが、頷いて、鳥居を出ていった。
結局その日は刺すような晴天が続いた。
*
「つまりだね、分数の足し算なんてものは所詮素数集合の応用でしかないんだよ少年」
「お姉さんって説明上手だよね、お姉さんが学校の先生だったらテスト全部100点とれる自信あるのに」
境内で熱心に課題に取り組む少年が小さくくしゃみをする。
今日はこの地域には珍しく、外に雪が積もっており、気温は氷点下を下回っている。
神社には床暖も電気もストーブも、もちろんエアコンもないので、毛布や厚着をして暖を取るしかない。手をこすって少しでも温まろうとする少年をほほえましく眺めていると、ふいに少年がこちらを見て言った。
「お姉さんって年中長袖に長ズボン1枚だよね、夏は暑そうだと思ってたけど冬でもその格好で寒くないの?」
「慣れたからね、寒いのもアツいのも」
もちろんそんなことはない。単純に体が温度を感じるように出来ていないだけである。もちろん温度を感じるようにすることもできなくはないが、意味がないのでやっていない。
「君こそなんでわざわざここにきて勉強してるんだよ、暖房がある家のほうが良いだろうに」
私が何気なく少年に言うと、少年は小さく「家にいても楽しくないから」といった。
私が少年にできることはたぶんほとんどない。ただ、ここに来た少年を迎え入れ、楽しくおしゃべりしたり、勉強を見てやるくらいしか。
神というのは本当に、全くもって不便なものだ。
祭られなければ会話どころか、存在もできない。あるから祭られるのではない祭られるからあるし、あるから祭られるのだ。卵が先か鶏が先かのような終わりのない問答。
神は人の上ではない。たぶん、共存関係とか、もっと言えば共依存的というかそんなようなものだ。只、役割が違うだけ。神は人間に生かしてもらう代わりに少しばかりの奇跡を人間に与える。
そう考えると神無しで生きていける人間のほうが生物的に上と言っても過言ではないかもしれない。
「ここにいると楽しいかい?」
「うん、とっても」
少年は顔をほころばせる。
「そうか、それは良かった」
私は眼を瞑る。きっと私は長くない。
長く信仰を失いすぎて、存在の維持すら危うくなり始めている。おそらく来年の夏あたりに神社は取り壊し、ビルかマンションが建ったりするんだろう。
神社の床面をそっとなでると、木目がキシリと痛む。幸せっていうのは、きっと手に入れがたいから幸せで、すぐに行ってしまうから幸せ。なのだろう。
少年が小さくなった鉛筆で表紙に「算数ドリル4」と書かれた本に答えを書いていく。
ふと、風が中に入り込むみ、本のページがめくれる。
慌てて少年がページを戻そうとして、ふと目に入ったのは四年生の最後の方にやる、少年にとっては少々難しそうなそんな問題だった。
私はページを戻す少年の手を止めると、後の問題を見る。
「これ、今の君ならできるかも。やってみる?」
そう聞くと、少年は真剣な顔になって頷いた。
問題に向かう少年に、幾つかヒントを与えて解かせてみる。
頬杖をついて少年を見ていると、少年は鉛筆をくるくると回したり鉛筆の反対側をほっぺたにつけたりしながらうんうんと唸っている。
が、ふと思い出したように式と答えを書き始めた。
「どう!?」
「おしい、ここ計算ミスしてるよ」
少年はいたく悔しそうに手を後ろにして寝転がる。
「まぁ、解き方がわかっただけでも十分だよ」
「それだってお姉さんにヒントもらったからじゃないか」
口をとんがらせてぶーたれる少年が、ひどく愛おしく見えた。
と、同時に少しだけ怖かった。
私が彼を歪ませてる気がした。
「子供ってのは大人のサービスを受けて育つんだ。それまではヒント上々だよ、答えを出せれば手柄は間違いなく君のものだ」
私は不安を振り払うように無理やり笑顔を作る。
まだ少し納得のいっていない様子の少年は、しかし混じりっ気のない笑顔を見せた。
*
美しさとは誰が決める定義だろうか。
大衆?主観?全体的なバランスとか、黄金比とか。
理解されない芸術は、理解されないに足る理由があるし、多分その芸術家が持つ「主観という呪縛」に取り絡められた自身の被害者だと思う。
しかし、だ。
理解できない芸術、理解の範疇を超える芸術というのは、いつも唐突にやってくる。
少年の頃、小学校低学年か中学年くらいの時のことだろうか。
俺は小さな神社に行ったことがある。
その時に会った女性に俺は一目惚れしたのだ。
結局恋は叶わなかったが、今は彼女は一体どこで何をしているのだろう。
*
一年とは早いもので、私は例の少年とお汁粉を食べていた。
家からタッパーに詰めて私のところに持ってきたのだ。
嬉しそうに私のところに駆け寄って、「一緒に食べよう」などと言ってきたのだ。
勿論私は了承し、彼を境内の中に招き入れた。
「家族に許可はとってきたのかい」
「うん、行ってきていいって」
少年の表情には陰りがあった。
おそらく嘘をついてるんだろう。
「別に許可をとってないからといって追い出したりはしないさ」
「......」
申し訳なさそうに目を伏せる少年に、こちらまで申し訳ない気分になってきてしまう。
「しかしおいしいな、これ。君の親が作ったの?」
「ううん、僕が作ったんだよ」
「そりゃあすごい。私じゃこんなに美味しく作れないよ」
そう言うと、少年は嬉しそうに「コツがあるんだよ」と言った。
やはり陰りのある笑顔だった。
「何か、悩みがあるなら話してみてほしいな。ほら、私ってそのぐらいしかしてあげられないから......」
「え......?」
狐に摘まれたようなそんな表情をする少年。
嬉しそうな、それでいて悲しそうなアンミバレントな表情だった。
それでもやっぱり黙って食べ始めてしまうので、私はもどかしくなった。
この子の為に何かをしてあげたいという、神様にあるまじき考えが頭をよぎった。
「親のことかい」
「......どうして?」
心を見た。
ひどく不安定で、ひどく脆かった。
触れてしまえばサラサラ崩れていきそうな程に。
彼の母親は彼が幼い時に彼を産んだのが原因で死んでしまった。
その後彼の父は別の女性と再婚したが、すぐに離婚。
その後離婚と再婚を繰り返し、母は入れ替わり立ち替わりして、父は家事を少年に任せっきりになっていた。
子供には、ギャンブルもし、時には朝まで帰らずに女と過ごしていることもあった。
虐待に近い扱いはざらだし、暇があれば家事をしている少年を呼びつけて自らがいかに偉大か、自分が死ねば少年も食えなくなって死んでしまうんだと言い聞かせた。
子供のように泣きじゃくったと思えば鬼の形相で怒鳴りつけたり、とにかくメチャクチャをしたのだ。
そして全て知った上で少年は優しくあるのだ。
私はその事に怒りすら覚えた。
どうやればここまで人の心を脆く、儚く、薄くできるのか。
だが恐らく父親も許しを乞うているのだ。
彼を産んだ妻に。
死んでしまった妻に。
だから愛する人を奪われた父親はある種憎しみや情欲に近いものを少年へ向け、少年はこころが壊れる寸前までそれを受け止めてきた。
心を見るだけで鬱屈だった。
吐き気がした。
あまりにも救われない。
あまりにも哀れだ。
なのに彼を救えない。
哀れな神と、哀れな少年の影が濃く重なった。
抱き合う体は冬に当てられて冷え切っており、温まるどころかより寒さをまして襲いかかった。
性欲や、肉欲や、情欲では決してなかった。
心が彼を求めるのだ。
それは彼が私に向ける信仰故かもしれないし、彼の冷めてボロボロになった心や自我の隙間に入り込まんとしているのかもしれない。
もしくはただの刹那的な感傷か。
とにかくそれだけだった。
それ以外で居られなかったし、それ以外で居たくなかった。
彼は私の胸の中で泣きじゃくり、私は涙すら流せない人の振りをする化け物であることを恨み、悔やんだ。
いつしか私が人になったら、彼の傍で彼といることを許されるだろうか。
私はつくづく悲しくしかあれない世の理が、憎くて憎くてたまらなかった。
*
冬のある日、俺はお汁粉を持って外に出て、神社で発見されたことがあったそうだ。
その時の記憶はすっかり無いのだが、冬の日に1人で暫く居たとは考えられないほど暖かく、凍傷にならなかったのは奇跡だと言われたことは覚えてる。
目にある泣き腫らしたあとを見て医者は何事なのか聞いたが、俺は当然何も答えられなかったんだと思う。
覚えていたことすら覚えていない。
だがどうにかいつも、寂寥が俺を惹き付けるのだ。
何か忘れてるような、そんな気分にさせるのだ。
*
ジリジリと鳴く蝉の音と、気が揺れる音が重なる。
真夏、8月の中旬くらい。
今日はいつもより日差しが強かったので、なんとなく境内を眺めていた。
普段は眠っているか、神社にあるカードゲームや蹴鞠、他の神様と駄弁ったりと退屈にすごしているので、境内を見ることはほとんどなかった。
まぁ信仰心が捧げられたら……つまり賽銭を入れられたりしたら分かるので、問題はなかったのだが。
あの日以来、少年はここにぱったり来なくなった。
心情の変化か、恥ずかしがっているのか、それとも私が人ならざる神だと気付いたか。
ともかく人は別れや悲しみ、寂しさを乗り越えて成長するものだと知っていたので、私は寂しい気持ちとは裏腹に、これで良かったのだと思うようになった。
誰もいない神社は酷く閑散として見え、あのたった2人の会話ですらこの神社の色となり音となっていたのだと実感すると、それがいたく懐かしく、また良いものであるように思えた。
今は人の姿をとっていないのでため息ひとつつけないのが妙にもどかしかった。
人間でいる期間が長すぎた……と言っても半年か1年かそこらだが、それでも私が人間の姿と人間でいることに一種の羨望や思慕を抱くのは致し方ないことだと思う。
ただ……取り壊される前に、この神社が終わってしまう前に1度くらい、あと1度くらい会いに来てくれたら、それだけが望みだった。
私が延々と考え込んでいると、二人の男が神社を訪れた。
珍しい参拝客だろうか、それにしては雰囲気が物々しい。
「ここをビルにするということで宜しいですか?」
「はい、神社なので壊すのには手間やら何やらが多いでしょう。お金は少し高くしておきますよ」
私は耳を疑った。
ここが無くなるのはもう少しあとのはずだ。
信仰心もまだ尽きてない。
まさか……何かが起こる前兆だろうか。
何か起こって信仰力を大幅に使うような事になるとか?
それにしたって私の残りの信仰力で出来ることなどもはや限られている。
たまたま早くに見積もりに来ただけだろう。
「ビルの名前はどうしましょうかねぇ……」
「竹霧ビルってのはどうでしょう、ホラ。ここの神社の名前」
「ハッハッハ、それはいい。御利益がありそうだ」
笑いながら話す2人に私の心中は穏やかではなかった。
もうどうしようもないほどの不安が込み上げてきた。
「では、明日から工事に取り掛かっていただきますね」
それは死亡宣告、余命宣告だった。
もう私は生きていられないという運命からのお告げだった。
神の存在というのは面白く、まぁつまり単純に言うと、どう足掻いても死の運命から逃れられないのだ。
信仰力が無くなるまでその神社はどんな厄災に見舞われようと消えることは無い。
だが、信仰力が無くなれば、なくなった瞬間に何故かその時にちょうど壊れる。
神社が壊れるタイミングは、信仰力が無くなるタイミングとちょうど重なる。
そういう風に出来ているのだ。
だから多分、私が消えるのは2,3ヶ月後のことだろう。
そう思ってしまうと、心が楽になった。
そうか……長かったな……。
工事が始まるとなれば少年も来ることは出来ないだろう。
眠ろう。
もう多分、500年くらいは生きてるのだ。
もうこれ以上生きようとも思わない。
*
思い始めたら止まらなかった。
俺は足を早くして電車に乗った。
何か忘れてる。
何かがある。
会社には欠勤する旨を伝えて経路を調べる。
ここからいけば多分、1,2時間後に到着する。
電車の中で不安に駆られる。
そう、これは心にぽっかり空いた穴だ。
何か……何か……。
*
私は目を疑った。
少年が、夜に工事現場の柵を乗り越えて私の元にやってきたのだ。
舞い上がったと同時に、おそらく最後の邂逅になるであろう事を私はわかった。
「やあ」
私は神社の屋根から飛び降りると、少年に挨拶した。
「お姉さん、やっぱりいた」
少年はさも当たり前のように私に話しかけた。
「ここが壊されるって聞いて、いてもたってもいられなくなって」
少年はこちらを心配そうに見つめる。
「お姉さんが消えちゃう気がして……」
多分、彼は私と関わりすぎている。
だから、神の力を微弱ながら感じ取れるようになったんだろう。
私は申し訳ないやらなんやらで、全てのことを話した。
神様であること。力が弱まっていてもうすぐ消えてしまうこと。彼の願いを叶える力もないのに、黙って騙すような真似をしてしまったこと。
ゆっくり、独白するように罪を数えるようにして話した。
「神様も意外と可愛いんだね」
「ははは……そんなに可愛いものじゃないよ」
少年は小さく息を吐いて続けた。
「ごめんね、お姉さん。僕が来なかったせいで、僕が…………」
ついには泣き出してしまった少年を私はそっと抱きしめた。
「なぜ今まで来なかったの」
「……」
少年は暫く黙っていると、やがてポツリと一言漏らした。
「もう、行ったらダメって言われたんだ。医者とか、霊能力者とかに」
「ははは……その助言は正しかったわけだ」
少年は悲しそうな顔をして聞いた。
「どうして神様と関わっちゃダメなの」
私は彼に話すべきか迷った。
彼にそれを話すことは、彼に私が魅入られてしまっているという事を、彼に自覚させることだった。
また嘘をつくのだろうか。
自分に嘘をつき、少年に嘘を重ね、そうやって「守る為」と言い訳して嘘をつくのか。
「怒られるんだよ、もっと上の神様に」
私はまた嘘をついた。
彼を守る為じゃなく、自分を守る為に。
「嘘」
「え……」
「嘘だよ」
私を静かに優しく咎める声は、しかし優しさに反して私に深く突き刺さった。
彼はいつの間にか大きくなっていた。
最初にあった時から一年くらい経っただろうか。
彼がここにき始めて三年ほど経っているからだろうか。
私は彼を見ていなかったのかもしれない。
自分を必要としている少年という像を、神としての本能で勝手に作り出していたのかもしれない。
彼は幸せなんだろうか。
「嘘だよ」
私は小さな声で続けた。
「かっこよくなったなぁ……食べちゃいたい」
彼には聞こえてなかったんだと思う。
*
あの街に近づくにつれ、嫌な予感がし始めた。
引き返せと本能が告げていた。
俺は半ば過呼吸になりながら電車の席に座っていた。
隣の学生が心配そうにこちらをチラチラと覗き込んでいる。
見ないでくれ、そう言いたかったが、今は自分で精一杯で声も出なかった。
あの街に、僕の何があるのだろうか。
*
私は占ってあげるよといって彼の額に触れた。
「いいのに……」
彼は困ったように笑った。
時間がゆっくりと流れる。
夜の神社に似合わない作業用車が神社の中でも目立っており、刈られた木が私に力を与えた。
数分経っただろうか、私は彼の未来を見始めた。
この後神社が壊されて、彼は他の町へ引っ越すのか。
そして独身のまましばらく会社員と働く。
好きな仕事につけた様で、毎日幸せそうだ。
そしていつの日かここに戻ってきて……
戻ってきて?
見えない、いや、視点が引っ張られてる。
ここはファミリーレストラン?
これは私の……でも、この時に私はいないわけで……。
「どういうこと?」
すぐさま私は答えを悟った。
『虚神』『空神』。中身のない、未練だけの神。
嗚呼、やっぱり少年に関わりすぎたんだ。
やっぱり私は、彼は、私に惹かれすぎたんだ。
私は最後の力を振り絞って……
*
電車が駅に着くと、ついに予感は最高潮になった。
確実な死が、甘美な誘いが、俺に迫っている予感がした。
「ここで帰ったら、何のためにここまで来たんだ」
俺は頬を思い切り叩くと、首を振って気を引き締めた。
駅の改札へとゆっくり歩いて、切符を差し込んで駅を出る。
閑散とした駅には何人かしかおらず、衰退を思わせた。
そんなところでも駅コンビニはあったので、不安を紛らわすために炭酸水とガムを買うと、炭酸水を飲んでからガムを噛み始めた。
「さて、どこに行ったものか」
俺は現実逃避するように自問自答する。
わかってる。
あの神社。
あそこに行くべきなのはわかってる。
ただ本能的な抵抗を、生きんとする自らの意思を抑えつけるには些か時間がかかりそうだった。
俺はいくらか歩いて人の数に反比例したように大きな駐車場と大きな建物のファミリーレストランに入ると、ドリンクバーとパスタを頼んでメニューが来るのを待った。
俺は考えた。
この嫌な雰囲気は何だろうと。
この予感は何だろうと。
あの神社に何かあるのは知っているのだ。
ただ何かがすっぽりと抜けおり、まるで過保護な親のような、そんな都合の良さが俺の記憶にあるようなのだ。
あの神社で何か知ってはいけないことを知ってしまって記憶を消されたとか?
そもそもそんな技術はあるんだろうか。
今ですら聞いたことがない。
当時そんな技術があったはずがない。
ならば僕の記憶が何かトラウマによって思い出さないようにと、自ら蓋をしている?
答えが出ない問題にぐるぐると考え続けていると、ふと目の前に女性がいることに気がついた。
僕は息を飲んだ。
「鳥居」
その女性の周りには数え切れないほどの鳥居があった、異様だった。
浮いてたり、埋まっていたり、とにかく押さえつけるように、出さないように。
仰々しすぎる様子が異様さを加速させていた。
その時、ちょうどウェイトレスがパスタを運んできた。
抜けた。
すり抜けたのだ。
女性の体を。
逃げて、と声が聞こえたした。
逃げるべきだ、と本能が告げてきた。
でも、動けなかった。
その顔は
その姿は
まるで昔会ったお姉さんだったから。
*
これは……消滅するかもしれないな。
私は彼の未来を見ながらそう思った。
私は彼を守らなくちゃいけない。
わかってる、わかってる。
でもこれでおしまいなんて、そんなのあんまりじゃないか。
ふと、よくない考えが頭によぎる。
彼を「神隠し」してしまおうか。
そしたら彼と永遠を過ごせるだろう、二度と神にはなれず、二度と人にはなれずとも、それでいい気がしてしまう。
私は頭に巣つく悪い考えを頭を振って吹き飛ばすと、虚神の体を無理やりのっとった。
*
彼女の姿はボロボロだった。
地べたを這いずったように衣服はみすぼらしく、髪をずっときらずにいたように髪は下まで伸びきっていた。
だが彼女の肌には傷はなく、その美しい姿態も顔も、目が黒く塗りつぶされたようになっていること以外、全く同じだった。
一瞬、彼女の目が正常に戻る。
その時、「逃げて」と言っているように見えた。
僕はすぐさま駆け出した。
駅に、この街から出て、二度と戻るべきじゃない。
何故かは知らない。
何かは知らない。
ただ、気がついた時には目の前にビルがあった。
ふと、ケータイを取り出してマップで見ると、竹霧ビルと書いてある。
神社の名前だった。
この名前と場所が、きっとここに彼女を縛り付けているんだと確信した。
何か目に見えない希望を胸に、俺は足を踏み入れた。
中はがらんとしていて、人っ子1人見当たらない。
階段を上がるたびに「何ちゃら法律事務所」だの「何ちゃら塾」だのがあったが、全て人がおらず、ついには屋上に辿り着いたが、鍵は閉まっておらず開けっぱなしになっていた。
もう秋に入ろうというのについていない冷暖房の換気扇の熱気が妙に暑かった。
ふと、左側を見ると鳥居と小さな社と膝下くらいの大きさの賽銭箱があり、しかし掃除はされておらず埃をかぶっていた。
その薄汚れた感じが懐かしく、俺はふと鳥居をくぐって賽銭を入れようという気になった。
一歩、二歩と歩いて行き、鳥居の前に立つ。
なるほど異質だ。
全く普通の屋上に、向かい入れるように、取って付けたような鳥居。
如何にもこうにも異質が過ぎる。
俺は鳥居をくぐると賽銭箱の前に立ち、100円を入れた。
その瞬間寒気がした。
反射的に後ろを振り返る。
「鳥居が……ない?」
もう一度さっき社があった所を見ると、賽銭箱も社もなく、100円が転がっていた。
「幻覚……?でも、ウソだろ?」
逃げ出したかった。
来なければよかった。
恐怖が体を支配する。
思わず腰を抜かしてへたり込む。
「何なんだよ、何なんだよ!」
叫ぶ、ただ叫ぶ。
時計の針が進んでいない。
あたりがどんどん暗くなっていく。
太陽が逃げて行くように去って、月は出ない。
闇が辺りを支配する。
「携帯、そうだ、携帯の光!」
僕は腰を上げると尻についた土を払う。
土……?
ここはビルだぞ。
「うわっァァァァァ!」
携帯で辺りを照らすと、見慣れた神社があった。
あの神社。
お姉さんと何度も話した神社。
思い出した。
全部。
*
「少年、いや。陽くん」
「名前で……?」
その瞬間、誰もいないはずの社が、ガラガラと崩れ始めた。
「私は多分、もう死んじゃう。だからね、最後にお願いを聞いてほしい」
陽は目に涙を浮かべてこちらをじっと見る。
「全部忘れて、もう此処には来ちゃダメだ」
陽は首を横に振る。
「しょうがないな、君は」
私はおかしくなって微笑した。
別れを惜しむことはあっても、惜しまれるのは初めてのことだ。
でも……
「ごめんね」
私が陽に抱きつくと、彼は私の体を強く抱きしめる。
「でも、これでおしまいだから」
暫くすると、彼は眠った。
おそらくもう、何も覚えてないだろう。
此処にも来ることはないだろう。
「泣きたくない時に泣くのに、泣きたい時に泣けないんだな。私は」
ガラガラと大きな音を立てて社が崩れ、木々が倒れ、賽銭箱が潰れる。
私は人の体を保つことすらできずに掻き消える。
あぁ、意識が薄れていく。
次生まれる時は……
人間だと、いい…………な。
*
ぼんやりと明るい境内を歩いて行き、社に腰掛ける。
「ねえ少年、久しぶりだね」
隣に座るお姉さんの、甘い香りが俺の鼻をくすぐる。
いつもの服、いつもの匂い、いつもの声、いつもの口調。
ただその目だけが彼女を、彼女ではないと教えていた。
「元気にしてた?すごい大きくなったよね」
彼女が柔らかく微笑んだようだった。
それは昔、僕が恋焦がれた声。
けど、僕の心は無くなったはずの記憶と、消えてしまった彼女の記憶が、彼女のものではないと本能的にわかっていた。
ふと、階段の奥に目をやると、鳥居は無く。
代わりに闇が広がっていた。
拭えない違和感が場を支配した。
「ちょっとだけ、近付いてもいい?」
無言を肯定ととったのか、彼女はすっと俺の横にすり寄ってきた。
ちょっとした音でも聞こえる距離、でも触れてはいない距離。
僕は何も言えずにいた。
このまま溺れてしまいたかった。
本物かなんてどうでも良くなっていた。
彼女の方を見ると、いつもの笑顔で俺の方を見ていた。
外側だけ一緒。
「お姉さんなの?」
いつの間にか口調が、体が、少年のものになっていた。
四年生くらいだろうか。
僕は何も言わない彼女に焦って、言葉を続けた。
「本物なの?どうして目が黒いの?」
彼女は悲しそうに笑うと、「目が黒いのは嫌?」と自嘲気味に行った。
「本物なの?消えたはずじゃんか」
「本物だよ。目が黒いだけ、それだけだよ」
聞いてるこっちが苦しかった。
胸が締め付けられ、体が彼女の愛を求め始めていた。
「ねえ、抱きしめていい?」
「うん」
彼女は優しく僕を抱きしめると、慈しむように背中を叩いてきた。
愛おしかった。
「キスしていい?」
「うん」
もう止まれなかった。
一度堕ちてしまった心が、このまま堕ちて、壊れて、溺れ死ぬことを望んでいた。
柔らかい唇の感触が甘ったるく吸い付く。
何分そうしていたのかはわからないが、しばらくすると唇にあった心地よい感触はなくなっており、少しの寂しさが僕を襲った。
もう一度階段の方を見ると、闇が少しずつ迫っているような気がした。
眠るように、意識が微睡んでいく。
「ねえ、襲っていい?」
いいよ
「食べていい?」
いいとも
「それは私じゃないよ」
懐かしい声がした。
俺は目を開くと、それから飛び退いた。
「いいって……言ったのに」
悲しげに目を伏せる彼女が、何かすごくおぞましいモノに見えた。
愛憎や、執念や、醜悪を、目一杯詰め込んだカラの容れ物。
歪で、気持ち悪かった。
そして哀しかった。
階段を見ると闇は晴れ鳥居が奥にチラッと見えた。
「行かないで」
彼女は俺に懇願した。
空っぽの神様、中身がない、妄執の権化。
「君といることは出来ない。君が君じゃないから」
そういうと彼女は激高した。
「どうして!?私がこんなに愛してるのに、こんなになってまで愛してるのに!ずっと待ってたのに!貴方が私と居てくれないならこんな世界どうだっていい!それくらい貴方を愛してるの!なのに!なのに……」
サバサバしていて、明るく、昔懐かしい雰囲気は霧散し、無くなったものに縋り付く惨めな女性のように見えた。
自分の初恋の人が醜くなるのを見ていられずに、俺はたまらず目を背けた。
鳥居へ向かって歩く。
啜り泣く声が俺の心を掻き乱す。
どうにもならない苦しみが自分の中に沸き立っていた。
今からでも溺れてしまいたい。
でもあれはきっとあの時の人じゃない。
だから振り返っちゃいけない。
俺は鳥居まであと2,3歩という所で、視点がぐらりと傾いたのを感じた。
そのまま歩こうとしても足が動かない、膝から下がない。
痛くない、ただ、苦しい、縛られて、結ばれて、捕らわれている感覚が俺を襲った。
声も出ない、目も見えない、何故か声だけが聞こえる。
「食べていいって、襲っていいって言ったもん」
「あなたは私のものなの」
「貴方が手に入ればそれでいいの」
「あなたが来なかったから死んじゃったの」
「貴方が関わったからこうなったの」
「貴方が……貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が貴方が」
ブチリという何かをちぎる嫌な音を境に、何も聞こえなくなり、意識は途切れた。
*
「体は!?」
咄嗟に出た言葉はそれだった。
後ろを振り返るとビルがあって、神社はなかった。
目も見える、足も手もあり声も出れば音も聞こえる、匂いもわかる。
「助かった……のか?」
俺は呆然としながらそんなことを呟く。
彼女が俺を間違えて鳥居の外へ出すとは到底思えない。
ましてや自ら手放すなど有り得ない。
時計を見るとあれから3時間近く経っていて、随分長いこと寝てたのだと分かった。
立ち上がろうとして、膝をつくと、鋭い痛みが走った。
見ると擦りむけて血が出ており、転んだ後のようになっていた。
どうやら彼女は俺を間違えて鳥居の外に出してしまったようだった。
とんでもないラッキーだ。
ついでに言うなら、ここを誰も通らなかったのも幸運と言えるだろう。
「はぁ〜疲れた」
不思議と嫌な予感とか雰囲気は、きれいさっぱり消えていた。
「屋上の社はどうなってるんだろ」
ふと気になってしまう。
俺は階段を昇って屋上へ向かう。
塾や法律事務所やらは相変わらず電気が消えていたが、来る時より幾らか明るい気がした。
コツコツと小気味良い音を立てて階段を昇って屋上へ着く。
開けっ放しの屋上には社も鳥居も賽銭箱も無く、跡地をよく見ると100円玉が転がっていた。
「俺が入れたヤツかな……これ」
ふと、そう思った。
屋上から外を見渡すと、郊外の雰囲気が漂う街並みが見えた。
絢爛の様子はまるでなく、少し落ち着いた場所。
小さな森や幾つかのビル、家。
「俺はこの街に住んでたのか」
ふと、そう零す。
いつしか俺の肩の重荷は取れ、随分楽になった気持ちでいた。
あぁ、だが、すこし。
寂しくもあるのだ。
「あれ、雨なんか降ってたっけ?」
気が付くと頬を水が伝っていた。
恥ずかしさを誤魔化すために誰ともなく呟くと、俺は右手の袖で頬と目を乱暴に擦る。
逃げたまんまの心が、生き場所を見つけたみたいだった。
お楽しいいただけたら幸いです、後日譚も書きたいと思ってますが、蛇足なようなら心のうちに留めて置くつもりです。
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